生まれたときから、当たり前のように戦争が続いている時代。長きにわたる戦いが千年も続いているのですから、泥沼もいいところです。一時的な停戦は、風に吹き飛ばされそうな木の葉のような頼りなさがあります。
つかの間の平穏を破ったのは、戦争がもたらした負の遺産。弱き民の窮地を救うべく、巨躯の鉄鎧が駆けつけます。赤く光る鋼刃剣による戦闘シーンは、メカニックに詳しくない方でも安心してついていける激アツ展開です。
巨大ロボットが登場する作品が好きな方は、整備を担当するおやっさんらの雰囲気も堪能していただけると思います!
聞こえるはずのないBGMが軽やかに聞こえてきてしまう映像美は、コミカライズおよびアニメ化を予感させることでしょう!
人々の心から「平穏」が立ち去った世界。
戦より生み出された魔導力兵器が、新たなる戦乱の熱を世界に広げつつあった。
その名は魔刃騎甲《ジン・ドール》。
時に弱者を虐げるために使われるそれを止めるのは、鋼刃剣を持った水色の魔刃騎甲<ハイザートン>。
重力を操って移動し、圧倒的性能差であっても相手を倒す。
その操縦者は、少女隊長リリィ。
父親が作った部隊を引き継いだ彼女は、愉快な仲間たちとともに任務に当たっていた。
そんな彼女たちに、魔獣討伐要請が出て…
ロボットの戦闘シーンもさることながら、リリィやエイモンたちの掛け合いが楽しいです!
ロボがね、好きです。
突然のカミングアウトになりましたが、私はロボットが大好き。それも、ちょっと野暮ったいくらいにどっしりしたやつが好きです。細身のスタイリッシュなやつはちょっと。シュッとしててカッコいいんですけどね、だけどほら、どっしりしたやつが機敏に動くのとか、武器をぶん回すのとか、ロマンだから。ロマンがあるから。
さて、本作に登場するロボット、魔刃騎甲(ジン・ドール)ですけども、私はね、どっしり型だと思ってます。勝手に。何せロマンだから。
その辺はまぁ良いんですけど、本作の何が良いって、戦闘描写でしょうね。ロボのバトルなんてなかなか書けませんって。生身のバトルも難しいですけど、ロボはもっと難しい!けれども、さすがはロボをこよなく愛する作者様!熱いです!熱く書かれています!こんなのもう映像で見たいやつでしょ!アニメ化、早よ!
そして個人的にこの作者様の文章のお気に入りポイントはズバリ台詞回し!
なんかね、生きた台詞なんですよ。わかります?生きてる。生きてる人間が喋ってる感。そういうのがね、すごく好きですね。
登場人物もなかなか癖のあるキャラが多く、リリィュ隊長(最後の『ュ』は発音しなくてOKだぞ!)も良いんですけど、私は法術式師のサマージェン・カーター先生が好きですね。
果たしてどんな結末を迎えるのか、ドキドキしながら続きを読ませていただきます!
魔刃騎甲と呼ばれるロボットの存在する世界。
今は停戦しているとはいえ、千年に及ぶ戦いが繰り広げられてきたこの地で、リリィを隊長とする部隊の奮闘が描かれます。
本作で特出すべきは、魔刃騎甲の描写。
見せ場となる戦闘シーンはもちろん、設定の説明や整備の様子といった、場合によっては簡略化されかねない場面でも、地の文で、登場人物の言葉や様子で、魔刃騎甲がいかなるものかが事細かく書かれています。
ロボットなんて架空のものです。ましてや異世界ですから、細かいことなんていざとなれば、魔法でなんとかできますの一言で片ずけることだってできるのです。
しかしそこをあえて濃く描くことによって、設定の深みやこの世界におけるリアリティが、そして何より、作者様のロボットに対する思いが読む人に伝わってくるのです。
かく言う自分もロボット好きなので、この描写には大満足。
魔刃騎甲の活躍、これからも追っていきたいです。