【アルエ】魔法少女のマスコットになるよ!【サヤカ】

「みんな、はろーっ!」


 ≪はじまた≫

 ≪はろーっ!≫

 ≪待ってました≫

 ≪わー≫


「デジタルの世界からみんなに"楽しい"をお届けする、非実在ストリーマーの鳥羽アルエ、と!」


「皆さんこんばんは、サヤカです」


 ≪はろー!≫

 ≪アルエとSaYaKaママはろー!≫

 ≪ママさんおめでとう!!!!!!!≫

 ≪こうして二人の配信が見れる今日に感謝≫

 ≪杏珠引きました!!!!≫

 ≪あれ、SaYaKaママ挨拶が……≫

 ≪ママさん結局挨拶変えないままなのwwww≫

 ≪テンションの高低差で風邪引く≫


「今日も二人で、みんなと一緒に楽しく遊んで行くよーっ! なんだけど、その前に。みんな、ごめんなさい!」


 ≪なになに≫

 ≪お?≫

 ≪どうしたの!?≫

 ≪何事ですか≫


「サヤカに新しい挨拶、してもらうことが出来ませんでした……ッ!」


 ≪そこかwwwwww≫

 ≪ダメだったかーwwwww≫

 ≪むしろちょっと安心したところある≫

 ≪まあ無理にやらすもんでもないw≫

 ≪恥ずかしがり屋だからねえw≫


「みんなに送ってもらったアイデア、すごく面白いのいっぱいあったのに、どうしても自分にはできないって……『こんにちさーやか♪』とか『さやじょるの~♪』とか『みんな元気でちゅか~? みんなのサヤカママだよ~♪』とか!」


 ≪待ってwwwwwwwww≫

 ≪最後wwwwwww≫

 ≪誰だ送ったやつwwwww≫

 ≪俺らのママじゃないだろいい加減にしろ!≫

 ≪でも私は、SaYaKaママにならオギャれる……≫

 ≪あっ(察し≫

 ≪お巡りさんこいつです≫


「うう、ほんとにごめんねみんな、わたしの力が足らないばっかりに……」


 ≪まあまあ≫

 ≪独自の挨拶ってなきゃいけないもんでもないし≫

 ≪いつものSaYaKaママでいいのよ!≫

 ≪ちなみにそこんところママさんコメントは≫

 ≪ご本人からなにか一言ないんですか!(マイク向け≫

 ≪謝罪会見かな?≫

 ≪あ、メガネかけた≫


「スゥー…………」


 ≪すっごい溜めてるwwwww≫

 ≪これは≫

 ≪※音量注意≫


「あのねちょっとほんとマジ無理だから私みたいなド陰キャ引きこもりインターネットお絵描き女が『こんにちさーやか♪』とか直視できないっていうかどう考えてもみんなのドン引きと失笑買うだけっていうか最後の送って来た人私にアルエの身体でなに言わせようとしてるんですかッッッ!!!!」


 ≪出たあああああwwww≫

 ≪SaYaKaママの早口いただきましたヤッター!≫

 ≪早い早い早いそして長いwwwwww≫

 ≪滑舌と肺活量どうなってんのほんとにwwww≫

 ≪『こんにちさーやか♪』のところ切り抜きしますね≫

 ≪やったーーーーーママに怒られた!!!!(うわーーんごめんなさいママーー!)≫

 ≪あのさあ≫

 ≪主犯ネキ反省の色見られず≫


「えーーーーー! だってだってだってせっかくサヤカもVtuberデビューするんだからって、みんながオリジナル挨拶考えてくれたんだよ!?」


「私はあくまで交代人格だって言ってるのに、アルエがみんなに募集かけるからでしょうが! だ、だいたいそんなこと言ったら、アルエの挨拶だって『はろーっ!』じゃん!」


「わ、わたしはほら、全部含めて挨拶だから」


「じゃあアルエの部分も含めて私たちの挨拶ってことでいいでしょ!」


 ≪それはそうwww≫

 ≪これは正論w≫

 ≪しかしなんか、いつも遠慮がちだったママさんが普通に口論してて≫

 ≪わかる……尊み……≫

 ≪仲良くケンカしてて一生見てられる≫

 ≪あの、今日は案件配信では……?≫


「あーっ! そうだった、こんな話してる場合じゃないよサヤカっ! ほらほらお知らせお知らせ!」


「ぇぇ……アルエがはじめたんじゃんか……こほん。え、っと、以前ご報告させていただいた通り、好評配信中のソーシャルゲーム『ブルーレコード』に新規登場するキャラクター、森咲杏珠のキャラクターデザインとグラフィックを担当させていただいていたんですが……先日いよいよ杏珠が実装されました」


