大文字伝子が行く147

女性アスリート連続殺人事件（後編）

　＝＝＝＝＝　この物語はあくまでもフィクションです　＝＝＝＝＝＝＝＝＝

　==============　主な登場人物　================

　大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

　大文字学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

　一ノ瀬（橘）なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。

　久保田（渡辺）あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。

　愛宕（白藤）みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。

　増田はるか三等海尉・・・海自からのEITO出向。

　田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

　新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。

　結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

　日向さやか（ひなたさやか）一佐・・空自からのEITO出向。

　馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

　稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。投げ縄と鞭を得意とする。

　小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

　斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

　夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

　愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署生活安全２課勤務。

　大文字綾子・・・伝子の母。介護士。伝子に時々「クソババア」言われる。学を「婿殿」と呼ぶ。　

　藤井康子・・・伝子達の隣人。料理教室を開いている。

　青山たかし元警部補・・・丸髷署生活安全課だったが、退職して、EITOに再就職。

　筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。伝子と一時付き合っていた。警視庁副総監直属の警部。色んな部署に配置されていたが、今はEITO準隊員扱いである。

　久保田嘉三・・・管理官。EITO前司令官。警視庁テロ対策室室長。あつこの夫誠の叔父。

　物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友の妻であった同級生逢坂栞と結婚した。

　福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。今は建築事務所に就職し、演劇活動は休止している。

　福本祥子・・・福本の妻。福本の劇団の看板女優。

　山城順・・・伝子の中学の書道部後輩。愛宕と同窓生。海自の民間登用の事務官。

　桜井珠代議員・・・移民党参議院議員。杵築県議と同郷。

　杵築（きつき）睦子・・・ボルダー。連続殺人事件の被害者。

　杵築（きつき）燿子・・・競輪選手。連続殺人事件の被害者。

　杵築（きつき）徹子・・・フィギュアスケーター選手。連続殺人事件の被害者

。

　杵築（きつき）律子・・・プロボウラー。連続殺人事件の被害者候補。

　杵築（きつき）道子・・・アマチュアボクサー。連続殺人事件の被害者候補。

　杵築（きつき）浜子・・・登山家。連続殺人事件の被害者候補。

　杵築（きつき）桜子・・・移民党大分県議員。

　岡部蕗子・・・違憲異種党参議院議員。

　青山たかし元警部補・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。

　橋爪警部補・・・丸髷署生活安全課刑事。EITOとの連携部署の為、犯人逮捕連行に向かうことが多い。

　村越警視正・・・警視庁テロ対策室室長。副総監の直属の為、副総監の代行することもある。

　==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

　==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==

　午後2時。東京駅。八重洲口出口。

　妊婦服を着た女性が、東京駅のビルから出てくる。

　2人の男が近寄る。「杵築桜子県議ですね。総理から派遣されたSPです。これから、議員会館までお送りします。」

　県議は不思議な顔をしたが、頷いた。

　1時間後。東京駅付近から乗った県議の車は、議員会館には向かっていないようだった。県議は抗議したが、受け入れられなかった。

　午後3時。千代田区。議員会館。桜井珠代議員執務室。

　杵築県議は、2人のSPを従えて、桜井珠代参議院議員を訪れた。

　杵築県議が挨拶をするより早く、2人の男は窓にガムテープで目張りを始めた。

　桜井議員は、異変に気づいて叫んだ。「何をするの？」

　杵築県議と思しき人物と男達は何かを放り出し、防毒マスクをして出て行った。

　ドアの鍵を壊し、ドアの外にも目張りをして。

　15分後。素知らぬ顔をして、会館の出口から出てきた男女に、あつこは手錠をかけた。

　「ご苦労さん。取り調べは私がするわ。覚悟しなさい。」

　手錠をかけられた女は、桜井議員の執務室の外の窓が、ホバーバイクから出たフルーレで壊されるのを見た。

　ホバーバイクとは、『宙に浮くバイク』で、民間開発のバイクをEITOが採用、改造した、空を飛ぶ武器だった。フルーレはフェンシングが得意な青山のアイディアを生かした特別仕様のもので、ホバーバイクに搭載された。その青山が特攻したのである。

