インナーチャイルドに会いに行く~12歳前後

 翌日も、同じ動画を流して瞑想に取り組んだ。前回会えたのは自分の想定よりもずっと大人の「私」だったが、今回は意図的に、この頃の自分に何かあると思った小学校5~6年の時の「私」をイメージして会いに行った。



 扉、部屋は前回と同じ。その中に小学校5~6年の時の「私」が立っていた。当時お気に入りだった叔母のおさがりの服を着ていて、元気な女の子といった様子。間違いなく自分自身なんだけど、思わず「かわいい!」と口からこぼれてしまった。途端顔をしかめて嫌がる「私」。抱きしめようとしたら逃げられて、やだやだと駄々をこねていた。捕まえて手をつないで、何がやだ?思ってること言ってみて?と伝える。

 顔を見つめていると、口をへの字に曲げむすっとしていたが、やがて悔しい、もうやだ、と言って堰を切ったように泣き出した。多分女の体でいることが男子に負けたみたいで悔しい、体が変わっていくのがやだ、そういう意味だったと思う。そして人前で泣くなんて嫌だから我慢してたけど、こらえきれず泣いてしまった、そんな泣き方をしていた。

 我慢強くて、いじっぱりで、プライドが高くて、人に弱さを見せない。嫌なことがあっても何でもないように気丈にふるまう。この歳でそれができているなんて、我ながら強い子だなと、泣いている「私」を抱きしめながらそう思った。

 別れ際、「私」はまだ涙が止まらない様子だったが、また来るねと言って部屋から出た。


 


 2度目に会いに行ったとき、また来たよ~と言うと、ちょっとは私を認めてくれたのか満更でもない表情をしていた。また手をつないでかわいいと伝えるが、嫌そうに顔をそむけた。

 かわいいって言われるのいや?と聞いてみる。

 女の子みたいでいや、「私」が複雑そうな表情で答える。

 そっかぁ〜、女の子なのがいやなんだ?と私。

 いや、とムスッとしながら答える「私」。

 なんでいやなんだろ?と問いかけてみる。

 だってきもいじゃん、とまたムスッとしながら「私」。

 きもいかぁ…。かっこいいがいいの?じゃあ○○(当時仲の良かった同級生)は?女の子で可愛いけどきもい?と畳みかけてみる。

 う~ん、きもくない…と少ししゅんとしながら「私」が答える。

 やろ?女の子でかわいいけどかっこいいやろ。好きな男の子いるけどきもくないやろ。優しく諭すように語りかける私に、しぶしぶと言った様子で頷く「私」。

 じゃあ一緒だって。◎◎ちゃん(私の名前)も女の子だけどかわいいしかっこいいよ。

 うちはかわいくないもん…女の子なのいやだもん。とまたブスっとして答える。

 そっかぁ…まあ分かるよ。じゃあお姉さんは?きもい?と自分を指さして聞いてみる。

 きもくない!と「私」が元気に答える。

 やろ?かわいいしかっこいいやろ?内心自分で言うなよ、と思いながら言ってみる。

 うん。かわいいしかっこいい。と素直に肯定してくれる「私」。

 なら◎◎ちゃんも一緒やって。だって私も◎◎ちゃんなんやから。

 そうかなぁ…と納得いっていない様子の「私」。

 そうよ。まだ分からんかもしれんけど。◎◎ちゃんはかっこよくてかわいくて強い子だよ。今まで頑張って我慢してたんだもん。ありがとうね。偉かったね。◎◎ちゃんのこと大事だよ。大好きだよ。抱きしめながらそう伝える。

 「私」はもう、私を拒まなかった。私もお姉さん大好き!と抱きついてくる。

 うん!お姉さんも大好き!じゃあまたね。

 そんな会話をした。自分で自分のことがかわいくてかわいくて、終始にやけていた気がする。お互いに大好きと言い合えたことが嬉しくて、あったかい気持ちになれた。「私」が私を受け入れてくれて、私も「私」を大事だと思えたことで、私自身とつながれたような気がした。



 3度目になると、「私」は私にだいぶ懐いてくれていて、私も「私」がかわいくて仕方がなかった。ベッドに並んで座って、普通におしゃべりをした。

 ほんとは好きな男の子がいるけど隠していたこととか、生理が始まって胸が大きくなり始めていやなこととか、我慢していて偉いねと言ってあげた。でもほんとはそれ我慢しなくてもいいんだよ、男の子好きになってもだれも気持ち悪いなんて思わないよ、生理も周りより早くて嫌かもだけど、みんななるから大丈夫だよ、と諭す。「私」は前回とは変わってうんうん、と素直に聞いていた。

 お姉さん(今の私)ってどんな感じ?と尋ねてみる。

 かっこいい!と「私」。

 そっか、お姉さんね、実は◎◎ちゃんの15年後の姿なんだよ、と教えてあげる。

 かっこいいお姉さんて感じ!「私」が嬉しそうに答える。

 そこでまた「私」を抱きしめて、いっぱい頑張って我慢して偉かったね、と思いつく限りの褒め言葉を伝えた。「私」はもう私を嫌がったり泣いたりしなかった。

 部屋を出る時、お姉さんと一緒に行く?と聞いてみた。◎◎ちゃんのしたいことしよう、おいしいもの食べたりしよう。ミスドとか行く?そうしたら「私」はうん!と元気に答え、私と手をつなぎ部屋の外に出ようとした。しかし、扉の前で「私」はさらさらと砂のように崩れ光って消えていってしまった。

 ああ、見つけてもらえて、言いたいこと言えて、満足したんだろうな。

 あの子は今、ここに一緒にいるんだな。

 そんな風に思った。

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