第46話 僕の前に道はなくて、僕の後ろに道ができるってアレ、ガチでした。そして……ありがとう、シャン!(1)



 もちろん、僕たちもずっと水田開発事業ばかりはやってられないワケでして。この村の未来はサイゼラさんのいろいろなイメージがあるので。そう、これからのこの村の形にはね……。


 ……あれ? やっぱり、サイゼラさんがもう村長的なのでは? 僕ではなくて?


 それはまあ、どうでもいいか。とりあえず……村の方は、まず第二防壁ですね。


 水田開発事業で、なんとか、6.5面の水田を確保しておいたので。それだけの水田のために、その4倍の水田用正方形スペースは掘ったというのが現実だったりするワケで。もちろん、そういう力仕事は全部、僕がやったけど。


 結果として、水が溜まらなかったところからも大量の土が出たので、村人……特に以前から住んでいる人たちはとにかく大喜び。この人たち、土が大好きなのだ。


 その土を運んでいっては、嬉々として第二防壁を造っています。本当に笑顔で造ってるから! 労働に喜びを見出してるというより、防壁ラブな感じで!


 実は、サイゼラさんの最終的イメージプランでは、第一防壁の中は水源と、僕とリコの屋敷、迎賓館、集会所になるそうです。

 いろいろな倉庫系とかも、予定しています。それについては蔵、と呼ぶべきかもしれませんね。


 ……割と広いスペースが、基本、僕とリコの専用スペースとして想定されていたので、びっくりしたのは内緒だったりする。そのスペースって今、全員が暮らしてるところだから。


 そして、第二防壁の中に、みなさんの家を建てていくという計画みたいです。それぞれの家族に庭付き一戸建て?

 いや、庭というより、畑付き一戸建てになるのかな? そういう感じです。かなり広いんだけど大丈夫なのか?


 こっちで一番大きいのは、サイゼラさんの作業場関係ということになってる。理由は、そこは製材所でもありますから、当然そうなるとして……。

 まあ、その製材所ってのは、弟子たちも含めての生活になるというのもあります。サイゼラさんの家族は弟子も込みなので。


 大きさで二番目なのが……実はもうほとんどできているんですけど、ナラさんの作業場、つまり鍛冶場になるんですよね。これは前から造ってたので、早い。

 ただし、これは小川に一番近いけど、第二防壁にも近いから、村の中では一番端っこということになるそうです。

 この点については火事の対策ですね。鍛冶場は火事が怖い。それはもう納得しかない理由だよね。


 その他の建物にも石造りの基礎とか、ちゃんとあるんですけど、基本的には木造住宅ということになります。ここには材料が豊富にあるから。だから、鍛冶場は要注意らしいです。燃えるとヤバいという……。


 それで、あとはひと家族にひとつ、畑付き一戸建てがある、と。あくまでそういう予定になってる。サイゼラさんによると奴隷家族のために用意する環境としてはありえないらしい。ありえないくらい優遇されてるって方の意味で。


 ……まあ、その他に娼館も用意することは決定しているらしいですけどね。

 とりあえず、第一防壁の中に建物を建てて、そこを一時的に娼館にするそうです。で、後に迎賓館になると。いいのか、それで? 元娼館の迎賓館って何? そもそもこの村って客が来るのかな?


 それで、妊娠中の奴隷お母さんたちは、食堂関係と、糸づくりとかの動きの少ない作業をしている。そして、残りの半数は第二防壁、もう半数は建築作業です。

 女性はそうすると昼間も、夜も働くことになるような……睡眠時間は結局、男女同じなのかもしれないけど……。


 土地の区割りはもう済んでいる状態だった。これを見ると縄張りって言葉の意味がよく分かる気がする。本当に建設予定地がロープで囲まれてるんですよね……。


 そして、僕とリコに割り振られた仕事は……なんと塩の村への道づくり、でしたよ。そこかぁ……。


 ……まあ、道をつくるというよりは、木を抜いてほしい、ということなんですけどね。うん、さすがはサイゼラさんです。間違いなく、適材適所ですよ。


 村から遠くへと離れる仕事は、まず、強さが大前提として必要になるから。だから、僕。そして、リコ。


 そして、木を引っこ抜ける人間重機が必要になるので、当然それは僕、ということになってしまう。


 ……前回の塩の村――まだ、村はできてないけど――からの帰りが大変だったので、荷車を動かせる道幅がほしいみたいなんですよ。


 基本、子どもたちも仕事は割り振られるようになってしまったので、僕とリコの託児所は一時的に閉鎖ということに。僕とリコが暇になったということでもある。


 ……というか、男の子ふたり――ニニギとパックですけど、この子たちって、単純な力仕事なら、重い物でも運べちゃうという。


 ……これ、絶対に身体強化が身に付いてるよな。


 残念ながら、このふたりは大人と比べると体格がまだまだ小さいので、大きな物はふたりで頑張ってるみたいです。力だけではどうしようもない部分もある。


 そして、女の子ふたり――ミミとイーマは、子犬……というか子オオカミ? の世話係で、第一防壁の上の見張り担当ですね。


 開拓村に危機が迫ったら、みんなに知らせて第一防壁に避難させつつ、水の槍や氷の槍で敵対的存在を撃退する役割というとっても重要な役割です。まあ、このふたりが適任ではあるけど。


「いや、テッシンさまとリコさまに道の整備を頼むと、あのチビっ子ふたりは、村から外せねぇだろ?」


 サイゼラさんがそう言うと、村人全員が強くうなずいてました。うなずくスピードと力強さが違う。


 ……つまり、防衛戦力なんですね。カワイイ女の子なのに、魔法少女の運命は過酷だなぁ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る