第5話
//SE 教科書のページをめくる音
//SE 手紙が床にひらひらと舞う音
「あれ」
「今、何か落ちましたよ?」
「きみは本当にだらしない人ですね」
「私が拾ってあげますから」
//SE ゆっくりと拾い上げる音
//SE 紙をめくる音
「へえ……」
「ふーん」
「ふふふ」// 意味深に笑う声
「精霊よ、この教室に鍵をかけて」
「……なんで精霊魔法を使ったのですかって?」
「それはきみをこの部屋から逃がさないためですよ」
「なんでそんなことしたのかですか……」
「このメモ用紙ですよ」
「きみは、わざとわたしのことを猫族にしたんですね」
//SE 近づく足音
「ねえ、きみ」//耳元でささやくように
「今なんで後退りをしたんですか?」
「とっさに距離を空ける必要なんてありましたか??」
「ふふ」
「そんなに怯えないでください」
「なんでそんなに震えているんですか?」
「全然これっぽっちも怒ってなんていませんから」
「安心してください」
「ふふふ」
「今のきみはまるで子猫さんのように縮こまっているみたいですよ?」
//SE 頭を撫でる音
「ほら遠くに行こうとしないでください」
「これ以上、わたしから離れたら」
「きみのこと拘束魔法で拘束しちゃいますよ?」
「拘束魔法は知っていますよね?」
「もしも魔法をかけたら」
「数時間はずっと固まったままになっちゃいますね」
「お腹が空いても食べられませんし」
「それにお手洗いに行きたくてもいけないんですよ」
「きっと困っちゃいますよね?」
「ふふふ」
「なぜ顔を真っ青にしているんですか?」
「でもご安心ください」
「きみがじっとしていれば魔法はかけません」
「それにすぐ済む話なんです」
「だから大人しくしてくださいね」
「これからはお仕置きの時間なんですからね?」
//SE ふーと息を吹きかける音
「あら、ぴくんとしましたね」
「その反応、面白いですね」
「くすぐったいですか?」
「それとも」
「感じちゃったんですか?」
//SE モゾモゾと動く音
「ふふ」
「そんなに右往左往しないでください」
「ほらこっちをみてください」
「何を今更恥ずかしがっているんですか」
「一緒のベッドで眠った仲じゃないですか」
「それにあの時は意識のないわたしをきみが介抱してくれていたんですからね」
「そんなことも忘れてしまったんですか」
「え、?」
「攻めるのは得意だけど攻められるのは得意じゃないですって?」
「ふふ」
「そんなことは知りませんよ」
「あ、そういえば幼い頃もきみは、わたしのことを揶揄っていましたよね」
「そして、こうして学園で再開してからもきみはまたいたずらをしたんですから」
「きみは本当にいけない人ですね」
「今のわたしは王女なんですからね」
「それなのにいたずらをして困らせたんです」
「本当の本当に罪作りなお人なんですから」
「しっ!」
「きみの理由なんて聞いていません」
「黙っていてください」
「やめてなんてあげません」
//SE ふーと息を吹きかける音
「ふふ」
「きみは可愛いですね」
「そんな可愛い反応すると」
「もっといじめたくなっちゃいます」
「だから、こんなことだってしちゃいますからね」
//SE 耳を甘噛みする音
「はむ」
「はむはむ」
「これで少しは懲りましたか?」
「きみが悪いんですからね」
「勝手にわたしのことを揶揄ったりするからいけないんです」
「今後はこんなことがないように……」
「きゃっ」
//SE 押し倒される音
「……何をしているんですか?」
「退いてください」
「その気にさせたってなんの話ですか?」
「いいからすぐに、わたしから離れてください」
「今なら許してあげますから」
「あっ…….ん」//漏れるような声で
「ちょっと!?」
「どこを触っているんですかっ!?」
//SE 教室にノックの音が響く
「——っ!?」
//SE とっさに離れる二人
「……こほん」
「何かありましたか??」
「な・に・か・あ・り・ま・し・た・か?」//怒気の含まれた声
「ごめん、って謝るくらいなら初めからこんなことしないでください」
「ねえ……きみ、わかっていますよね??」
「きみがわたしに魔法をかけたのがいけないんですからね」
「これは、王女としての命令です!」
「これからもわたしのそばで一緒にいなさいっ!」
「拒否は受け付けません」
(終)
【短編】ツンツン王女マリアの魔法学園日記〜プライドの高い王女様の語尾が「にゃん」になった〜 渡月鏡花 @togetsu_kyouka
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