第48話 魔術師様が我が国に来るそうです
「すごい光が部屋を包んだように見えたが…もう入ってもいいのだろうか?」
恐る恐るドアを開けたのは、お父様だ。後ろには皆が心配そうに覗いていた。
「もう入って頂いて大丈夫ですよ。先ほどの光は、リリアーナの魔法が成功した光の様です」
「殿下、それにリリアーナも。よかった、魔法は成功したのですね。本当によかった」
お父様とお母様、リヒトが私を、陛下と王妃様がアレホ様を抱きしめて泣いていた。
「皆様、心配をおかけして申し訳ございませんでした。呪いをかけた張本人でもあるマルティ様の魂は、先ほど消滅いたしました。これでもう、私たちを脅かすものはいなくなりました」
「そうか…リリアーナ、よく頑張ったな。さすが私の娘だ」
そう言いながら、お父様が泣きながら私を抱きしめている。お父様、随分泣き虫になったわね。今までどんなことがあっても、あまり涙を見せなかったお父様が、今回の件で泣きっぱなしだ。
スッと家族から離れると、アレホ様の元へと向かった。
「アレホ様、私を助けて下さり、ありがとうございました」
「お礼を言うのは僕の方だよ。リリアーナ、本当にありがとう。それから、本当に僕と共に未来を歩んでくれるのかい?」
「ええ、もちろんですわ。これからはずっと一緒です」
アレホ様をギュッと抱きしめた。随分と遠回りしてしまったが、もう二度と私が彼から離れる事はない。これだけは言い切れる。
「2人の気持ちも通じ合ったのだな。よかった。それでは、早急に2人の婚約を結び直さないといけないな」
「殿下の王位継承の件を考えると、婚約後は期間を開けずに婚姻に進んだ方がいいだろう。リリアーナは既に王妃教育もすんでいるし、アレホ殿下の17歳の誕生日に婚姻を結べるようにしましょう」
「そうね、それじゃあ、急いで準備をしないと。これから忙しくなるわね」
「リリアーナのウエディングドレスも準備しないといけないし。何だか楽しくなってきたわ」
急に張り切り出した両親たち。ちょっと急展開過ぎない?そう思ったが、本人たちが嬉しそうだから、まあいいか…
“あの、私の事を忘れていませんか?”
ポツリと呟いたのは、魔術師様だ。しまった、完全に存在を忘れていた。
「申し訳ございませんでした。今回の件、本当にありがとうございました。あなた様のお陰で、2人が救われたのです」
陛下が鏡に向かって頭を下げている。
“分かって頂ければいいのです。それでですね、折り入って相談があるのですが…”
「相談とは?」
「師匠、リリアーナは絶対に渡しませんからね。今だってリリアーナと僕の結婚の話を聞いていたでしょう!」
アレホ様がギュッと私を抱きしめ、鏡に向かって必死に訴えている。そんなに必死にならなくても…
「あの…どういう事でしょうか?リリアーナに関係があるのですか?」
お父様が不審そうに魔術師様に語り掛けている。
“リリアーナ嬢の魔力は、本当に素晴らしいものです。我がパラレル王国にも、これほど良質な魔力を持っている人はほとんどおりません。そう私は確信しているのです。ただ…彼女自身が我が国に来たくないとおっしゃっているので…それでですね、私がこの国に来て、リリアーナ嬢の傍にいるというのはどうでしょう?どうか私を、カレティス王国の王宮魔術師にして下さい!」
何と!
「リリアーナはそんな凄い魔力を持っているのですか?でも我が国では、魔力は…」
“魔力に頼らずに生きている国という事も知っております。ですが、万が一また、呪いをかけた令嬢の様な人間が現れたら、どう対処するおつもりですか?現に1年もの間、殿下の魅了魔法を解く事が出来なかったのでしょう?私なら、数秒で解く事が出来ましたのに…”
「確かに魔術師様の言う通りだ。アレホが魅了魔法に掛かっているという事は理解できたものの、解き方が分からず四苦八苦してしまった。その結果、リリアーナ嬢をボロボロに傷つける結果になってしまったのだったな。確かに魔術師様が我が国にいてくれたら、もう禁断魔法の恐怖から解放されるかもしれない」
「父上!確かに師匠には感謝しておりますし、彼がいれば我が国も平和を維持できます。でも…なんと言うか、師匠の目的がリリアーナなのがちょっと…」
小声でブツブツ文句を言っている殿下。
「アレホだって、最低限の魔法は必要だろうという事で、パラレル王国に向かったのだろう?それならやはり、魔術師様に来てもらった方がいいだろう。魔術師様、どうかよろしくお願いします。お住まいは王宮に新たに屋敷を建て、そこに住んで頂くという事でよろしいでしょうか?」
“ええ、構いませんよ。それでは準備が整い次第、すぐに向かいますね”
どうやら魔術師様がいらっしゃるという事で、話しがまとまった様だ。ただ…アレホ様だけは、どうしても嫌な様でまだ隣でブツブツ言っている。
「リリアーナ…どうか師匠に会う時は、僕と一緒の時にしてくれるかい?」
不安そうに私を見つめるアレホ様。もしかして魔術師様に嫉妬しているのかしら?
「ええ、もちろんですわ。それから私が心からお慕いしているのは、アレホ様ただ1人ですので、どうかご安心ください」
そう笑顔で伝えた。それにしても、まさか魔術師様がこの国に来ることになるだなんて。
※次回最終話です。
よろしくお願いしますm(__)m
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