第80話 恩を仇で返す?
家に着きスマートフォンを見ると着信が数十件あった。
各方面からなんだが…直近は16分前に着信のあった辰巳上席だな。
「深夜にどうした?」
『どうした?じゃないぞ!?各方面からこちらに電話が殺到して当直が泣きついてきたんだが!?』
「知らん。そっちのやらかしの派生だろ。大方俺のことを知りたいという各方面からの問い合わせだろ?半日すれば黙る」
『それはどういう?』
「あちらよりも上の方々が圧力をかけて黙らせる。それだけだ」
『…は?』
「一応被害者は助けたが、もう一人居たぞ?生きてはいるが身元調査をして置いた方が良い。直ぐに政治権力遊びしない奴を回さないとまた大変な事になるぞ」
『…むしろそういうヤツじゃないとあの方面キツいんだよ…権力マウント的に』
泣きが入っているんだが?俺関係ないんだが?
「あと、胡散臭い団体はどうなっている?」
『正直こちらの管轄ではないし、こちらの関係者でもない別勢力の団体だ。こちらから手出しはできない…が、あちらさんがかなり洒落にならない報復を行うだろうな』
「…というよりも、京都に今一定以上の能力者がいるのか?」
『…何?』
「俺が確認した範囲で5名だけだぞ?異相に入って視たからそれはほぼ間違いない」『…そんな馬鹿な。いや、その一定の基準が高いのでは?』
「見鬼、もしくは浄眼保ちで怨霊程度であれば単独で倒せる」
『…うちの本家ですらそれができなくなっている可能性があると見た方が良いのか』
「ああ、あと四神の結界、だいぶ弱っているが形だけになっていないか?このままだと10年そこらで契約が切れるぞ」
『!?…いや、それこそ本家の事案だ。連中に何を言っても聞かないから放っておく事にする』
「いいのか?」
『良くは無いが、その間に大阪局と他を鍛える』
いや、無理だろ…そう言っている本人もそこまで強くないんだから。
「まあ、俺には関係の無い話だ。では」
それだけ言い、通話を終えた。
───また別から電話が…
電話の殆どが心配の電話だった。
通常権力者ではない裏というよりもヒストリック・ダークサイドの権力者…といったところか?
それ以前に俺は相手に喧嘩を売っていないんだが?
数度会った程度の他国の祈祷師からも連絡がある程度には力があるようだが…本家にあっても分家には全く力が無い挙げ句食い物にされているってどうなんだ?
恐らく今後は徹底されるだろうが…まあ、俺には関係ない。
いつも通りの生活をするだけだ。
あれから2週間。
不動産関係、聖水と
ムーンライトなどは通常通りだが。
「売買共に邪魔されている節があると…まあ賃貸は問題無さそうですし、半減した位で別に問題視しませんので。何なら不動産の方にも魔石関連の事業を新たに立ち上げますか?」
報告に来た秘書に相談してみる。
「可能ですが…宜しいのですか?他の会社の利益を吸収してしまう形になるのでは」
「あちらには既に1年分ストックしているので問題ありません。こちらも規模で言えば半年分の売上位は確保出来ていますよ」
「えっ!?」
「ああ、ただ売るのであれば国内だと安く買い叩かれる可能性があるのでツテを使って外国に出しましょうか」
「えっ!!?」
クールなできる秘書といった出で立ちが崩れてるぞ?
知り合いと言うほどでは無いが、心配の電話を掛けてきてくれた誼だ。儲け話を持ちかけてみよう。
『英国のお嬢様に連絡ですか~?それとも情報局?』
廣瀬氏が直ぐに察したようだ。
『現在であれば日本の1.4~1.7倍で売れちゃいますよ~』
でも税金等引かれたら同じ位では?
