第42話 異変
ブルーサピロス島へと向かう為に今日も観光船が一隻、島へと近づいていた。
「まったくお客さんが羨ましいよ、俺たちは仕事だもんなぁ」
「まーた言ってる」
乗員の一人が愚痴を零す、各々が仕事の準備をしていたいつもの日常だった。
しかし――
「――うわっ!?」
まるで壁にぶつかったかのように船の戦闘がへし折れる。
「な、なんだッ!?」
衝撃は船内を大きく揺らし内部は混沌を極めた、船長は船が持たない事を悟り緊急用の船を浮かべ乗客を逃がしていく中、周囲を見ると――
「同じような状態の船がある?」
損害の差はあれど、大小問わず船が止まっているのが見えた。まるで島を壁が阻んでいるようだった。
■
5日目、帰りの支度をしていてふと外を見た。
「なんやかんや、今日でバカンスも終わりか」
窓辺で朝の陽射しを浴びながら思わずつぶやく。
「......全く休めた気がしない」
ドアが開く。
「結構買ったなッ!?」
ソフィアは同僚に渡すお土産を買いに行っていた、最初は一緒に行ったのだが時間がかかりそうだというので俺は最初に部屋に戻っていた。
「付き合いがありますから......」
両手は紙袋をぶら下げながら両手でさらに箱の菓子を両手で山のように買ってきていた。
いや俺も同じ理由で買ったけど流石に買いすぎじゃない?顔も見えてないんだけど。
「それ持って帰る気か?」
「......」
「......俺もお前ほどじゃないけど土産あるんだぞ?持てって言われても困るぞ?」
「......」
ソフィアがキラキラお目目でこちらを見てくる。
「嫌だ」
「まぁまぁそう言わずに......」
何も考えずに買うからそうなるんだよッ!
「ッ、ま、まぁその話はこの辺で......そんな事より......船の事故が起きたらしいですよ?」
「事故?」
まぁ、起きる時は起きるだろうけど。
「それがどうかしたのか?」
「それが普通じゃないようで――」
■
「......来る船も出る船も同じように事故に?」
事情を聞いた俺はとりあえず港の様子を見に行く事にした。
「まぁ来る船というのは遠目で確認されただけですが、昨日までは出来ていた往来が出来なくなっているみたいで......」
つまり俺たちはブルーサピロス島に閉じ込められている?
「......これはまだ秘密のようですが、バレるのは時間の問題でしょう」
「だろうな、襲撃事件と違ってこれは隠せない」
「えぇ、そういう噂がお店も話されていました、だから――」
港には既に人だかりが起きていた、一部が損壊した船が負傷者が降りて来たりしていて遠目でもかなり大ごとになっている事がわかった。
すると、手を叩く音が聞こえ――
「――はいはい、静かに」
状況が混沌していく中、白髪頭に眼鏡をかけたちょび髭、スーツを着た年配の男が手をパンパンと叩きながら注意を引いた。
「誰だお前はッ」
一人が声を荒げるも男は少し笑みを浮かべて答える。
「S級魔導士メセト=ランズデール」
S級という単語が出た途端に人々からは助けを求める声が出始める。
「大変な時だからこそ冷静になるべきだ、なにこの事態は協会や帝国もすぐに把握するだろう......現地にいる魔導士にも協力を仰いでどうにかしようと思っている――彼らの様にねぇ?」
こっちの方を見て来た。
「そこの彼女も私と同じS級魔導士だし隣の彼もA級魔導士、どうぞ冷静に......」
どうやら俺たちの事を知っているみたいだ。
同じS級だからソフィアの事は知っていてもおかしくはないが。
「......まさかこんな所で会うなんて」
「ソフィア?」
「......彼はベルバスター家の事を調べている人でして、多分その関連でアリオスト家の事も知っているはず」
「ストーカー的な?」
「......言い方によっては」
えぇ......なんか嫌だ。
「......まぁこの場を穏便に収める為に少し彼の話に乗ってあげましょうか」
「......だな」
俺とソフィアは渋々と手を振ってその場を乗り切るの事にした。
楽に生きたい転生者、楽に生きられず近接戦闘 村日星成 @muras
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