第49話 アレホ様と共に今を精一杯生きていきます

呪いが無事解けた翌日、アレホ様と一緒に修道院へと向かう。


「アレホ殿下、リリアーナ様、よかったですわ。無事呪いが解けたのですね。本当によかったです」


私達の姿を見た修道長様が、涙を流しながら抱きしめてくれた。他の修道女様たちも、安どの表情を浮かべていた。


「修道長様、ご心配をおかけしてごめんなさい。それから私、もう過去を振り返る事は止めました。これからはアレホ様と一緒に今を、そして未来を見て生きていきますわ」


「そうですか、それはようございました。この様な事を言っては不謹慎かとは思いますが、もしかしたら今回の件は、お2人の絆を確かめる試練だったのかもしれませんね。無事試練を乗り越えられたお2人は、きっと幸せな未来が待っている事でしょう」


絆を確かめ合う試練か…


確かに、そうだったのかもしれない。今回の件で、私たちの絆は、明らかに強くなった。それに魔法について色々と考えさせられることも多かった。やはり全く魔法に触れずに生きていく事は、不可能なのかもしれない。


またいずれ第二第三のマルティ様の様な人が現れないためにも…


「修道長殿、あなた様の言う通り、僕たちは幸せな未来を歩むためにも、そしてここに暮らす全ての民たちが幸せになれるためにも、リリアーナと2人で手を取り合い、より良い国を作っていきます。僕は望んではいないのですが、パラレル王国から僕の師匠も王宮魔術師として招き入れる事になりましたし…」


「そうだったのですね。それはようございますわ。魔術師様がいらっしゃれば、不測の事態にも対応できますから。この国はずっと、魔法とは無縁と言うか、避けて来た節がありました。ただ…やはり多かれ少なかれ、魔法に関するトラブルは尽きなかったのです。その事を考えれば、やはり魔法を避けるよりも、ある程度向き合っていった方がいいでしょう」


そう言ってほほ笑んでいる修道長様。


その後子供たちの元に向かった。どうやらかなり心配をかけていた様で、中には泣いて喜んでくれた子もいた。


目いっぱい遊んだ後、孤児院と修道院を後にした。


「リリアーナ、皆喜んでくれてよかったね。あの子たちが安心して住める国を、これから僕と一緒に作って行ってくれるかい?」


「ええ、もちろんですわ。もう二度と、魔法を悪用する人間が現れない様に、魔術師様にも来ていただく事になったのです。ただ…私たちの一存で決めてしまっても、よかったのでしょうか?」


そう、あの場所で勝手に決めてしまった事、他の貴族に許可を取らなかった事を心配していたのだが…


「昨日の夜、緊急の貴族会議を開いて、皆には許可を取ったよ。そして今回の呪い魔法の件についても詳しく話した。貴族の中にも、必要に応じて魔法を使っていくべきではないのかと思っていた人も多かった様でね。皆快く賛成してくれたよ」


「それは良かったですわ。ただ私は、魔法にはいい思いではないので、あまり関わりたくはないですが…」


それでもこの国の為には、必要な事だと理解している。魔術師様がいらっしゃる事で、皆が安心して暮らせるのなら、それでいいと考えてはいるが。


「リリアーナ、改めて僕を受け入れてくれてありがとう。修道長殿も言っていたけれど、今回の呪いの件は、僕たちの絆を試すための試練だったのかもしれないね。ただ…リリアーナが苦しんだことは、僕にとっては不本意ではあったが」


そう言って殿下が苦笑いしている。


「本当に苦しくて痛くて、辛かったですものね。でも…マルティ様に言いたい事が言えたので、少しだけすっきりしましたわ…」


「そう言えばあの時、あの女に言いたい事を言っていたね。あの時のリリアーナ、とてもカッコよかったよ。リリアーナ、あの時は本当にすまなかった。もう二度と魅了魔法なんかに掛かったりはしないから」


