第7話 「門の名前」「庁堂」についてなど

 このエッセイは鷲生の中華ファンタジー「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」の「あとがき」です。


 拙作のURLはコチラです→https://kakuyomu.jp/works/16817330658675837815


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今回は拙作に登場する門についてお話したいと思います。


拙作「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」は、だいたい大雑把に「唐」をモデルにしております。

唐の皇城・宮城の地図も眺めながら参考にしておりますが……。

(たとえばWikipedia「太極宮」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E6%A5%B5%E5%AE%AE

「長安」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E5%AE%89 )

門の名前は変えてあります。


まず史実では、皇城に入る門は朱雀門です。

日本の平安京もそうですね。

ちなみに鷲生は京都住まいですが、朱雀門があったあたりにその跡を示す看板がありますし、高校や大学の名称に「朱雀」が使われています(「立命館大学朱雀キャンパス」とかですね)。


鷲生は京都住まいの地の利を活かして平安時代をモチーフ地にしたファンタジーを書いたことがあり(「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕ヘ或ハ近衛大将ノ大詐術」https://kakuyomu.jp/works/16816927860647624393 )、この小説内では朱雀門を登場させています。

ですが、今回の「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」ではそうはいきません。


今回の拙作中華ファンタジーでは、董の周辺に四神を授けられた四つの王国が存在するという設定であり、南にある蘇王国が四神の朱雀を与えられている、ということになっています。


ですから。

そうして朝貢国に与えた「朱雀」を華都の重要な門の名称に用いるというのは、避けたいところ。

そこで、「世界の中心の華都」「その華都の中心部」という意味で「華央門」という名称を用いることにしました。


で。皇帝が政務をとる太極宮に入る門は史実では「承天門」です。

別にここは史実通りでもいいのですが、「朱雀門」も、それから後述するように太極宮と後宮との出入り口もオリジナルの名称にしているので、「承天門」だけ史実と一緒にするのもおさまりが悪い気がして変えることにしました。


つーても。考えるのが面倒だったので、平安京の紫宸殿の前にある「承明門」の名称をそのまま流用していますw


太極宮と掖庭宮の門は、史実では「通名門」だそうです。じ、地味すぎる……。

そこで中華後宮ファンタジーに相応しく(?)派手な字面の「龍凰門」としましたw


龍は男性の皇帝を表すから、凰は鳳凰のメスを表すからという理由で採用しました。

この鳳凰の雄雌については、鷲生はどこかで聞きかじったのをそのまま使っているのですが。

Wikipedia「鳳凰」にも、「鳳」がオスで「凰」がメスという説があると記載されているものの、脚注では「ただし現在では本来一単語であった鳳凰を二文字に分解して一方を何々、他方を何々と意味付けするのは中国にありふれた語源俗解であり、後世の後付けにすぎないと考えられている」と解説されています。

「鳳凰」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B3%B3%E5%87%B0


い、いいんですよ。とにかく中華後宮ファンタジーっぽければ(←開き直りw)


とはいえ、これからもっと適切な漢字を思いついたら差し替えることがあるかもしれませんのであしからず……。


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細かいことですが、白蘭が見つけた甘い香りのする白い花の植物は「梔子」を想定しております。


後宮っぽさを表現するのに、生えている植物を描写するという方法もあるかと思います。白河紺子さんの『後宮の烏』がそうですよね。同じ白河紺子さんの『下鴨アンティーク』でも思いましたが、本当に植物にお詳しくていらっしゃるようで、それが物語を美しく彩っていると感じます。


私も見習って植物描写頑張らねば(詳しくないし、苦手だけど!)と意気込んでいたのですが。

そもそも白蘭が董の植物に詳しくないんでした……w。

西域育ちの白蘭には生えている植物の違いやそれぞれの名称は知る由もないので、白蘭視点では「様々な色調の緑がある」という解像度の低い描写となっておりますw


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皇帝の卓瑛は、冬籟の住む墨泰宮の中の「庁堂」という部屋に通されています。

メインでよく使われている部屋……という意味合いで使っております。


中国の伝統建築については『中国の建築装飾』という本があり、その254頁の用語解説に、「庁堂 ①主要な建物のこと ②建物における居間 ③殿堂の対義語」とあります。


拙作では②の意味に近いかと思います。


この本については下記でご紹介しております。

「オールカラーのビビットな写真だけじゃない!文章による情報も豊富な『中国の建築装飾』」https://kakuyomu.jp/works/16817139556995512679/episodes/16817330657229916121


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卓瑛はとても豪華な螺鈿細工が施された椅子に座っているとイメージしています。


頭にあるのは京都の中国関係のミュージアム藤井済成会有鄰館の3階に展示されている、螺鈿細工の家具です。

購入したカタログによれば明代のものと清代のものとがあるようです。

いやーキラキラしててゴージャスですよ!


この「藤井済成会有鄰館」、中国4000年の歴史が一ヵ所で見られるとても素晴らしいミュージアムだと思うのですが、私設であるせいか、運営が手弁当で独特の雰囲気があります。

そこも含めておススメのミュージアムです。

京都の平安神宮や知恩院の近くなのに、観光客がまずいない穴場スポットだと思いますよ!


鷲生が訪問した時の感想などをエッセイの記事にしております。

「中国四千年の歴史が1カ所で見られる美術館!「藤井斉成会有鄰館」←どうしてこんなに無名なの?」

https://kakuyomu.jp/works/16817330647534553080/episodes/16817330656558559098


鷲生は拙作「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」を書くに当たって、2回訪問しましたし、せっせとメモを取っていたら有鄰館の人に勧められたので図録も購入しましたよw


このように取材なんかも頑張っているこの物語。

どうか最後までご愛読くださいますよう。


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