　同じ頃。桜井珠代議員執務室の外。

　桜井議員は、壊されたドアから脱出し、飯星の手当を受けていた。

　駆けつけた警備員に、飯星は「医務室に案内して下さい。」と言った。

　隣で稲森がEITO本部に連絡を入れていた。

　「了解しました。」と言う河野事務官の声が聞こえた。

　午後3時。高速新6号線。サービスエリア。

　妊婦服の女性と男が2人、入って来た。

　「こんなところでサボっていると、ボスに叱られるよ。」

エマージェンシーガールズがやって来て、日向が言った。

　男2人が日向達に向かったが、数分で取り押さえられた。

　「さあ、案内して貰おうか。」と、みちるは凄みのある声で2人に言った。後ろで、愛宕が笑っていた。

　午後4時。廃工場。

　「遅いじゃないか。」と、中央にいる男が那珂国語で言った。

男2人は横に倒れた。「おやつ食べなきゃいけない、と思いまして。」と、みちるは言った。

　エマージェンシーガールズが雪崩込み、そこにいた10人のマフィア（葉っぱ）は瞬く間に倒した。

　男達は武器を持っておらず、エマージェンシーガールズはバトルスティックで倒した。

　中央の男がいた後ろに、ディスプレイがあった。

　「あんたが、ボスか？」と、ディスプレイにみちるが尋ねると、画面に那珂国語のテロップが流れ、合成音声が流れた。

　「あんたが、ボスか？意味不明。命令をどうぞ。」

　午後4時半。

　みちるは考えた挙げ句、本部に連絡。急遽、草薙と、警視庁のサイバーセキュリティチームが駆けつけた。

　午後6時。参議院議員会館。岡部蕗子執務室。

　村越警視正が部下を伴ってやって来た。「岡部先生。伺うことが出来たので、同行願います。それと、捜索令状です。国賓館から派遣されたSPに挟まれ、岡部は、村越警視正に続いて、自室を出た。ドアから出る時、未練がましく振り返った。

　遡って、午後2時。東京駅。出口付近。

　妊婦は、男2人と車に乗った。車が発車すると、2台の車が追走した。

　山城の車の中。

　福本が運転している。

　「こちら、山城。県議に化けた祥子さんが車に乗りました。」と、山城がスマホに向かって言うと、「了解。こちらでもDDバッジの信号追跡用ガラケーの信号を捕捉している。愛宕と交代で追跡してくれ。バレそうになったら、深追いはするな。」と　伝子の声が返って来た。

　オスプレイの中。複数のタブレットを前に伝子は指示を出している。

　「愛宕、聞こえたか？」「了解しました。」

　午後3時半。議員会館。桜井議員執務室の外。

　あつこが伝子に報告をしている。

　「おねえさま。やっぱり、桜井議員は襲われました。これから連行して、一生後悔させてやります。」「了解。後悔は一生でなくていい。」

　オスプレイの中。

　あつこに続いて、みちるから連絡が入った。

　「サービスエリアに入ったので、連中を捕まえましたよ、おねえさま。予定通り、祥子さんは開放して、連中に案内させます。」「了解。」

続いて、なぎさから連絡が入った。高遠の機転で本命が別人と判明はしたが、本人の希望もあって、警護することにしたのだ。本命は桜井議員と杵築県議だった。

　「おねえさま。プロボウラーの杵築律子さんの試合は今始まりました。念の為、地元警察にも応援を要請して警備しています。」「了解。続けてくれ。」

また、続いて、あかりから連絡が入った。「おねえちゃま。ボクサーの杵築道子さん、殺し屋が来ても大丈夫な感じです。練習見るの初めてだけど。」

　「了解。続けてくれ。」

　更に、増田から連絡が入った。「登山家の杵築浜子さんは､今テレビ1の討論会に出席しています。何かあれば、我々は飛び出せますが、やはり本命の方に向かうでしょうね、『枝』は。」「そうかも知れないな。引き続き警戒を怠るな。」

　最高裁判所裏。

　ホバーバイクが近寄って来た。筒井のホバーバイクだ。「見付けたよ。」

　筒井は長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛のような笛で、通常人間の耳では聞こえない、EITOの通信機器だ。　

　忽ち、エマージェンシーガールズが現れた。

　賊は、セーラー服を着ているが、明らかにマッチョな男だ。

　男は、機関銃を撃って来た。筒井は、交わしながら、旋回し、メダルガトリング砲で、機関銃を落した。

　男は叫んだ。「よってたかって、袋にするか。EITOは、卑怯者の集まりか。」

　金森は、男を平手打ちした。「卑怯者の集まり？おまいう。お前は、どれだけアスリートを痛めつけたんだ。」

　大町は言った。「これは、ボルダリング選手の杵築睦子の分だ！」男に平手打ちをした。

　「これは、競輪選手の杵築燿子さんの分だ！」と、馬越は言って、男を平手打ちした。

　「これは、スケーターの杵築徹子さんの分だ！」と、田坂は言って、男を平手打ちした。

　馬場が、黙って一本背負いをかけた。

　「あれ？もう終った？」「お巡りさん・・・。」男が何か言いかけたが、「はい、逮捕！！連行しまーす！」と、駆けつけた橋爪警部補は明るく言った。

　午後4時半。オスプレイの中。

　筒井からの連絡を受けた伝子は、「今、一味のアジトらしき場所も抑えたよ。廃工場の事務所だった。後は、『依頼人』だな。」と応えた。

　午後7時。伝子のマンション。

　高遠は、冷やし中華を食べながら、TVのニュースで、岡部蕗子議員の逮捕の報道を見ていた。

　高遠のスマホが鳴動した。ひかるからだった。

　「僕の予想、当たったみたいだね、高遠さん。」「ああ。連続殺人事件そのものが陽動だったなんて、全くの想定外だったからね。流石だよ。ひかる君に言われて、議員同士の争いが根っこにあると知って驚いたよ。杵築県議は､他の部屋で桜井議員と対面したよ。」

　「他のアスリートも無事だった？」「ああ。念の為警護したが、空振り・・・いや、無事に終ったよ。夏休み、いつだっけ？」

　高遠は、冷やし中華のことを忘れて、ひかるとの会話に夢中になった。

　―完―