第47話 うーん。村の男衆のことを言えないのかもしれない……。



 その夜、僕は苗場くんからの『遠話』を受けていた。これ、すごいスキルなんだけど、苗場くんからしか、かけられないというのが難しいところ。スキルも成長する可能性があるだろうから、今後に期待したい。


 ……ここ何日かは、リコとのむにゃむにゃがあるからね。その途中とかはちょっと、うん。まあ、どうしようもないんだけど。僕も苗場くんも、お互いの状況は知っておきたいし。


 ちなみに、僕はその部分に身体強化を意識することでなんとかして耐久時間の延長を、と望んだんだけど……。


 その部分に身体強化で得られた効果は、再生というか、復活というか……。


 一度果ててもすぐ復活できるんですよ……それはそれで耐久時間の延長と言えなくもないんだけど。なんか違う。思ってたんと違う。


 まあ、今は、あんなに、どうやったら2回目ができるんだろう、と悩んでいたのが嘘のように、毎晩、リコとむにゃむにゃしています。ぐふふ。

 しかも、身体強化のお陰で僕にとっては毎晩、複数回の……。あれ? リコにとってはどう数えるんだろうか……?


『……ということで、こっちは海沿いの拠点を建築中、という感じです。どうぞ』

「いいなぁ、魚とか、美味しそうだよね。どうぞ」


『それが……海も魔獣が出るから、漁師さんたちは命がけなんだ……どうぞ』

「それで、宮本くんが活躍してるって話になるのか……どうぞ」


『うん。砂浜まであがってきた海の魔獣は、動きが極端に鈍るから、しっかりと油断せずに戦えば、倒せるんだ。でも、安全な倒し方だと、食べられる部位を破壊してしまうってのがあって……だからといってリスクはとれないし、難しいところだね。どうぞ』


 ……陸にあがって動きが鈍る、海の魔獣。どんな相手なんでしょうかねー。シャチとか? あ、いや、普通にクジラなのかな? タコとイカの可能性もあるかも。


「塩づくりはやらないの? どうぞ」


『うーん。どうだろう……そこに手を出すと、誰かの利権を奪ったり、潰したりって感じで、すごくモメそうなんだ。今は戦闘力もあるけど、だからって勝手な真似をすると後々、大変なことになるかもしれないから。やるつもりはあるんだ。でも、あくまでも地元に……ここの侯爵領に卸すことになるかな。王都へ運ぶ時の利益と比べたらかなり落ちるね……。ああ、そういえば実は王城の情報が入って、春になったら南のエルグラン侯爵領……宰相の領地に行ってみようと考えてるところなんだ。あそこは渡くんの方に近いから……一度、会いに行くのもいいかも。どうぞ』


「宰相の領地……そういえばその名前、聞き覚えがあるかも。そうか、逃げたつもりで、僕たち、宰相の領地を抜けてたのか……。あ、てことは、宮本くんが仕出かしたことでご機嫌ナナメの宰相をなだめる感じかな? どうぞ」


『それがうまくいけばいいけどね……どうぞ』


「こっちは、実は塩湖があるから、塩づくりはやってるんだけど……」

『塩湖があるんだ? あ、ごめん。どうぞ』


 ……さすがの苗場くんもびっくりしたみたいです。


「その道づくりとか、塩の村の防壁づくりとか、いろいろと大変なんだ。あとは、もうしばらくしたら、田植えが始まって……」


『田植えって……え? 渡くん、そっちで米を見つけたの? あ、何度もごめん、どうぞ』


 あ、しまった。僕のかばんの中身のことはまだリコしか知らなかったんだ。うっかりしてた。


「あははー、まあ、そんな感じだね。どうぞ」


『……収穫は、秋、の予定かな? どうぞ』

「まあ、そうなるよね。うまくいくといいんだけど……どうぞ」


『……うん。野間さんと高橋さんが、そっちに合流したいって希望があるし、次の秋には合流を考えてもいいかな? どうぞ』


 ……苗場くんも、ごはん、食べたいんですね。分かります。


「もちろん、一度、どこかで……というか、たぶん、国境のあの町か……まあ、こうやって連絡を取りながら、一度合流しよう。その時、ちゃんと収穫できてたら、お米は持っていくから。どうぞ」


『ありがとう、渡くん。あ、米発見の情報はみんなに伝えてもいいかな? どうぞ』


 それ、全員が移住希望するんじゃないかな? 大丈夫、苗場くん?


「いいけど、そっちは大丈夫? どうぞ」

『申し訳ないけど、うまくいったら種もみを分けてほしいんだ。どうぞ』


「あ、うん。それは問題ないと思う。どうぞ」

『こんなに嬉しい知らせはないかもね。みんな、きっと喜ぶよ。じゃあ、また。オーバー』


 苗場くんからの『遠話』が切れた感覚がした。うん。本当に、すごいスキルだ。


 あの国で、商売をしながら、自分たちの拠点を増やそうとしてる苗場くんがすごすぎる。きっと、僕にはマネできないと思います。僕がやってるのはズルの方だから。


「……ね、テッシン。苗場くんとの話、終わった?」

「あ、うん。次の秋に、一度、合流しようって」


「え、ほんとに?」

「野間さんとか、高橋さんがリコに会いたいみたい」


「……あー、そうかも」

「どうしたの?」


「ううん。なんでもない。それより……ね、続き、しよ?」

「あ、うん……」


 こうして、僕はリコに溺れていくんですよね……。


 まあ、こんなんじゃ、村の男衆のこと、僕には批判できませんよね。いわゆる同じ穴のムジナって感じで。





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突然の クラス転移に 物申す 神様お願い ちょっと戻して ~準備のいい僕と、カンのいいあの子の、ちょいラブ異世界生活~ 相生蒼尉 @1411430

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