七夕だから牡丹餅
「短冊になにを書いたの?」
妹に聞くと、短冊を隠してしまった。
え、お姉ちゃんに言えないことを書いたの……? でも、飾れば見えるけど……。
「教えてくれないの?」
「……、かくことが、なかったの」
「お願いごとがなかったの?」
妹が、うん、と頷いた。
でも、一応は書いているみたいだし、なにもないってことはないんじゃ――、
「――『幸せなことが起こりますように』、か……漠然としてるねえ」
幸せとはなに? 妹が思う幸せと私が思う幸せは違うわけで……叶える方も困ってしまうだろう……。お願いごとがなかったけど、とりあえずなにか書かなきゃ、と思って書いたものだから、まあ、叶わなくてもいいとは思っていそうだけど。
なんでも良かったんだけどな……、無理難題でも、書くだけならなにもいらないんだから。
それとも、叶えてほしいことは自分で叶える――って、妹は考えているのかもしれない。
だとしたら強くなるね、この子は。
「……だめ?」
「ん? 大丈夫だと思うよ……いいんじゃない?」
結局、妹の短冊はそのまま飾ってあげた。
まあ、漠然としているってことはなんでもいいってことだから、叶える側としては楽になるんじゃないかな……、無理難題よりは、当然、叶えやすいお願いごとだ。
そして翌日。
妹と部屋の掃除をしていると、お母さんが隠していたであろうお土産が見つかった。
和菓子だ。どうせ一人でこっそりと食べようとしていたのだろう。
妹と見つけたので、これはチャンスである……美味しい思いを横取りだ。
とは言ったけど、もちろん、勝手に食べたりはしないけど……。
電話して聞いてみると、「あら、ばれちゃった? じゃあ三人で食べよっか……、お父さんには内緒でね」と言って、分けてくれた。
お母さんが買い物から帰ってきたら、家族三人で美味しくいただいちゃおう。
……もしかしてだけど、短冊に書いた、妹のお願いごとが早速、叶ったのかもしれない。
「七夕……というか、棚ぼた?」
…了
初出:monogatary.com「七夕に願う」
答え合わせ不問 渡貫とゐち @josho
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