第6話・いつまでも、ご主人の近くで一緒にいてあ・げ・る〔完〕

◯ご主人の夢の中、学校の校舎内。


//SE・夢の中にいるようなフワフワ感な音。


//・ご主人、高校時代の制服姿でなぜか、通路に立っている。そこに同じ制服姿のアリエス。


「スカートの丈みじかっ⁉ これが、ご主人の高校の制服なんですね。似合っていますよ、あたしの制服姿はどうですか? ご主人が憧れていた先輩って設定なんですけれど……設定で男子生徒を、女子生徒に変えちゃいましたぁ」


//・アリエス、いきなりご主人の背中を通路の壁に押しつけて、壁ドン体勢に入る。


「この状況を説明しても欲しいですか? 酔っ払って帰ってきて、あたしの胸に顔を埋めて泣きじゃくった、ご主人はそのまま、あたしの胸枕で眠っちゃったんですよ」


//SE・アリエス、おヘソから、シュルルと通信コードを引っ張り出す音。


「だから、玄関から部屋にご主人を運んで。仰向けに寝かせて、あたしのおヘソのコードと、ご主人のおヘソを繋げて、脳と直結して夢を共有しているんですよ……これから、ご主人が学生の時に、願いが叶わなかった。憧れの先輩からの壁ドンをしてあげます……少し刺激的な壁ドンと、顎クイを」


//・ご主人の股に間にアリエスの膝を入れる。


//SE・ドンと壁に手や膝が当たる音。


「今、ご主人の股の間に、あたしの片足が入っているんですよ。体の両側には簡単に逃げられないように、あたしの両腕が……こんな過激な『股ドン』が、願望だったんですか? これから、キスします……顎をクイっと上に上げさせて……ご主人の唇を奪います」


//・アリエス、ご主人に股ドン状態で、キスをする。


「んッ……んッ……ご主人、夢の中で望みが叶って良かったですね……学校の中だから、通行している生徒がいるから恥ずかしいですって……大丈夫ですよ、ここは夢の中なんですから。今のあたしたちは透明人間と同じ……壁ドンで、キスしていても誰の目にも見えていませんよ」


//SE・遠くから目覚ましのアラーム音、徐々に強くなる。


「目覚めの時間ですね……夢の中で、癒されてスッキリして、今日もお仕事がんばってください」



◯現実、ご主人の休日、街歩き。


「今日は天気がいい、休日で良かったですね……とりあえず、街に出てきましたけれど。どうします? 映画館の暗い館内に、女二人が並んで座ってラブな映画を観るとか。買い物で洋服の試着室に女二人で入るとか……えっ、アリエスが言うと全部いやらしく聞こえますか……あっ、なんかチラシ配っている?」


//・道を並んで歩く、ご主人とアリエス。ご主人の方にだけ、なぜかチラシが渡される。


//SE・チラシの紙の音。


「チラシに、なんて書いてあるんですか?」


//・アリエス、少し驚いた口調で。


「『本日に限り、遊園地と動物園の入場料、女性客半額デー』⁉ これはもう、行くっきゃない!」



◯遊園地&動物園


//SE・園内の大型遊具の音・遊んでいるお客の歓声。


//・遊園地で遊ぶ、アリエスとご主人。


//SE・メリーゴーランドの音。


「待ってくださいよぅ、ご主人……あっ、メリーゴーランドの馬車や馬やドラゴンに乗っているんだから、待ってくれるはずはないか……次は大型ブランコの『空飛ぶ海賊船』で、ご主人の手を握って」


//SE・大型ブランコ遊具の歓声。


「ご主人! 最高です、あたしの手をしっかり握ってくれて、最高ですぅ! 遊園地の次は併設している、動物園へゴー!」



◯夕暮れに染まる動物園。


//SE・閉園間近を知らせる『蛍の光』〔メロディー〕


//SE・サル山のサルたちの鳴き声・南国の鳥の鳴き声。


//・手をつないで、サル山を眺めているアリエスとご主人。


「動物園のサル山にも、日が傾いてきましたね……ニホンザルの赤ちゃん、カワイイですね。今日は楽しかったですか? あたしは、ご主人と手をつなげて楽しかったです……あたし、フレンド・ドールに魂が転生する前の記憶を、少しだけ思い出しました」


//・アリエス、少し悲しげな口調で。


「あたし、人間だった時に、一度も友だちと一緒に遊園地や動物園に来たコトがなかった……いつも、一人ぼっちだった。ご主人があたしの初めての友だちに、なるのかもしれません」


//SE・夜が近づくにつれて、夜行性動物が活発に動く声。


「えっ、どうして呼び方が『ご主人さま』じゃなくて『ご主人』なのかって? だって、ご主人さまって呼んだら。主従関係が発生して、親しみの距離感が広がっちゃうじゃないですか……ご主人、ハグしてキスしてもいいですか?」


◯向かい合って、しばらく見つめてから、ハグしてキスをする二人の女。


「んッんんッ……これからもご主人とあたしは、ずうっと一緒です……アリエスが、心と体を癒してあげます……んッ、ご主人はあたしのペット……あたしは、ご主人の所有物でモノですから……んんッんッ」


//SE・どこからか、聞こえてきた教会の鐘音を聞きながら……静かにラストを迎える。


『ご主人さまをアリエスのペットにしてあ・げ・る』~完結~

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ご主人さまをアリエスのペットにしてあ・げ・る 楠本恵士 @67853-_-

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