短歌集「四季の歌」

有馬美樹

四季の歌

櫻咲さくらさき かんもどりに 雪降ゆきふるも うはいまぞと 華々はなばな


朱色しゅういろの ロマンスカーが くぐり行く あとに残るは 櫻舞さくらまかぜ


寒に耐え いのちを燃やす 桜花さくらばな あとに残すは 若翠わかみどりの葉


仕着しきせの 背広せびろ制服せいふく 若人わこうどが ちまたにあふれる はなつき


連休れんきゅう中日なかびに 単車たんしゃ上州路じょうしゅうじ 驟雨しゅううのあとに わた蒼穹そら


***


降りすぎる 雨をカナダへおすそわけ できたらいいなと 思う梅雨つゆどき


七夕たなばたが 梅雨つゆどきなのは なにゆえか こよみちがいと ちて


あまがわ ふりさければ はるかなる 無数むすう恒星ほしは 珠玉しゅぎょくなるかな


織姫おりひめと 白鳥はくちょうと 彦星ひこぼしと きみ見上みあげた とおおも


はるけきな ビッグサイトの 喧騒けんそうが 四年よねんぶりかと 心踊こころおどらす


***


すすき梅雨づゆ 晴れ間の庭に アキアカネ 夏の終わりを 告げる使者かな


ひぐらしは 遠くへゆきて すずむしが リリリとなくくは あきおとず


角館かくのだて 武家屋敷ぶけやしきにて あおゆ 紅葉もみじうつくし さくらおとらじ


すすき野を 吹き抜けてゆく 秋の風 ともに過ぎ去る 夏の想い出


秋晴あきばれの 小春日和こはるびよりの 木漏こもれに ぬくぬくとる わたしの愛猫あいびょう


***


厳寒げんかんが しみこむような 東北の 人のぬくもり 心しみこむ


文明の 明かりが消えた 仙台の 満天の星 美し怖し


雪がふる 弥生十一日の サイレンに あの日わかれた とも面影おもかげ


雪解ゆきどけに その芽を出すは ふきのとう 旬を迎える 春遠はるとおからじ


厳寒げんかんを ともに越えたる 友たちよ また越えたいと 白河しらかわせき

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

短歌集「四季の歌」 有馬美樹 @maria_sayaka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