無駄話を早送り
時間を加速させる。
そんな能力が宿った時、使いどころはどこなのか。
時間を早く進ませるということは、早く老いてしまうということでもある。できるだけしたくはないと思うかもしれないが、それでも使うべきところはあるのだ。
待ち遠しい約束の日を早く迎えるため……、には使わない。
その日が早くきてほしいと思うのは分かるが、だからと言ってその間の時間を、普段の倍の速度で進ませるのはもったいないだろう……その間の時間で、できることはごまんとある。
待ち遠しいけど、なにかをしていればすぐに時間は経ってしまうのだから。
ならば刑務所に入った時、刑期を早く終わらせる? そうなると、加速させる時間の幅が広過ぎる。年単位で加速させたら、あっという間に老けてしまうだろう……。
半分の経験値で、倍、歳を取るのは避けたいな……だから使うべきところはここではない。
使うべきところは、加速させる時間が『狭い幅』で、加速している最中、なにもできない時間に限られる……、退屈な時間でも眠れるなら休息に使えるが、そうではなく、退屈な時間だけど眠ることもできずに、じっとがまんしていなければいけない無駄な時間……――さて、それはいつのことか。
学生なら、きっとここに使うだろう――。
壇上に上がった先生が、言った……退屈で苦痛な時間の始まりだ。
「次は、校長先生のお話です」
――加速させた。
時間を、早送りするように……、倍速だった……それでも。
校長先生の話は、長かった。
…了
ドッペルゲンガー再確認 渡貫とゐち @josho
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