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第1部

ある日、高校生のみこちゃんは友達と6人で心霊スポットとして有名な工場跡に肝試しにきた。

「なんか雰囲気あるね」

「ほんとだねー!」

みこちゃん達は工場の中を探索していた。

「ねぇ!これ見てよ!」

そう言ってみこちゃんが見せたのは、錆びた鉄パイプだった。

「え?なにそれ?」

「持っておけば武器になると思わない?」

「もうすでに人を殺す武器として使われたあとだったりして。」

「怖いこと言わないでよ!」

「でもさぁ…………ほら、この辺りって血まみれになって倒れてる人の幽霊が出るらしいよ。その人が使ってたのかな?」

「やめてってば!」

その時だった。

ガタンッ!! 奥の方から音がした。

「ひっ!な、何?」

「見に行ったほうがいいのかな…」

「もう帰ろうよ…」

「何いってんの!私たち肝試しに来たんでしょ」

「うぅ……じゃあ行くけど怖かったら助けてよね」

「分かった分かった。行こうか」

6 人は音の鳴った方に向かった。

そこには大きな機械があった。

「これは……なんだろ?」

「もしかしたら爆弾とかかもしれないわね。解体しないと」

「りあちゃん解体なんてできるの?」

「そもそもなんで工場跡に爆弾があるのよ」

「まって、下手に触ると…」

急に動き出した刃はりあちゃんの指を勢いよく切断し、辺りを鮮血に染めた。

「あ゛っ いだいぃぃぃ!!!!!」

「りあちゃん!?大丈夫!?」

「いたぃょぉ……いだぃぃ……」

「ちょっと見せてみて!」

手を見ると綺麗に切れていた。

「はっ、早く止血しなきゃ。包帯はある?」

「あると思う。工場なんだから。」

「もう帰ろうよぉ」

想像を絶する痛みに苦しむりあちゃんを前に恐怖と焦燥を隠せない一同。

その時、背後から声が聞こえてきた。

「お前らも俺と同じになるんだよ」

「え?誰?」

振り返るとそこに立っていたのは紛れもなく出発前夜夢で見たあの時の男だった。

「ひぃ!こっちに来るな!」

男はゆっくりと近づきながら言う。

「俺は死ねなかった。この工場は工場なんかじゃない。ここは───」

なにか言おうとしたが最後まで聞くことはできなかった。

瞬間男の首は宙に舞い、溢れ出る赤色とともに男の体は地に伏せた。

「きゃああああああ。もう限界!こんなところにいられない!」

と走り出すひみか。

「あっちょっ待っ」

ひみかは出口付近で立ち止まった。

「どうしたの?」

「何か聞こえる…………」

耳を澄ますと確かに微かにだが音が聞こえてくる。

「なにこれ……音っていうより悲鳴みたいな…………」

「そんなわけないじゃん。だってここ無人の工場跡だよ?」

「でも聞こえる!」

「きっと助けだわ!外から騒ぎを聞きつけた大人が助けに来てくれたのよ!これで助かるわ!もうちょっとだけ我慢してねりあ!」

「…」

声の方から現れたのは警察ではなく、血まみれの男達だった。

「あれれぇ〜まだ生きてる奴がいたのか〜」

「まあいいや。ついでだし全員殺しちゃおっか」

「うぅ……逃げないと……」

ひみかは震えながらも立ち上がる。

「逃すかよっ!」

「きゃああああああ」

「ごめんなさいごめんなさい助けて助けて!」

「走れるりあ?」

「もうおしまいだわ…」

少女たちは激しい後悔と恐怖の中、男たちに捕まった。

「はぁ……今日も疲れたぁ」

そう言いながらベットに飛び込む。

「あ、そうだ。」

そう言って机に向かう私の名前は相田莉愛(あいだれあ)。高校2年生。友達からは「リア」と呼ばれている。

私には趣味がある。ホラー小説を書くことだ。いつかはプロになりたいと思っている。

「今回のは工場跡───もとい研究所に肝試しに来た少女たちが体験する惨劇を描く物語だけど───」

「自分を登場させるのって精神的に疲れるわね。指なくなったら小説書けないじゃない。」

私の高校生活は平和そのもの。勉強もスポーツもそれなりにできるし友達も多い。クラスの中心にいるタイプではないけれど、クラスの隅っこで目立たないようにしているわけでもない。みんなと仲良くできてそこそこ楽しく過ごせればそれでいいと思ってる。

「だからこそ刺激を求めてホラー小説書いてるんだけど」

「ふぁあ……眠くなってきた……そろそろ寝ようか。続きは明日。」

部屋の電気を消したとき、スマホから通知音が鳴った。

「ん?なんだろ」

見るとそれはSNSのメッセージだった。

「誰からだろ……?」

差出人はクラスメイトで友人のひみかだった。

『りあちゃん助けて』

「……?」

とりあえず電話してみることにする。

「どうしたのひみか、大丈夫?」

「大丈夫じゃないよ〜。朝起きたら体重が減るように一緒に祈って〜海行きたいよ〜」

「…本当に平和ね。もう寝るわ、おやすみ」

りあは電話を切った。次の日、登校すると教室の雰囲気がおかしかった。

「ねぇ、なんかあったの?」

近くにいた女子生徒に声をかけた。

「知らないの?りあちゃん」

「何が?」

「昨日の深夜にひみかちゃんが行方不明になったらしいよ」

「えっ…」

病院のベッドで目覚めるりあ。

「そう…平和な高校生活は夢だったの…後味の悪い夢ね」

あの時切断された指はなかったが、もう痛くない。眠っている間にどれほど時間が経ったのだろうか。

その時、金属がなにかにぶつかる音がした。

病室に入ってきた看護師がトレイを落としたようだ。

「りあちゃん!?目覚めたの!?先生呼んでくるから!」

「あれからどれくらい経ったの?」

「あなたは2年間ずっと気を失っていたの。まだ何もわからないでしょうけど、先生が来たら全部説明するから!」

「みんなは?」

「…りあちゃんが無事で良かったわ」

病室を出ていく看護師。

「嘘でしょ?私が目を覚ましたんだからひみかも……」

ひみかのことが心配になり急いでナースコールを押した。

「ひみかはどこに行ったの?なんで教えてくれないんですか!」

しばらくして医者が現れた。

「おはようございます。気分はどう?」

「私は大丈夫だからみんなは?みんなのことを教えて!」

「…りあちゃんはえらいね。悪いけど目覚めたばかりの君にすべて説明する訳にはいかない。今は自分のことだけ考えて治療に…」

───眠気が襲ってきた。2年間も眠っていたというのにこの体は。

「眠いのかな?もう寝飽きただろうけど体のためだ。ここは安全だから、安心して眠ってほしい。」

りあちゃんの脳裏には意識が途切れる寸前にさっき見た夢の最後が浮かんでいた。

「「昨日の深夜にひみかちゃんが行方不明になったらしいよ」」


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