だらっと。
最初に出会ったのは、1年生の軽音サークルの新入生歓迎会だ。田舎から東京に来たものだからほとんどの女性がおしゃれに見えて綺麗に見えたのが、彼女は言ってしまえば周りの着飾った女性と比べると少し子供らしいというか、周りをキョロキョロしながら、頑張って背伸びをしているように見えた。自分も上京してきたものだからなのか同類を目撃してしまったからなのか今でもわからないが、突然話しかけてしまった。
一言目が出たと同時に「勢いって怖」とか、「周りも探り探りだし変ではないか」と視線を彼女に戻すと少し目を見開いて驚いていたが、名前を聞いた後には好きなバンドを聞いた。「軽音サークルなのだから好きなバンドの1つや2つはあるだろう」と安直な質問だったが、意外にもオルタナティブロックが好きらしく先月、ライブも見に行ったという。そのライブはちょうどこの大学の入試が終わって二日経って達成感と不安で一杯になっている時に発表されたライブだ。受験がひと段落した安堵感と不安と開放感で直ぐ応募してしまっていたが、彼女もそうだったと笑いながら言った。武道館の生ライブを見るのは初めてで、映像で見ていたよりも小さく二階から舞台の距離は遠く感じた。映像の中の人が魔法のようにCDで聞いていた曲を演奏している様を見て同じ人間なんだとか考えたり、3曲目のMCがいつも見ているライブ映像のようなでも新しくて泣きそうになったのを覚えている。
「MCもよかったよね」とスマホのミュージックを開きながら彼女はこの曲この曲と指をさして言う。
話の途中ほかの女の子が彼女を連れて行ってしまって話は途切れてそまいそのまま歓迎会が終わってしまった。
何個かのグループに分かれて2次会やらなんだかをするらしく適当に話を合わしながら周りを見渡すと彼女は見当たらなかったの。別グループでどっか行ってしまったんだろう。
活動が盛んなサークルでもなかったのでそれ以来、話す機会もなく1年が経ち2年生になりまた新歓やると聞いて行ってみたら彼女はいた。
1年が経って、化粧が上手くなったのか都会に染まってしまったのか華奢な体に綺麗な指で服も少しラフだけど綺麗な服装で最初は気づかなかった。彼女から話しかけて来て、最初は1年生かと思った。
「覚えてますか?」彼女のその声色で瑠花だと確信した。
彼女は慣れない東京生活に苦労してやっと慣れてきたという。僕のグラスが開いているのを見ると「同じものでいい?」と聞き「うん」そううなずくと注文をしてくれた。
「結構飲むんですか?」
「付き合いで少し、あでも1人の時は結構飲むかも」グラスを揺らしながらそう答えた。
酒が回ってきたからなのか大衆居酒屋なのに大声で歌ったり、話し声がうるさくなってきた来たその時、「2人で別のお店行きませんか?」と言われて異性にそんなことを聞かれたのは初めてなもので反射的に「はい」と返事をしてしまった。
2人でを店を出ると、途端に、
「こういうみんなでワイワイするのは苦手で」
「自分も何が楽しいのかはよくわかんないです」
「すいません、次行く店またっく考えてませんでした」
「家で飲み直しますか?」と聞いたら、少し考えてから、「そうしましょう」と返事をしてくれた。
家?と後から疑問に思い彼女かなぜ少し考えたのかを理解した。近くといっても電車で2駅ぐらいはある距離、自分は普段このぐらいの距離なら歩いている距離だが、一応歩けるか聞いてみる。
「近くって言っても20分ぐらいのとこなんだけど電車で行く?」と尋ねると彼女は周りを確認してから、「大丈夫です、歩いていきましょう」と言った。
「帰路の途中にスーパーがあるからそこで、一通り買おうか」
「そうだね、ついでにアイス買いたい」
「アイス?」
「そう、アイス」
笑いながらそう言った彼女は気分が良いのか軽快な足取りで自分の後ろをついてくる。駅の近くから住宅街を抜けて川沿いにつくと小走りになって「ここ映画で見たことある」と楽しそうに言った。
「ソラニン?」そう尋ねると、
「そう!」と嬉しそうに返してきた。
「あの漫画が好きでこの近くに家を借りたんだ」
「へぇ、私も好きあの作品」
下を向いたまま少し笑い、そう言った。
「いいよね、曲と映画もいいんだけど漫画もいいよ」
久しぶりに好きなものを共有できると思い、色々な言葉が頭を巡り、ついそれが漏れそうになるのを抑え答える。
「もってるよ」
「同年代の音楽好きであれ見てない人はモグリだよ」
「確かにそう」
そんな話をしているとスーパーについた。
「何飲みたい?」
「んー、ビールとハイボールかな。あとつまみも欲しい」
「OK、3.4本あれば十分?」
そう聞くとうんと頷いてから頭を上げてお菓子コーナーを探してそっちに行ってしまった。
ドリンクコーナーに行って水とお酒とお茶をかごに入れ、自分もお菓子コーナーに向かった。
瑠花がこっちを見て「嫌いなお菓子ある?」
「酸っぱいのだけあんまり、でも梅系なら好き」
「なにそれ」
ふふっと笑いながらチョコレートとポテトチップスをかごにいれた。
自分も適当にアテを入れ「アイス見に行こう」そう言って冷凍コーナーに向かう。
吟味している瑠花を見ていたら何にするかもう決まったようで、自分もアイスを眺め少し高いいいチョコレートのアイスに決め「かごに入れちゃって」といい財布を出すそぶりをしていたの早々に会計を済ました。
「何円ぐらいだった?」
「いいよそんな値段いってないし」
少し不服そうに財布をしまうのを見て、これが俗に言う奢る・奢らない論争かと縁がないのでよくSNSで話題になっていても蚊帳の外だった自分がやっとその会話ができるレベルになったと、誇らしげになった。
「じゃあ、次は私が払うね」と瑠花が言うと、どう返したらよいものかわからなかったので悩んでいると先にスーパーを出て行ってしまった。
「アイス食べよ」と近づいてきた瑠花はまだ暑い季節でもないのに頬に1粒の汗がついていた。顔をよく見てみると綺麗な顔立ちをしていて、目の下に小さなほくろがふたつとそばかすがあるかわいいと形容したほうが似合う顔で汗と香水の匂いで色っぽく見え、どこか胸がいっぱいになると察したかのように「あんまジロジロ見られると恥ずかしい」と言いながら袋からアイスを抜いて早々と開けて食べだした。アイスを一口食べ、こちらを見て「そろそろ着く感じ?」
「あそこ、あそこ」築40年ぐらいと言っていたか、少しぼろい屋根を指さすが突然恥ずかしくなり足早に階段に向かった。
月華は退屈を照らす 勿忘 @kanekophilos
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