戻れ、光の軌跡

Renon

星は見えない

 いつからだろうか。

七夕の存在に価値が見いだせなくなったのは。

子供の頃は皆、純粋な眼差しで短冊を眺めていたものだ。

それも今となっては遠い昔の話。


「ねね!今日ね!短冊友達と書いたんだけどね、、」

帰路にある幼稚園からは高揚感から逃れられない子供達の声。


願い事か……


書くわけでもないのに頭の中で妄想を膨らます。だが、いくら悩んでもそこに答えは現れなかった。

社会をある程度知ってしまった大人は、願い事が孕む絶望に気づいている。言葉にしてしまえば、辛い現実が心に刺さる。それはまるで、自殺の為のナイフを自分で研いでいるような残酷なものだ。もうあの頃の純粋な心情を取り戻せはしないのだろう。そう、肩を落とす。


「今日の夜、屋上で集合ね!絶対天の川見るんだから!」

彼女の声が脳裏をよぎる。

高校3年のあの日、まだ鮮明に覚えている。横で天の川を眺める彼女の瞳はどんな星よりも明るく、綺麗だった。

あの瞳がもう一度見れたなら。

私はきっと七夕に価値を取り戻すだろう。


願わない事を短冊に書く気はない。ネットの海に言葉を綴る。


『彼女の瞳が光を取り戻しますように。』

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戻れ、光の軌跡 Renon @renon_nemu

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