 ≪めでたい!!!!≫

 ≪8888888888≫

 ≪おめでとうございまーす!≫

 ≪いやー、プロデビューがまさかブルレコとは≫

 ≪杏珠めっちゃ可愛い≫

 ≪やはりママの実力は本物……≫

 ≪まだ引けてないよちくしょう!≫


「というわけでっ! 今日はブルーレコードさんとの正式なコラボ配信! アンジュがどんなキャラクターなのか、実際にゲームをプレイしながら紹介していくよっ!」


 ≪案件だーーーーーーーーーー!≫

 ≪ブルレコはじめました≫

 ≪キャラ性能見せてもらえるのありがたい≫


「そう、案件なんだよ。案件配信。鳥羽アルエ始まって以来、初の案件配信です」


 ≪どうしたのアルエwwwwww≫

 ≪めっちゃ強調してくるwww≫

 ≪大事なことなので≫

 ≪はじめてだもんねェ、よかったねェ≫


「わたし、気付きました。サヤカがプロイラストレーターになるって話で、わたし置いて行かれちゃうかも、なんて思ってたんだけど」


 ≪そんなこともあったねえ≫

 ≪実際そこからプロデビューしてるのほんとすごい≫

 ≪アルエもちゃんと前進できてる!≫


「でもこうして、企業からの案件っていうVtuberとして大きな一歩を、サヤカのプロデビューと同じ作品で踏ませてもらえるなんて、すごい話だなって」


 ≪おお……≫

 ≪言われてみれば≫

 ≪運命的ですなあ≫


「だから、そんな貴重な機会をくれたブルレコさんに目いっぱい感謝しながら、ゲームとキャラクターの魅力を伝えられたらなって思ってるよ!」


 ≪すごい、アルエが真面目だ!≫

 ≪成長を感じる……≫

 ≪これがママへの反抗期を乗り越えた娘の姿≫

 ≪あれ反抗期だったか?≫

 ≪むしろママ大好き過ぎたが故の衝突なんだよなあ≫

 ≪親戚の気持ちになってきた≫


「ちょ、ちょっとーっ! みんななんか変な方向でしんみりしてるでしょっ! そういうのじゃないからっ! とにかく、はじめますっ! この『ブルーレコード』は、異世界から来た妖精になって、侵略してくる敵と戦う魔法少女をスカウトしてサポートしていくゲームだよっ! でも魔法少女って呼ばれるわりに、みんな鉄砲を使って戦う、すっごく武闘派なのが面白いよねっ」


