第11話:裏切りと再生の兄妹・愛と復讐の葛藤
私はトライガの喉を切り裂きました。
これで放っておいても勝手に死にます。
後は兄上に殺されるだけです。
幼い頃から私に優しくしてくださった兄上。
兄上と叔父上だけが私の救いでした。
大逆の罪を犯した私を殺す事で、兄上が栄光を手に入れられるのなら、私の生にも意味があった事になります。
最後に、私がどれほど強くなったか、剣を交えて確かめていただきます。
どれほど努力しても、兄上に勝てるはずがないのですから。
「後始末はやっておく、レティシアは叔父上の領地に行け。
キャリンはそこで療養している。
叔父上が責任を持って預かっているから、随分健康を取り戻しているぞ」
「……兄上……」
「さっさと行きなさい、王太子は妻を寝取られた伯爵に殺されたのよ。
父王陛下も同じよ、妻を寝取られた侯爵に殺されたのよ。
これは逃げようとした侯爵と伯爵が、互いに殺し合って死に絶えたの。
レティシアはその前に婚約破棄されて、傷心で叔父の元に行ったのよ」
ヴェロニカ王女殿下はそう言ってくれますが、そんな明々白々の嘘が通用するとは思えません。
誰か責任を取る者が必要です。
皆の恨みを受ける生贄が必要なはずです。
その生贄には、私が最適なはずです。
「ですがヴェロニカ王女殿下、誰か憎しみの対象が必要なのではありませんか?
卑しい血を引く私が適任なのではありませんか?」
「そんな必要はありませんよ、レティシア。
国王と王太子の色情狂は社交界では有名でした。
屈辱を味合わされ、名誉を傷つけられた貴族は、貴女が知っているよりはるかに多いのです。
そんな彼らが本当に恨みたいのは、国王と王太子なのです。
表向きの話など、誰も本心から信じていませんよ。
貴族達は皆、侯爵と伯爵が妻に国王と王太子との不貞をすすめ、権力と利権を手に入れようとしていたのを知っています。
ここでレティシアを処分するよりも、助けた方が安心するのです。
正しい行いをしていれば助けてもらえると伝えた方が、貴族達が安心するのです。
レティシアが生きてくれている方が、私もヴェロニカも助かるのですよ」
ヴェロニカ王女殿下に聞いたのに、正妃殿下が答えてくれました。
ヴェロニカ王女殿下も笑顔でうなずいておられます。
私は本当に生きていいのでしょうか?
「レティシア、私は其方の兄だ。
兄として、レティシアを心から愛している。
レティシアに幸せになって欲しいと、心から思っている。
確かに母親は違うが、父を同じくする兄妹である事は間違いないのだ。
それと、他人は其方の母キャリンの血筋の事を貶めるが、私には意味のない事だ。
キャリンの事も、妹の母として遇したいと思っている。
レティシアは幸せになっていいのだよ」
「ありがとうございます、兄上!」
以上の文章に相応しい題名を考えてください。
復讐の舞台・闇に蠢く陰謀と血の絆、婚約者の王太子から長年理不尽に扱われついに婚約破棄された公爵令嬢は、剣の天才だった。 克全 @dokatu
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