Moon no more yell


 命が綺麗と、あなたに言われました。

 わたしは、これからも命を磨き続けて、

 もっと、美しく咲き誇るとでも思っているのでしょうか。


 年の終わり、新月のように心を片付けて、

 年のはじまり、満月のように言葉が満たされて、

 今宵、毒を塗りなおした指先でわたしは何を食べるのでしょう。


 情熱の白いバラは命を抜かれているのでしょうか。

 最初から白いバラだったのでしょうか。

 すべてを跳ね返す色は、わたしに情熱を運んでくれないのです。

 真っ白な心の臓はとうに、真っ黒な闇の中へ沈んでしまいました。


 これは、エゴですか。

 何も持っていないと思うことも、エゴなのですか。

 あなたはそれでもわたしに、

 命が綺麗という言葉を投げるのでしょうか。

 それも、エゴではないのですか。


 潔癖の正論で、心を片付けないでください。

 成熟の同調で、私を満たさないでください。

 わたしはそれでもあなたの前で、息をしているのです。

 ずっと、ずっと、ずっと。


 今宵、欠けた月が割れた窓から見下ろしているのです。

 呼吸をするわたしが死ぬまで、息を止めながら。

 じっと、じっと、じっと。


 だから命は、綺麗なものではありません。

 だからわたしは、あなたに生まれたばかりの猛毒を吐くのです。


「わたしは、死にたくない」

 と。

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田毎の月 月瀬澪 @mio_tsukise

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