乾いた世界に響く銃撃戦のスリルと心を結ぶ絆の物語
- ★★★ Excellent!!!
乾いた風が吹き抜ける砂漠の世界に、温かな絆の光がそっと灯る――『機械仕掛けのフェアリー・ハート【完全版】』を読み終えて、私はそんな余韻に包まれました。
主人公ソラとAI妖精アリス、そしてミランダ。それぞれが孤独や痛みを抱えながらも、逃亡や戦いを重ねるなかで、少しずつ心を開き、言葉や行動に優しさが滲み出していく姿がとても印象的です。互いを照らし合うような関係になっていく過程が、決して派手ではなく、静かで穏やかながらも、しっかりと心に残りました。
AIと人間の境界線、喪失からの再生、そして許しや希望――物語のなかで描かれる一つひとつの出会いや選択は、まるで砂の中の宝石のように輝きを放っています。スリリングな冒険や銃撃戦の迫力だけでなく、静かな時間に交わされる会話や、ふとした優しさの瞬間が、物語全体にやさしく広がっているのが魅力的でした。
異なる存在同士が分かり合い、支え合おうとする心。その小さな奇跡の積み重ねが、荒廃した世界にも確かな明日をもたらすのだと、読後も静かに信じられる――そんな温もりに満ちた作品です。