第46話 僕の前に道はなくて、僕の後ろに道ができるってアレ、ガチでした。そして……ありがとう、シャン!(2)



 それで、子オオカミの世話も女の子ふたりの仕事に入ってるのは、子オオカミがこのふたりにとっても懐いているから。


 基本的に、子オオカミは村人に友好的だし、かわいいので愛されるようになってきています。ただ、特定の人たちには、特別に懐いてるんですよね。不思議な現象が発生しています。


 ……サイゼラさんやリムレさんはこれに驚いてましたね。いつか噛みついてくるだろうって思ってたみたいで。子オオカミが懐くと分かってから、はっきりそう言われたし。


 子オオカミが特別に懐いているのは、僕、リコ、魔法少女ふたり、魔法おばさん。それから、母乳をくれた奴隷お母さん……魔法おばさんも妊娠中ですけどね……。そして、もふもふアルパカ的ヤギさんたちのメスたち。


 つまり、本当にちっちゃい頃に栄養分を分けてくれた人と動物に、めちゃくちゃ懐いてます。どうやらそういう習性らしい。


 なんていうか、アルパカみたいなヤギのもふもふにまとわりつく子犬って場面は見ていてすんごく癒されます。

 ただし、もふもふヤギさんの方はややビビリ気味なんですけど、そこがまたいいんですよ……。


 結果として、人間に対して全体的に友好的な子犬になってるという不思議。嬉しい誤算ではあったけど。もはやオオカミではないのでは、という感じになってる。犬ですよ、犬。


 ま、魔法少女ふたりが防衛戦力、というのは理解できるので。この子たちはもはや名誉ある「クマ殺し」なのだから。


 そういう感じで、現状だと村の防衛にも特に問題はない。だから僕とリコは村を離れて、道づくり……というか、道にするためのスペースづくり、ですね。


 ただし、もうひとり、連れています。


 今、村で一番ちっさい子。シャンですね。村ではお仕事がなく、大人たちは忙しくて……リコが預かって、僕とふたりで面倒をみています。


 シャンは、残念ながら水魔法の適性はなかったようです。


 ……ただし、土魔法の適性はあったみたいですね。第三の魔法少女は土魔法使いでした。


 ま、それはともかくとして……。


 僕がまるでおすもうさんのように大木とがっぷりよっつに組んで、えいやっと引っこ抜いて投げるワケですよ。大木を。ぽーい、ぽーい、と。


「わー、てっきんたま、しゅごー」

「ぷ……」


 ……シャンは、まだ小さくて、滑舌? がイマイチなので、いろいろあります。


 リコが思わず吹き出して、僕から目をそらすくらいに。


「てっきんたまー、あっちのきー、あっちのきもー」

「ぷぷ……」


 シャンのおねだりはかわいいので、期待に応えたいけど、そっちの木は道のルートとは別なので。


 ……あと、リコ。あまりにも笑いすぎだから!


 シャンが「テッシンさま」と言えずに、「てっきんたま」と言う、それ。まあ、リコが笑うのはキ〇タマって部分ですよね……。幼女がキン〇マを連呼する状態は微笑ましいのか、どうか……。うーむ……。


 僕の威厳なんて、もともとないとはいえ、シャンがそう言うたびに、リコが笑うので……ますます僕の威厳がなくなっていく気がする……。


 とにかく、どんどん、木を抜いては投げ、抜いては投げ、と。


 道幅はだいたい、10メートルくらいでしょうか? 両サイドに抜いた大木がころがってるという感じ。

 いずれ、サイゼラさんの指導で男衆が叩いて固めるんだろうと思います。

 とにかく、荷車で塩湖まで行きたいらしい。塩の価値は重いってのは知らないワケじゃなかったけど、そこまで重要視されるとは……。


 あ、シャンに土魔法での作業とかはさせてません。いずれはさせたいと思いますけどね。

 今は、夜にちょっと魔法を使わせて、そのまま寝ちゃう感じで、魔力量増加に挑戦中です。まだ小さい子なので。


 僕とリコと小さいシャンなら、どんなに遠くまで行ったとしても、僕の身体強化でふたりを抱えて走って帰れば戻れる。だから、そういう意味でもこの3人なんですよね。


「りこたまー」

「うぅ、シャンは特別かわいいねぇ~」


 ぱたぱたと走ってきたシャンをリコがぐいっと抱き上げます。


 ……そんなリコもかわいいです。そう言えばいいのに、僕にはそういうセリフがうまく言えないけど。


 リコがシャンを抱いたまま、僕に近づいて、そっと耳元でささやきます。


「……子ども、ほしくなっちゃったかも」


 どきん、と。

 やばいくらいに心臓が跳ねました。


 ……ええと、それは、その。これってそういう意味ですよね、うん。


 シャンがかわいくて、ということだと思います。別にシャンがキンタ〇を連呼したからではないと思いたいです。え? 違うよね?






 その日の夜。


 えっと、半年……か、それ以上? かなり久しぶりに、僕とリコは、2回目のアレを致しました。


 ……ありがとう、シャン。君のお陰です。


 ただ、やっぱり、リコの中はすんごく気持ちがよくて……はい。まあ、終わった時の僕のテンションはなんというか……そう。ロー、テンションになっていて。それをリコが優しくキスで慰めてくれました。


「テッシンはあたしとするのがすごく気持ちいいってことだよね? 嬉しいよ?」

「……ありがと、リコ」


 慰められて、リコからの愛情はすごく感じるけど、正直、情けないです。一人の男としては……。


 これ、身体強化でどうにかならないのかな……。





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