公開説教編
「もう! 一体何考えてるんですか! 筋肉バカにも程があります!」
そう言って怒っているのは、町田探偵の優秀な助手、
ここはとあるショッピングモールの特設会場。入り口には「脱出ゲームに挑戦!」と書かれた大きな看板が立てかけてあった。
マッチョマッチョマッチョ
話は数日前に遡る。
「町田さん! 今週末、これ行きましょう!」
町田探偵事務所で特にする仕事もなくぼーっとしていた町田探偵に、萌花ちゃんが一枚のチラシを見せてきた。
それには「期間限定脱出ゲーム! 10分以内にクリアできたら賞金10万円!」と書かれていた。
「何だい、それは?」
「見ての通りです! 町田さん、これに参加して10万円ゲットしましょう!」
「どうして俺が?」
「町田さん、探偵じゃないですか。この手の問題なんてチョチョイのちょいですもんね!」
「えぇ……」
あまり気乗りしない町田探偵に、萌花ちゃんが畳み掛ける。
「町田さん、最近まともに仕事してませんよね? 今月、かなりの赤字なんですよ。このままでは新しいプロテイン、買えませんからね」
「やる! やります! 10万円ゲットしてプロテイン買います!」
ガタッ! と椅子から立ちあがって、町田探偵は手を上げて返事をした。
マッチョマッチョマッチョ
そして話は現在に戻り、ショッピングモールの特設会場。
両腕を組んで説教をする萌花ちゃんに、正座をして小さくなっている町田探偵の構図が、なんだか縮尺比が間違った絵面のようで、どことなく面白い。
「弁償です。10万円ゲットどころか、逆に10万円の請求書をいただきました」
萌花ちゃんはいつになく低い声で言う。
内側からドアノブを破壊したことで、脱出ゲームは中止。急遽外から鍵が開けられ、町田探偵は部屋から出ることができたのだった。
「それに、会場のモニタに部屋の様子がすべて映し出されていたんですからね! 私の名前を大声で呼ぶし、プロテインだマッチョだのを連呼するし……恥ずかしいったらありゃしない!」
ここには他にもたくさんのお客さんが来ているというのに、萌花ちゃんの公開説教は終わらない。脱出ゲームを楽しもうとやってきた家族連れに「お母さん、あれ何?」「見ちゃいけません!」みたいな定番のセリフを言わせてしまうほどだった。
「まだ言いたいことがあります! 脱出ゲームだと知っておきながら、何が『ここはどこだ』、『夢かな』ですか! まさか昨日遅くまで筋トレしてて、夢うつつの状態だったとは言わせませんよ!」
もう、町田探偵は何も言えなかった。萌花ちゃんの前で正座をして、ただひたすらに謝るのだった。
<囚われの探偵 完>
作者注1:脱出ゲームの様子をモニタに写すって結構なネタバレな気がしますが、謎解きのヒントを与えないように配慮しつつも、楽しく脱出ゲームをしている様子を見せているってことにしておいてください( ̄▽ ̄;)
作者注2:10分以内脱出で賞金10万円……。一人2回やったり、複数人で挑戦して、一人目が二人目に攻略法を教えれば達成できそうだ……なんて野暮なことは想像してはいけません。作中には書かれていませんが、そういうことができないようにルールがあるんです。きっと。
筋肉探偵 まめいえ @mameie_clock
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