第8話 「ソグド姓」について

 このエッセイは鷲生の中華ファンタジー「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」の「あとがき」です。


 拙作のURLはコチラです→https://kakuyomu.jp/works/16817330658675837815


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 中国を含む東アジアの「名前」「呼称」について調べ始めるときりがないですが……。


 拙作「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」では、小野不由美さんの『十二国記』世界とだいたい同じように考えております。


 講談社文庫『風の万里黎明の空 上』210頁では「姓名は戸籍上の名前。字は呼び名ね」と登場人物が、現代日本からやってきた主人公の陽子に説明する場面があります。


(現在『十二国記』シリーズは新潮社から出版されていますが、一昔前は講談社から出てたんです。それで私の手持ちは講談社文庫が多いです。古参のファンと言えるでしょうか、えっへん←ちょっと自慢w)


 別の箇所では、登場人物の祥瓊(字)が、恭国の女王・珠晶に姓名で呼ばれる場面が出てきます。

 姓名で呼ぶこのシーン。珠晶は侮蔑する気マンマンですし、祥瓊はその屈辱に打ち震えます。


 少し引用しますと……(「孫昭」というのが祥瓊の姓名です)


「『……それで? そちらが孫昭ですね?』姓名を呼ばれ、祥瓊は唇を噛む。これだけで供王が充分祥瓊に含みがあることが分かろうというものだ。」


 柿沼陽平さんの『古代中国の24時間』でも15頁~23頁まで説明があります。


 拙作「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」においても、作中で卓瑛が「他国の姫を姓名で呼ぶのは無礼に過ぎたようだね」と述べるように、「ないわー」な非礼という設定です。


 今回言及された琥王国の王女様の姓名は「康婉」といいますが、「康」の字を選んだのは理由があります。


 度々書いておりますが、琥はサマルカンドを想定しています。そしてサマルカンド出身のソグド人には「康」という姓が与えられていたのだそうです。


 ソグド人についてはこの本!とも言うべき森安孝夫さんの『シルクロードと唐帝国』では以下のように書かれています(108頁)。


「中国に来住したソグド人は、官文書による行政上の必要から漢字名を持たされたらしく、その際には出身と使命を示す漢語が姓として採用された。それらは康国(サマルカンド)、安国(ブハラ)、米国(マーイムルグ)、史国(キッシュ)、何国(クシャーニヤ)、曹国(カブーダン)、石国(タシケント)、畢国(バイカンド)に由来する康、安、米、史、何、曹、石、畢という姓である。さらに都市名を特定できないが、羅・穆・翟もソグド人の姓に加えてよいことが最近ではほぼ認められている。」

(「ただし、康・安・米以外のソグド姓は、漢人本来のせいでもあることに注意されたい」)。


 中国史ではよく知られていることだそうですが、「唐」帝国を揺るがした安史の乱を起こした安禄山と史思明もソグド人の血をひいているそうです(世界史ではよく知られているそうですが、鷲生は日本史畑だったのでこの程度の知識でも新鮮なんですw)。


 さて。

 今回は名前だけですが西域琥王国の王女様が登場しました。北妃は冬籟がそう呼ばれています。これから東妃、南妃がこの順番で登場していきます。


 どうか最後までご愛読くださいますよう。


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