「もういいのです。私もアレホ様に、散々酷い事を言いましたので」


「リリアーナ、愛しているよ。ずっとそばにいて欲しい」


「私も愛しております。これからはずっとずっと一緒ですわ」


どちらともなく顔が近づき、唇が重なる。


「そう言えば口づけをするのは、これで2回目だね」


「そうですわね、でもあの時は必死だったので、あまり覚えておりませんわ」


そう、呪いを解くのに必死だったのだ。でも、呪いが解けて本当によかった。ギュッとアレホ様に抱き着いた。温かくて心臓の音が聞こえる。よかった、生きているわ…それが嬉しくてたまらない。沢山泣いた分、これからはたくさんの幸せが待っている事だろう。



~5年後~

「リリアーナ、また師匠の屋敷に来ていたのか。それもアークとリルアまで連れて!」


怖い顔でやって来たのは、アレホ様だ。私達はあの後結婚し、1男1女に恵まれた。


「ちちうえ、ぼくまほうがつかえます」


「あたくちもでちゅ」


嬉しそうに子供たちが、アレホ様に抱き着いている。


「君たちは魔法なんて使えなくてもいいんだよ。それよりも師匠、毎日毎日子供たちとリリアーナを屋敷に連れ込んで。ろくに仕事もせずに、魔力の研究ばかりして。我が国からたくさんのお給料を払っているのですから、しっかり仕事をして下さい」


アレホ様が魔術師様改め、グラッソ様に向かって文句を言っている。


「アレホ殿下は相変わらず口うるさいですな。そもそも、今この国が平和に暮らせるのも、私が毎日国中を魔法で監視しているからではありませんか?昨年も、法律で禁止されている魔法を使おうとした人間を捕まえましたし。私は十分すぎるほど働いておりますが?」


すかさずグラッソ様がアレホ様に向かって文句を言っている。確かにグラッソ様の魔法は素晴らしく、この5年で既に3件もの事件を未然に防いているのだ。さすが魔法大国、パラレル王国の魔術師様だ。


それに魔法は、覚えてみると意外と面白く、いつの間にか私も子供たちも、今は魔法の虜なのだ。他の貴族たちも、少しずつ簡単な魔法を覚え始めている。そう、この5年で我が国は、上手く魔法を使いながら皆が生活する使用にシフトチェンジし始めたのだ。


少しずつだが、魔法と共存する道を歩み始めた私達。


「本当に師匠は、口だけは達者なのですから」


はぁっと、アレホ様がため息を付いている。


「まあまあ、グラッソ様のお陰で、よりこの国は平和になったのですからいいではありませんか。それに魔法も、覚えてみると楽しいですわよ」


「リリアーナ、君はもう魔法は懲り懲りと言っていたではないか!全くもう」


そう言って怒っている。その姿もまた愛おしい。そう、私たちは5年経った今でもラブラブなのだ。


なんだかんだ言って、私や子供たちの意見を尊重してくれるアレホ様。彼の言葉に傷つき、生きる希望を失いかけた事もあった。過去に囚われ、今を、そして未来を見失いかけた事もあった。


呪い魔法に掛かり、死を覚悟したこともあった。それでも今、私はアレホ様の隣にいるのだ。呪いに掛かって以降、私は過去の事を思い出し、苦しむこともなくなった。本当の意味で、私に掛かった呪いはあの時全て解けたのだと思っている。


「アレホ様、怒らないで下さい。私はずっと、あなた様を愛しておりますから。これからもずっと一緒です」


「急にどうしたんだい?でも、なんだか嬉しいな。ありがとう、リリアーナ。僕も愛しているよ。リリアーナ、僕を受け入れてくれてありがとう。僕は今、とても幸せだよ」


「私も今とても幸せですわ」






おしまい


~あとがき~

これにて完結です。

最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m

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婚約破棄した殿下が今更迫ってきます!迷惑なのでもう私に構わないで下さい @karamimi

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