壊れゆく世界に、はじまりの唄を。
羽鳥(眞城白歌)
碧天の龍都、宙の聖域、天球儀の間。
遠い昔、まだ世界が始まったばかりの頃。
数において、知略において優位だった天使たちに追いやられ、私たちは片隅の島で長い時を過ごすこととなった。
敗れた理由は明白だ。個々の力は神竜に劣る天使たちだが、彼らは団結力が強い。一方私たち神竜族は、各自が規格外の力を持ってはいたものの、連携するという考えがなかった。当然、太刀打ちできるはずもない。
とはいえ私が人の世界に興味を持ったのは、その敗戦がきっかけだった。
人の大きさと姿を覚え、人の間に入り込み、人の生み出すものを知り。いつしかそれに魅了され、同時に愛おしくもなり。
私たちを追い立てた天使たちは今や神々として人の世に君臨し、世界情勢を操っていたが、彼らは自分たちの遊戯に夢中で、私の存在を気に留めることもなかったのだろう。
やがて私は、国と呼ばれる居場所を手に入れた。
世界の覇権など、もはや興味はなかった。
しかし、世界を手にした神々の横暴は、まったく予期せぬ仕方で私の願いを奪い去ってゆく。
あの日、私たちが住むこの世界は、何の前触れもなく神々に
私は、世界を無に
神々が
失われた命を取り戻すことは、神竜族である私にも不可能だ。その代わり、私は生きのびた命を今度こそ守り抜くと決意した。世界の
神が救わぬのであれば、私が。
天への怒りと憎悪を噛み殺し、半ば意地のように方法を
私の元を訪ねてきた少年は、約束を
当人の説明によれば、それは『星の魔法』と呼ばれるものだという。
かつて世界を形造り、人の運命を導き、祈りに
彼は竜の神を名乗る者からその力を託され、かつての居場所に別れを告げ、その者が開いた扉を通ってここへとやってきたのだという。その理由が、神々によって破壊されたこの世界を修復するためだと聞かされたとき、私の胸にわきあがったこの感情を、なんと表現すればいいだろうか。
世界の未来は
私にできるのは、私の力が及ぶこの場所だけでも守り抜き、ここに住む者たちが穏やかに生きて死ぬのを見届けることだけだと。いつかは追いつく
神々が見切り、見捨てたこの世界に、奇跡など望めるだろうか。
だが、神竜族みなが私と同じように世界の存続を望むわけではない。本当の
それはつまり、今の世界に残った命を新世界への
私には、到底それを受け入れることはできない。ゆえにこの先、衝突を避けられないだろうとも予感している。
未来を望む者、終焉を望む者。様々な想いを
私は銀の竜がもたらした約束を信じ、星の名を持つ少年の願いを信じて、共に戦おう。
いつかはこの世界にかつてと同じく、深い森や美しい湖、田園風景、川と草原がよみがえることを夢みて。生きとし生けるものが美しく輝ける世界を、必ずや取り戻せると信じて。
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壊れゆく世界に、はじまりの唄を。 羽鳥(眞城白歌) @Hatori
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