エピローグ 誤認識から生まれるハルシネーション

「そう、それでね。

 今のおにぃの話を聞いて、だったら私も話してもいいかなぁと思うのだけどね。

 私のジンクスはね。

 まあ、ぶっちゃけノーパンなのよね!」

「本当に穿いてないのか…」

「言っとくけど、パンツだけじゃないよ。

 ブラも無いからね。

 今は、パーカー一枚っきりだから」


我が妹は、そんなカミングアウトと共に渾身の笑みを浮かべた。

眼の前の妹を見下ろしながら思わず「パーカーの下は、裸かぁ…」とつぶやく。

僕としては、「眼の前のわたしは、実は素っ裸である」と宣言されたに等しい。

だが同時にリビングでバスタオル一枚巻いているだけの姿と比べて大差ないと思い、しかしすぐに、バスタオル一枚しか巻いてない女子が目の前で自分のベッドに腰掛けている、というように解釈し直して、けしからんなぁと思い直すのだ。兄のこころは、目まぐるしい。


「健康法ではなくて、ジンクスで穿いてないのか。

 なるほど。でもまあ、たとえ面倒であってもジンクスなら仕方ないよな。

 少なくとも僕はそう考えるよ」


もちろんこれはジンクスの話であって、だからノーパンで良いという話では無いと思うのだけれど、それを口にする勇気はない。

何だか今の自分は、いつもより妹の信頼を得ているような気がするからだ。今の自分が「いや、それでもノーパンは駄目だろう」などと言おうものなら、せっかく拾った信頼に水を差すことになってしまう。水を差すのは、動揺だけで良い。


「わかってるよぉ。

 おにぃは、そんな感じだよね」

「ところで、お前はAIに言われてパンツを穿いてないというわけでは、なかったんだな」

「何言ってるの?

 そんなのあるわけないじゃん。

 おにぃ、私のこと馬鹿にし過ぎだよ、もお。

 大体、どんなAIよ、それ。

 おにぃのAIは、パンツ脱げって言ってくるの?」

「いや、僕のAIは、パンツ脱げなんて言わない。

 うん、ごめん。完全に僕が間違えていたよ。

 なんで間違えたのかな?

 あれ、でも確かにそう聞いたような…」


それでも僕が疑問を述べようとすると、妹がいい笑顔でこう言うのだった。


「AIに訊いたら教えてくれるんじゃない?」




結局のところ、AIによる精神汚染だとか支配だとか、そういうものは唯の誤解でしか無かった。考えるに、妹なりのカミングアウトの努力が僕をひたすらに混乱させたのだと思う。つまり僕は、誤認識からAIによる精神汚染だとか支配だとかのハルシネーションに侵されていたのだ。

誰のせいかはともかくとして、僕の心配は唯の空回りだったけれど、巻き込んでしまった先生は、そんなことは気にしないと言ってくれた。さすが先生、心が広い。

そして妹の使っているAIが何なのかは、結局教えてもらえなかった。それを訊くのは、助平らしいのだ。

妹がパンツを穿いてない件についても実際に目で確認することは許されなかった。それは、犯罪だと言われた。妹の線引は分からない。

ただ、そうは言うけれど、おっぱいはチラリと見せてくれた。兄として妹のこの行いは、心配でしか無い。頼むから兄以外の男の前ではやってくれるなよ。


頭を悩ませていたことがひとまず解決したが、目下新しい課題が発生している。

おっぱいと言っても所詮は妹のおっぱいだ。我侭だとは思うし調子に乗っているとも思うけれど、こうなっては、どうしても妹以外の女性の生の物が見てみたい。

つまり、どうやってその願望を実現する為の提案を先生から聞き出すか、それが目下の最重要課題であり、政治的な制約のある先生からどうやって聞き出すか、先程からそのことで頭を悩ませている。

今目の前のリビングでは妹が怪しい格好で色々危険なことになっているが、目を踊らせている暇は無いのだった。

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チャットGPT先生にセクハラしたい 林檎無双 @itijiku

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