 ≪なんちゅう世界観だ≫

 ≪ただし魔法は銃から出る≫

 ≪魔力で精製した弾丸を撃ってるって設定だから、魔法魔法≫

 ≪変化球型魔法少女増えたよねえ≫


「それでそれで、新キャラのアンジュは、普段は刑事さんとして働いてる女の人なんだって! スーツ姿からコスチュームに変わるんだよっ!」


 ≪魔法、少女……?≫

 ≪魔法少女(32)までいるから、杏珠はまだ若い若い≫

 ≪いろいろ攻め過ぎなんだよなあ!≫

 ≪妖精との出会いがまたね……≫

 ≪おっとそこまでだ≫

 ≪ネタバレいくない≫


「ということで、さっそくアンジュのエピソードを見て、どんな風に戦うのか見てみようね……って企画はどうでしょうか、って運営さんに言われたんだけど」


 ≪お?≫

 ≪む?≫

 ≪けど?≫

 ≪?≫


「さっきも言った通り、わたしは思いました。ブルレコに、目いっぱい恩返しがしたいっ! って」


 ≪なるほど?≫

 ≪ほほう≫

 ≪まさか……w≫

 ≪流れ変わったな?≫


「なのでっ! いま手元にわたしのアカウントがあるけど、まだアンジュはいませんっ! そしてアンジュはガシャで出ますっ!」


 ≪これはwwwwwww≫

 ≪マジかwwwwww≫

 ≪ガシャ配信だあああああああああああ≫

 ≪ガシャの時間だ!!!!!!!!!≫

 ≪命を燃やせえええええええ≫


「ちょ、ちょっと待って待って! あれ!? 運営さんから配信専用のアカウント貸してもらうって話だったよね!?」


「打ち合わせが終わったあと、サヤカに内緒でこっそり担当さんに連絡したんだっ!」


 ≪ママ知らなかったのかよ!wwwwww≫

 ≪多重人格同士でこっそりとかできるのか……w≫

 ≪さあて盛り上がってまいりましたwwww≫ 


「いやいやいやいや、ダメでしょそんなの! だ、だってこれコラボ配信なのに、万が一引けなかったりしたら……」


「それはそれで面白い、って担当さん言ってたからっ!」


「ぇぇ……」


 ≪広報担当wwwww≫

 ≪いいなその担当さんwwww≫

 ≪ま、まあ世の中には公式配信でガシャ爆死したプロデューサーもいたし≫

 ≪引けば問題なかろうなのだ!≫


「で、でも私この間退職したばっかりなのにそんなお金……」


「安心してっ! みんなからもらった投げ銭で回すからっ!」


 ≪おいwwwwwwww≫

 ≪俺らの課金で推しがガシャを回す:3,000円≫

 ≪全然いいんだけどさあwwwwwww≫

 ≪しれっと大事な情報漏らさんかったかSaYaKaママ……≫

 ≪どんどん回してください:5,000円≫


「あああああもう……み、みんながそうやって甘やかすから! この間も”推しに課金”とか言って、突然デッサンモデル用のすごい動く手のフィギュアが届いたんだからね!?」


 ≪あれ買ったのかwwwww≫

 ≪ごめんなさいママ:5,000円≫

 ≪金銭感覚は大事だよね:10,000円≫

 ≪SaYaKaママの手の表現めっちゃよくなったと思ってたらw≫

 ≪ママさんに怒られちゃ仕方ない:3,000円≫


「まあまあ、とにかく回してみようよっ! もしかしたら一発で来てくれるかもしれないじゃんっ! ちなみにアンジュは、再来週までピックアップしてるそうなので、みんなも挑戦してみてねっ! じゃあまずは1回目……えいっ! あれ?」


 ≪おっ≫

 ≪これは!≫

 ≪確定演出キタ≫

 ≪すり抜けるんじゃないぞ≫

 ≪来い来い来い来い≫


「えーと、これは……あっ」


 ≪きたあああああああああああ≫

 ≪杏珠だ!!!!!!≫

 ≪あんたんすげえええええええ≫

 ≪えっ、CVみっちょんなの知らんかった≫

 ≪ディスティニードローだ!!≫

 ≪おめでとーーーーーーー≫

 ≪SaYaKaママという最強の触媒効果が≫

 ≪ここで回せば我々も引けるのでは?≫


「まさか、ほんとに一発で引くなんて。でもよかった、これで無事にキャラ紹介が……アルエ?」


「なんで……」


 ≪あれ?≫

 ≪どうしたのアルエ≫

 ≪テンション低い?≫


「なんでーーーーーーー!? も、もっとこう、最初は全然来なくて、引けるかな、引けないかなみたいなドキドキの末に引けるかと思ってたのにっ!?」


 ≪やめなさいwwwwwwww≫

 ≪ガシャ配信の取れ高気にしだしたら終わりだぞ!wwwwwww≫

 ≪ほんとに案件配信でいいのかこれwwww≫


「ううううううう、こんなはずじゃなかったのにっ! こ、こうなったらアンジュ限凸するまで回して……!」


 ≪いかん、アルエが暴走しだしたwww≫

 ≪その道を進んだら戻れなくなるwwwww≫

 ≪ブルレコはガシャで限凸しようとすると地獄ですよ!≫

 ≪地獄でしたよ(経験者は語る)≫

 ≪ひぇ≫

 ≪これには煽った我々も反省≫


「こ、この……いい加減にしなさい、アルエーーーーーーーーーーー!!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

わたしの中に推しがいる! ふぉるく @boogiefolk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