第124話

勇者スキル『 故に浪漫となるヒロイックデザイア』 。三崎がこの世界で得たこの新しい力は対象物が象徴する力を再現・増幅する力である。


今回三崎がこの能力の対象物として選んだのが”王都の城壁”。それが象徴するのは「民を守る」という初代国王の意志そのもの。


これにより英雄譚模擬概念武装 万民を守る王の盾初代アルコーン王が発動し、王都全体が守られる超巨大な結界が発動した。


突如王都に現れたドラゴンやワイバーンからの無差別攻撃の全てを防ぐその結界は当然ながら王都中から見ることができ、都市全体が騒然とすることになる。


もちろん三崎達がいまだ留まる修練場においてもこの偉業の再現を見た王や宰相達は呆気に取られた表情をして空を見上げ、そして三崎の直ぐ側でへたり込んでいた女騎士は


「…これが勇者様のお力」


と頬を染めうっとりとした表情で三崎を見つめていた。メンタルを叩き折られた直後にこの光景を見せられた女騎士は非常に情緒が不安定である。そんな女騎士の様子に気づいたアルファは女騎士と三崎の間にスッと体を滑り込ませると女騎士から三崎を見えないように隠した。


「マスター、さすがですね。どれほど保ちそうですか?」


そんな動きを全く気取らせることなくアルファはいつものように淡々と三崎に確認を進める。地面に手のひらを当てたまま三崎は


「うーん。まだこの世界の魔力とか魔法がいまいちピンときてなくてな。たぶんそれなりに保つはずだが…」


と言いながらも毎度おなじみのぶっつけ本番だったことから三崎自身もこの勇者スキルやこの世界の魔法体系がいまいち理解しきれていないため煮えきらない返事である。


「それよりもアルファさんや」


そろそろ地面から手を離しても結界の維持は当面大丈夫そうだなと感じた三崎は手や膝についた砂を払いながら立ち上がりつつ真面目な顔をしてアルファに話しかける。その真面目な様子をみたアルファは首を傾げつつ


「そんな真面目な顔をしてどうしました?」


「うん、まぁカッコつけた直後で我ながら締まらないんだが」


「マスターがアレなのはいつものことなので気にせずどうぞ」


「その返しもどうよと思うんだけどな…アルファ、今回の能力。発動中は一つの英雄譚しか再現できないっぽい」


と非常に微妙で気まずそうな表情をした三崎が告げる。それを聞いたアルファは呆れつつも


「…ということは?」


「現状のままだと結界は張れても攻撃手段がない」


三崎とアルファのやりとりを静かに見守っていたランパード王や宰相ダカンはその発言を聞き非常に微妙な表情をした。


・ ・ ・


王都がドラゴンやワイバーンに襲われ、三崎が大規模結界を展開してから10分程が過ぎた。三崎の結界は外からの攻撃は遮断するものの内からの攻撃は通すことに気づいた騎士や魔法使いたちが弓や魔法で空の魔物たちに攻撃を加えているが中々敵の数も減らず、戦況は膠着状態である。


三崎もこの10分ほどで万民を守る王の盾初代アルコーン王を維持したままで何とか『 故に浪漫となるヒロイックデザイア』を並列利用できないか試していたが


「…だめだなこれ。かなり制約が強いスキルだわ」


「みたいですね。…まぁある意味で非常にロマン味あふれるスキルではありますが」


「しかもスキルの元ネタになる英雄譚とその対象物が無いとそもそも発動すらできないって欠点もあるしな」


「そういう意味では本当にあの城壁があってラッキーでしたね」


「まったくだ」


るんるん気分で何も考えずにデウス・エクス・マキナをぶっ放していた7年前を思い出しながらも、さてどうしたものか?とアルファと話ながら三崎が考えていると”ズドンッ”と王都中を揺るがせるような大きな音と振動が発生した。


何事か!?と全員が空を見上げると


「な!?あれは黒騎士!?」


とその音の発生源を見た宰相ダカンが叫ぶ。そこには大型の黒龍と、それに騎乗する禍々しい雰囲気を漂わせる黒い甲冑の騎士がいた。その黒龍と黒い騎士が結界に攻撃を加えると再び王都中を震わせる振動が発生した。


「ダカン宰相!あれは何だ!?」


一撃一撃の結界へのダメージが洒落にならない事に焦った三崎がダカンに問うと


「あれは黒騎士!?正確な名称などは不明ですが私達はそう呼んでいます!!魔王軍の四天王です!!!」


まじか、さすがに展開が異世界転移テンプレすぎね?と唖然とした三崎だったがこれは結構ガチでヤバいわ、マジでどうするか?と思ってアルファの方を見ると


「ふっふっふっ」


とアルファが非常に珍しい表情をしている。これは何かあるな?と思った三崎は


「アルファさんや、何か秘策があるんだろ?勿体ぶってないで教えてくれ」


「ふふっ、良いでしょう。マスターもお困りのようですし状況も状況ですからね」


「あぁ、結界も結構ダメージを受けてるからな。早いとこ頼むわ」


「はいはい。ということで。そんなこともあろうかと!!!」


とアルファが気合を入れるとその体から魔力が迸り、さらに紫電がバチバチと放出された。


「もしかしたらお忘れかもですが。マスターは勇者として。そして私はこの世界で”精霊”として召喚されています。この世界の精霊はどうやら主に力を与える存在のようですね」


そして一際強い光が放たれるとアルファの体の輪郭がぼやけていく


『私が司る属性は”雷”。まぁアレです、電子の妖精から来たとでも思っておいてください。ではマスター。行きますよ!!』


掛け声を聞いた三崎は頭の中に思い浮かんだ言葉をそのままアルファの言葉に重ねる。


「『精霊外装!!!』」


三崎とアルファの姿が重なり、そしてカッ!と光るとそこには普段は黒い目と髪が金色に、更に黄色を貴重とした戦闘衣装に身をまとった三崎がいた。


手をグーパーした三崎は体の調子を確かめると一気に空高く飛び立ち、そして


「『精霊外装・オーバードライブ!!!第十階梯 雷魔法 始まりの雷ライジング』」


轟音とともに空から数多の雷が王都上空に降り注ぎ全ての敵を叩き落した。


・ ・ ・


【作者あとがき】

バーンバーンバンバーン バーンバンバンバン バーンブレイバーン!!!


うおっしゃああああああ!!!!!!こういうのを待っていた!!!!!と例の第1話を見てテンションが爆上がりしたけーぷです。


まさか令和になってこんな内容のアニメが、しかもこのクオリティで見れるとは…と感動しました。他にも今季のアニメは豊作ですね。素晴らしい。


あと早くSEEDの映画見に行かないと…ズゴック、お前は何なんだ!!!!


ちなみに色々自分の中で整ったので以下の新作も投稿しています。ダン研は嫁系AIに弄ばれる勇者研究者が主人公ですが、こちらは姫騎士に尻に敷かれる脳筋文官が主人公です。


文官してたら姫騎士に脳筋だとバレて前線送りになった

https://kakuyomu.jp/works/16818023212714210036


ご関心あれば是非読んでみてください。週明けから局所的にアホみたいに寒くなりそうですが皆様体調には気をつけてお過ごしくださいね。


2024年2月4日 けーぷ

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ダンジョン技術研究所職員、自作ロマン武器を試したくて副業で配信始めました。 けーぷ @pandapandapanda

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