6畳半攻城戦

まにょ

第1話

 「ついに手に入れた!」

 奥野翔は自室でガッツポーズを掲げていた。

 目の前にある開けられたダンボール。その中には『薄い本』が数冊が梱包されていた。

 親から気づかれずにネットショップで購入して早1種間。翔の欲望は今

目の前にいる。

 翔が思いを噛み締めながら梱包紙をめくっていると、

 「翔ーーー!昼ごはんできたよーーー!!」

 母親が昼飯の呼びかけに留まらず、勢いよく翔の部屋の扉を開けてズカズカと入ってくる。

 「今行くって。つーか勝手に部屋入んなよ」

 間一髪だった。

 母親が入ってきた刹那、テーブルの下へと薄い本を隠した。母親の視点からして死角となっているだろう。

 「ん?そのダンボール、なにか買ったの?」

 「そ、そうだよ。特に変わったようなもんじゃねえから気にしなくていいよ」

 ダンボールに目移りしている隙に背中へ薄い本を隠して自室を出ようとする。が、扉の先には翔の姉、楪がいたのだ。

 母親の死角だけを気にして隠していた。それ故に楪には丸見えだった。それに加え、何かを企んでいるに違いない異様な笑み。

 「お姉さん、そこどいてよ」

 「早く来ないとご飯冷めちゃうよ〜 」

 わざとらしく笑いながら退路を塞ぐ。

 「楪なに言ってるの。今日の昼飯はうどんなんだからそれを言ったら『伸びる』でしょ」

 あはは、と母親が笑いだして、それにつられて笑い出す。

 まずい。非常にまずい。このままだと籠城戦となってジリ貧だ。

 「ちょ、ちょっとお腹痛くて熱っぽいから昼ごはんいいや。先に食べといて」

 踵を返して布団にこもろうとする。

 しかし、翔の二の腕を姉に捕まられる。

 「そんなこと言って、どうせお菓子食べすぎたせいで腹空いてないんじゃないの?」

 「もうそんなことー。早く来なさ......ってあれ?」

 翔の下にあるものを拾おうとする。

 それは薄い本の入った梱包紙だった。楪から掴まれた勢いで離してしまったのである。

 「なんでもないーーーーー!!!」

 条件反射のように素早く屈み、母親と同時に掴み取る。

 「あんたそんなに急いでどうしたの?逆に気になるわね」

 母親の力がさらに強くなる。それに呼応して翔の力も強まるが、梱包紙が破けて中身が床にぶちまける。

 「か、かける。これなんなの?」

 母親は一番近くに落ちた本のタイトルを見て絶句する。

 

 『身長140cm台ミニマム美少女レイヤー、6P大◯交!中年カメコチ◯ポで子◯制裁』


 姉はまるで結末が分かっていたように大笑いする。

 「昼ごはん食べた後、話し合いがあるので準備しておいてください。あと、この本は回収しますんで」

 翔はがっくりとその場にうなだれる。

 これで俺の六畳半攻城戦は幕を下ろした。

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6畳半攻城戦 まにょ @chihiro_xyiyu

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