第59話 夜空の下で幼馴染と
「ま、結局こうやってお風呂に2人で仲良く入ってられる未来があってよかったね」
グーンと伸びをする笑来。
細く今にも折れそうな白い腕、辿って行くと、日常生活ではあまり拝むことができない脇。
そこにエロスを感じる……って、ちょっと感動的な話をしているのに俺は何を考えているんだ。
でも仕方ない、なにせ男子だから。本能には逆らえない。
「こんなうまくいくとは思わなかっ――」
ジーっと鋭い視線が俺に向けられる。
「――って、嘘嘘。笑来となら絶対に幸せになれるって思ってたよ」
「ですよね~」
頭を優しく撫でると、猫の様に喉を鳴らす。
これまで笑来と過ごしてきたからこそ分かる、約束された幸せ。
笑来も俺を裏切らないし、俺も笑来を裏切らない。
幼馴染に存在する絶対的な信頼関係。
そこから発展する恋人関係なんて、失敗するわけがない。
「ねぇ、悠」
「ん?」
「高校卒業してさ、2人とも進学して、就職して結婚して、老後まで一緒に居られるのかな?」
「結婚する前提なんだな」
「悠は私をお嫁さんにしたくないの?」
「左手の薬指に指輪をはめてあげたいです」
「まぁ、私たち高校卒業も危ういんだけどね~」
テヘッとお茶目に舌を出す笑来に、
「それはお前だけだ」
と、頭にチョップする。
結婚をする前に、まずは高校を何事もなく無事に卒業する。
そして、大学へ行き、ここもちゃんと卒業。そして、安定した収入を得る為に就職をする。
そこから、結婚だ。
「新婚生活どうなるのかな~」
「おいおい先の話をしすぎじゃないか?」
「妄想するだけなら自由です~」
「別れた時、それがクソ痛い発言に思えるからあんまり言うもんじゃないぞそういうのは」
「別れないから大丈夫でしょ。悠が浮気しない限り」
「大丈夫。俺は元カノからのハニートラップに対して暴言を吐けるくらいには笑来一筋だから」
「知ってるよ。私も物心ついた時から悠一筋だから安心してね」
「安心しきってるから安心しろ」
「何それっ」
口元を抑えながら笑うと、
「ま、何が起きても、俺たちならなんとかなるよ」
俺も小さく笑いながら言う。
「悠が全部どうにかしてくれるの?」
「いや、笑来のど根性でどうにかなる。最終手段暴走しそうだし」
「私が何しても許される設定なのね」
「俺に対しては、何しても許されると思うぞ」
レストランで飲み物を服にこぼされても、お気に入りの靴を汚されても、悪ふざけでお尻を蹴られても、俺は笑って許す。
浮気だけは、許されない。されたら、俺は1年間は寝込むだろう。
「ふーん、何しても許してくれるんだ」
口元をすぼめながら、見透かしたような目で俺を見る。
「もちろん限度はあるけどな」
「なら、これは許されるのかな――」
刹那、笑来は俺に顔を近づけると、そのまま俺の唇を奪う。
短く重なる唇。笑来の鼻息が少し荒い。
俺は、突然の事に目を見開いている。
「……っ、どう? 許してくれる?」
顔を離すと、頬を赤らめ、人差し指で唇を撫でながら聞いてくる。
「……許します」
唖然とした表情で、俺は答える。
顔が、いや、体全体が熱い気がする。多分、真っ赤に火照っているだろう。
キスのせいではなく、お風呂でのぼせたと思いたい。
幼馴染の恋人とのキス。
それは、高級旅館の最上階にあるスイートルームの個室温泉の中。
「月、綺麗だね」
ポツリと笑来は呟く。
街灯がふわりと夜に輝き、空には、満点の星空と満月。
そんな煌びやかな光に照らされている笑来の横顔は、満月よりも遥かに綺麗だった。
幼馴染とのラブコメなんて、現実であり得ないと思っていた。
しかし、こうも現実で上手くいくと、これが現実じゃないかと疑いたくなる。
上手くいっている分、これから不幸な事が起きる前兆なのかもしれない。
しかし、そんな事心配いらない。
何故かって?
俺には
彼女に振られた俺、その日から幼馴染の愛が異常に強い もんすたー @monsteramuamu
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