ピリッとした怖さでもなく、ドロッした怖さでもなく、肚の底にずっしりと沈み込むような遅効性の怖さを味わいたい方にオススメの一作です。さっと読める短編なのに、その中身の重さは長編に勝るとも劣らない余韻をもたらしてくれます。正直、一度読んだだけで終わるのはもったいないです。二度、三度読んで、本作の苦みを味わってみてください。
極上のホラー演出に、安定した筆致。そしてなんといっても特筆すべきは、その構成にあります。他の方のレビューにもあるように、本作の構成には唸らされます。前後で話が組み合わさることにより、ホラーのベールを脱ぐ真の狂気。読み進めるうちに物語にどんどん引き込まれていき、貴方は本作の訴える恐怖の本質と向き合うことになるでしょう。そこで貴方はなにを考えて、なにを想うのか。もう一度、物語の最初に戻って思考を巡らせてみてください。きっと、また新たな発見があるはずです。
作中の至るところに張り巡らされた恐怖と伏線。すべてを見破った暁には、貴方は本作の真の読者となれることでしょう。短編好きやホラー好きはもちろん、物語を味わい尽くしたい方は是非ともご一読ください。