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それからどうやって帰ったのか、よく覚えてはいない。とにかく俺たち四人、車に飛び乗って大急ぎで車を走らせた気がしているが、詳しいことは忘れてしまった。
気がついた時には俺は自分のアパートに帰っていて、汗びっしょりでうなされていた。
俺は他のメンバーと連絡も取らず、警察が連絡してくるんじゃないかと怯えながら、自室に引き籠もって過ごしていた。
変化があったのは、四日目の夜だ。
グループLINEの通知。
『お前ら静まりかえって、どうしたんだよ』
並木だった。
並木に呼び出されて(嫌々ながら)大学で落ち合った俺たちだったが、並木は外見上特に、変わった様子は見られない。話が噛み合わない部分もあったが、並木としてはだいたいいつも通りだ。
並木の記憶の中では、自分は酔っ払ってしまって海の家で寝ていたが、帰る時間には起こされて、俺たちと一緒に車で帰ってきたという。
おそらく、並木が正しいのだろう。
後で地図で確認しても、あの海水浴場に該当するような海岸はなかった。
だから、あのスイカ男の事件はきっと、俺たちのうち四人の見た集団幻覚なんだ。
俺は(そしておそらく、他の三人も)そう思うようにしていた。
だが、考えてしまう。
もし並木の中身が、あれ以来スイカ男に入れ替わられてしまっていたら?
俺たちが今見ている、日常に戻ってきて普通に生活している並木こそ、幻覚なのだとしたら?
(了)
恐怖! 海水浴場のスイカ男 平沢ヌル@低速中 @hirasawa_null
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