インナーチャイルドに会いに行く~20歳前後

 前回の小学校高学年の頃の私に引き続き、なにかあるなと感じたのは、20~21歳の初体験済ませた後~初めて出会い系やってた頃の私だった。(詳細は『肥溜めへとダイブ』で書いております。)自分なんて価値がない、傷つけたい、とずっと思い詰めていた。その気持ちを、いまだに引きずっているような気がした。

 そうしてまた、動画の音声で瞑想に入っていった。



 部屋の中にたたずむ「私」。表情はどんよりとしており、手をつないで抱き寄せると、それを拒むことはなかったが、嫌だ、死にたい、気持ち悪い、取り外したい(胸とか子宮とか)、と言っていた。この頃は自分の体が気持ち悪くて気持ち悪くてどうにかなりそうだった。

 私の言葉を聞いてくれる状況ではなさそうだったから、そうだね、我慢してたよね、気持ち悪かったね、と相槌を打つに留めた。でも、あなたが我慢してくれていたから今の私があるし、こうして会いに来れた。あなたのこと粗末にして、大事にできなくて、ごめん。「私」は私の言葉を聞いてはいたけれど、心にまで届いたかは分からなかった。また来るから、そう伝えて部屋を出た。



 2度目の「私」も同じような雰囲気。暗い表情とネガティブな言葉。

 これは多分言葉で話すだけでは伝えきれないだろうなと察し、お互いの体を触ってみよっか、裸で、と急に思い立った。自分の体が気持ち悪いものじゃないって感じるためにはそうすべきだと思ったからだ。これは動画にもない、完全に私のアドリブだった。頭の中は自由だからどんなことでもできた。

 「私」の顔を触る。正確にはほほを両手で包んで、見つめ合う。「私」の瞳の中に、私が写りこんでいるのが見える。そして「私」の手をつかんで同じように私の顔を触らせる。首、腕、指先、胸、お腹、太もも、ふくらはぎ、足先。全身を「私」に触らせた。そして現実の私も、私自身の体に手を滑らせる。

 あなたが今触っているもの、気持ち悪いと感じる?汚いと思う?そう尋ねると、「私」は涙を流しながらううんと首を横に振り、気持ち悪くない、きれい、と答えた。私はほっとして、「私」の顔を見つめる。

 そして、あなたのこと、大好きだよ、愛してるよ、と告げた。

 「私」はさらに泣き出してしまい、つられて私自身も泣きそうになった。「私」を抱きしめながら、大丈夫だよ、泣いていいんだよ。あなたがいてくれてよかった。どれだけ悩んでいいよ、私がまた会いに来るから、見つけに来るから。そう伝え続けた。

 別れ際、またねって手を振ったら、まだ泣いていたがうんと頷いてくれた。


 終わってからなんだか心がじんわりあったかくて、あたしの体って大事なものだったんだ、と思えるようになっていた。自分を大切にする、という感覚が、初めて分かったときだった。



 3度目の「私」は、少し明るい表情になっていた。普通にお話しできそうだなと思ったので、手をつないでベッドに隣同士で座った。

 私、あなたのこと嫌いだって思ってた。大事じゃないって思ってた。ごめん。とちょっと泣きそうになりながら告げた。今分かったんだ、自分に価値なんてないって思ってたけどそんなことないって。

 私もそう思ってた、と「私」。私も私が嫌いで大事じゃなかったから。

 ごめんね、本当はあなたのこと大好きで本当に大事なの。ごめん。2人して間違えちゃったね。もう大丈夫だから。

 そうして二人で抱き合って大好きって言い合って。私に任せて、一緒に行こう、と言った。抱きしめたまま溶け合うように、「私」が光の粒になって消えていくのが見えた。

 ここにいるんだ、と胸の中にあたたかさを感じながら思った。傷ついて思い悩んでいた「私」も、今私と一体となってここにいる。そんな気がした。

 



 自分を好きになる、自分を大事にする、私には絶対無理だってずっとずっと思い続けていた。でも今、以前より確実に自分が好きで大事で、私のこの体は容れ物なんかじゃない、私自身だってようやく感じられている。

 だってもう、「女の私」を許しているから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「女の私」が嫌いでした 雑草 @cicek_17

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