必殺仕事人風台本9『女勝負』

Danzig

第1話


人を殺す女


お竜:ふぅ、一丁あがり、

お竜:へへ、ちょろいもんだね


お竜:は!


ひとの気配に気づき、物陰に身を隠すお竜


お竜:誰だい!


物陰からゆっくりと現れる女


お蝶:お竜(りゅう)さん、ひさしぶりだね


お竜:なんだい、お蝶かい

お竜:驚かさないでおくれよ

お竜:なんでお前がここにいるのさ


お蝶:なんでだと思う?


お竜:さぁ、知らないね

お竜:私に金でもせびりにきたのかい


お蝶:違うよ


お竜:じゃぁ、何だってんだい


お蝶:お竜さん、あんた随分と節操もなく仕事をしているようじゃないか


お竜:あぁ、金が欲しいからね。


お蝶:それだけかい?


お竜:いや、違うね

お竜:私は殺しが楽しいのさ


お蝶:へぇ


お竜:何か悪い事でもあるのかい?

お竜:憎い奴を殺したいって人間がいて、

お竜:それを私が代わりに殺してやる。

お竜:まったく、いいことづくめじゃないか


お蝶:まぁ、それが私たちの仕事だからね


お竜:だろ?

お竜:それがどうしたってんだい


お蝶:だけどお竜さん、あんた関係ない人まで殺してるそうじゃないか


お竜:あぁ、そういう時もあったかね

お竜:なぁに、ついでさ

お竜:それが悪いってのかい


お蝶:悪いかどうかなんて、私は知らないよ

お蝶:でもね、

お蝶:私らの稼業(かぎょう)は、どっぷり殺しに染まっちまうけど、

お蝶:殺しに酔うようなやつは、始末がわるいのさ


お竜:へー

お竜:聞いた風な口きくじゃないか

お竜:で、始末が悪いから、私を殺る(やる)ってのかい

お竜:お蝶、お前の正義ってやつで


お蝶:私にはそんな正義なんてないよ


お蝶:私はただ、仕事でここに来たのさ。

お蝶:昔のよしみだからね、声をかけさせてもらったのさ


お竜:そうかい・・・仕事かい

お竜:で、私はいくらで殺されるんだい


お蝶:弐朱(にしゅ)だよ


お竜:なんだい、私の命はたったの弐朱(にしゅ)かい、

お竜:それっぽっちじゃ死んでも死にきれないね


お蝶:人を殺すほど、自分の命は安くなる

お蝶:あんたが私に教えてくれた事じゃないか


お竜:あぁ、そんな事は分かってるさ

お竜:それにしても随分と安くなっちまったもんだねぇ


お蝶:こういう仕事をしてるとね


お竜:そうだ、お蝶、お前に私が稼いだ百両やるよ

お竜:それで、私の前に先にその依頼人を殺しておくれよ


お蝶:そんな事して何になるのさ、そんな事も分からなくなっちまったのかい


お竜:あぁそうかい・・・それもそうだね

お竜:それで、お前は私を殺れるのかい


お蝶:あぁ、私は負けないよ


お竜:そんな事じゃないよ

お竜:何も知らなかった子供のお前に、仕事のイロハから

お竜:男の扱いまで教えてやったこの私を

お竜:お前は自分の手に掛けられるのかいって聞いてんだよ


お蝶:そんな事なら心配しなくてもいいよ

お蝶:親の殺し方まで、あんたに教えてもらったからね


お竜:あぁ、そうかい、わかったよ

お竜:お前の技が、私に通じると思うならやってみるがいいさ


お蝶:あぁ、そうさせてもらうよ


二人の戦いが始まる


お竜:はっ(応戦している息遣い)


お蝶:くっ(応戦している息遣い)


お竜:ちっ(応戦している息遣い)


お蝶:はっ(応戦している息遣い)


勝負がつかない


お竜:どうしたんだいお蝶、受けてばかりじゃないか

お竜:そんなんじゃ、いつまでたっても私を殺せないよ


お蝶:あんたこそ、息が上がってるんじゃないか、

お蝶:歳は取りたくないねぇ


お竜:相変わらず生意気だねぇ

お竜:もう終わりにしてやるよ


お蝶:あぁ、

お蝶:あんたこそ、覚悟しな


お竜:はっ(応戦している息遣い)


お蝶:あ・・(体制が崩れるお蝶)


お竜:ふ、これで終わりだよ


お蝶:ふん


お蝶の得物がお竜を捕らえる


お竜:う・・・あぁ・・・

お竜:お・・ちょ・・・なんで・・・


お竜が絶命する


お蝶:はぁ、はぁ


お蝶:お竜さん、殺しに酔った人間はね

お蝶:どうやって殺しを味わうか、殺しの瞬間にそういう事を考えて、隙が出来るんだってさ

お蝶:左之助がいってたよ



お蝶:お竜さん、私はずっとあんたに憧れてたんだよ

お蝶:まぁ地獄は少し寂しいかもしれないけど

お蝶:私もどうせ、じきに地獄にいくからさ

お蝶:向こうでも私に先輩面(せんばいづら)してくれよ


お蝶:じゃぁな


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