『魔石等に関しては現在外圧で関税はあと2年ほどはほぼ無しのキックバックありですよ』
国会で揉めていたのに押し負けたのか…
「時限的でも新規部門ができるのであれば先方に連絡しますので一度話し合ってください」
「はい!直ちに!」
といったやりとりをしたのが4時間前。
「時限的でも何でも利益確保は必要という意見で一致しました。手続きを急ぎ進めております」
大学の講義を2講程終えて不動産の方へ行くと既に決定していた。
「早いな」
「少し時間は掛かると思いますが、早めに行いますので───」
「かなり頑強な地下保管室を用意して欲しいですね」
強盗対策メインだが、何かあったときに隔離出来る場所は重要だ。
「地下の資料室を空けます」
「了解。では取引先と話を付けておきます。明日朝に連絡します」
恐らく大使館での取引になるとは思うが。
とりあえずあとで電話をしてみよう。
時間帯的にはあと4~5時間後だな。
さて、戻って夕飯でも作るとするか…
電話で話すこと2分42秒。
明日、英国大使館に持ち込み職員に確認して貰った上で再交渉という事で話はまとまった。
初手魔水晶交渉は本気で勘弁して欲しそうだったので魔石50個単位の交渉に落ち着いた。
その中に聖水晶片をオマケで1個付けよう。
そうしないと危険な力場が発生しかねないからなぁ…
通話を終えて息を吐く。
[兄さん?]
俺にもたれ掛かりながら本を読んでいた友紀がこちらを見る。
「ん?どうした?」
[兄さんがお仕事しているなぁって]
「お仕事はお終いだ。これからは…お前を甘やかすぞ」
[もうっ、兄さん急に抱きつかないでよ]
「……あれ?私紅茶に砂糖入れたのかな?無茶苦茶甘いんだけど…」
無意識に砂糖を入れていたんじゃないか?
現在大使館で職員が魔石のチェックを行い、受領書にサインを貰っている。
『───確かに、魔石と魔水晶各50個と…これは?』
『それは聖水晶片という少し特殊な製法で魔石片を浄化した代物で一緒に置いておけば”不幸な事故”が減ります。初取引のオマケです』
不幸な事故という言葉に職員がビクリと反応した。
『!?…君はアレの原因を知っていると』
『この魔水晶が何から取れるのか…それを考えてみてください』
障気は障気を招き寄せる。
一つの場所に障気が籠もり一定を超えると場が出来てそこに魔が生まれる。
それが悪魔なのか悪霊なのかは分からないが、それぞれの魔石や魔水晶由来の化け物が現れる。
今はまだ魔水晶を入手出来る者が限られているためにそこまで分かっていないが、何れは一般にも分かる日が来る…といいなぁ…未だに軍などがまともに下層以下に行けない事から考えても…うん。
まあ、魔水晶自体小鬼や餓鬼のドロップアイテムだし、マギトロンと違いこの数ヶ月で価格が30倍を超えた。
小粒な魔水晶3万3千円だったのがおよそ100万円するんだが?
まあ、あの頃はマギトロン大結晶とか呼ばれていたこともあったからなぁ…小粒なのに大結晶とはこれ如何に。
まあ、暫くすれば価格はまた下がるだろ。今のうちに稼いでおこう。
ただ、国内では中条グループと前に売った単独会社の所以外には売らん。
最近消費が激しいし。
俺が自分で入手しているから問題無いだけで、市販物だと確実に赤字だ。
…神々の力を借りずに力技でやろうか?
周りの被害が凄いが…
そんな益もない事を考えながら受領書と現物の写真を撮り、先方へメールを送る。
と、席を立とうとしたら職員に呼び止められた。
『先程の特殊処理された…聖水晶片、だったか?それを売って欲しいのだが』
『あれはあまり数を揃えられないのですよ…次回までに少し制作して貰うよう交渉致しますので、交渉主の調査結果判明後でも宜しいのでは?』
俺の言いたいことが分かったのか職員は納得してくれた。
『次回からは彼女がメインで運びますので』
『分かった。宜しく頼む』
『はいっ、宜しくお願い致します』
秘書よ、ガチガチなんだが?どした?
さて、恩を仇で返すような輩にはまずは警告が…いや、今回はあからさまだからな…あちらの手違いだとしても許されるラインは越えている。
詳細情報を各方面から集めるか…
弟と妹の家を黙々と守っていたら勘違いされている件について 御片深奨 @misyou_O
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