第34話
「おやじ! いえ……組長! 話がございます!」
帰宅するなり、少年は、父親……組長の執務室に乗り込んだ。
「光輝……、何だね? 帰るなり乗り込んで来て騒々しい」
父は書類から目を通しながら応えた。
「光輝……、小耳に挟んだのだが、眞白道場の坊ちゃんに果たし状叩きつけるような事したそうじゃないか?」
父は眉間に皺を寄せながら尋ねた。
「はい! 彼は……」
「お前個人でやるのは一向に構わないのだが……言いたい事はわかるな?」
少年が喋る途中で、釘を刺すように言った。
「えっ……?」
少年は戸惑いを浮かべた。今までは、大抵、父……組長に泣きつけば何でも手に入れられた……金、高級品、遊びのオンナ……、だが今回は釘を刺された、今までに無い事だった。
「何故です? ヤツは……!」
少年は尋ねた。
「相手がお世話になっている眞白道場、の門下生で、この私が手合わせした事もある少年……だから言える事だ。お前、組員がかかってもかなう相手ではない! そもそも、この地域界隈で眞白道場に牙を剥くという事は、私に生き恥を晒す事にあたいする……。よって、お前個人でやるのなら一向に構わないが組員を動かすという事は出来ん、という事だ」
父はキッパリと少年の意をはねつけた。
「クソ!」
少年は、扉を叩きつけるようにして出て行った。
「親分………いいんですかい?」
組長付きのボディーガード兼補佐の男が尋ねた。
「いいのさ……! 甘やかして来た俺も悪いのさ」
組長は肩を竦めながら答えた。
「くそっ!」
一方、少年はサンドバッグを思い切り殴りつけ、組員が淹れたコーヒーもはねのけて、後始末をさせている間もむしゃくしゃするのを止められなかった……。
「あいつが眞白道場の何だか知らねえが、俺にはそんなん関係ねえ……! 組動かすのダメなら俺で動くだけだ!」
「坊っちゃま! よされた方が……」
「左様でございます!」
組員達は止めようとするが、
「うるせえよ!」
少年は、宥める組員達を振り切って、部屋を出ていった。
「坊っちゃま……」
組員達の声は少年に届く事はなかった……。
異世界召喚 ~繋りを失った幼馴染の少女に異世界へ召喚されました~ 如月 八雲 @yam_ato-R5
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