第14話 オールカラーのビビットな写真だけじゃない!文章による情報も豊富な『中国の建築装飾』

せっせと中華ファンタジーに取り組んでいる鷲生です。

先々週には「こんなのおもしろくないんじゃないだろうか?」とモチベがだだ下がりし、今も「これ、中華モノのと名乗っていいんだろうか」と逡巡する毎日です。


ま! ファンタジーですし! 「いつか立派な小説が書けるようになってから」なんて言ってると、いつまでも発表できないですし!

クライマックスシーンまで来たので、最後まで〆て投稿したいと思います。


そうそう、この間、京都市の岡崎公園にある中国関係の凄いミュージアムを見つけました!

皆さま京都に観光に来られる際には金閣寺や清水寺と並んで是非こちらも!

この鷲生のこの拙文をご覧の方におススメです! 

探訪記はコチラ→「中国四千年の歴史が1カ所で見られる美術館!『藤井斉成会有鄰館』←どうしてこんなに無名なの?」

https://kakuyomu.jp/works/16817330647534553080/episodes/16817330656558559098


それから4月18日発売の『中国の服飾史入門』も入手してもちろん読んでます。


ただ、図書館から借りた本には返却期限があるので、そちらを先に読んでおります

今回、鷲生がご紹介するのも市立図書館から借りてきたものです。週末に返却期限が来るので急いでご紹介しなければ!


今回は『中国の建築装飾』です。


書誌情報は以下の通り。

『中国の建築装飾』2021 楼慶西著 李暉、鈴木智大訳 科学出版社東京 http://www.sptokyo.co.jp/list/?p=1000


ぱっと見た感じカラー写真が豊富なので図鑑に近い印象を受けました。

そして、現存している建物で装飾が立派なものを掲載しようとしているためか、紫禁城が割と多めのように思います。


私、前々から何回か図書館から借りてきていたんですが……。そのまま読まずじまいで返却してしまっておりました。といいますのも、その色彩が、私が個人的に興味があるものと異なっていたからです。


いや、ほんと鮮やかです。

瓦は釉薬がかかってキンキラキンですし、柱なんかも鮮やかな丹塗りです。梁や貫の彩色だって極彩色。

ページを捲ってても目がチカチカしそうですw


私は日本の平安時代初期(その前の奈良時代)にもともと興味があり、そこから古代中国へ興味が広がりました。ですので、中国史の唐のあたりを中華ファンタジーの舞台に考えております。

そして、日本文化の延長で考えると、この本の色彩は派手過ぎて世界観が合わない気がしていたのです……。


しかしながら、春先に家族で京都府宇治の平等院にお出かけして、色彩についての思い込みを改めることとなりました。

平等院のミュージアムで創建当初の壁画が復元されているのですが、いやいや日本の平安時代も結構派手ですわw

現在残っているのは塗装が剥げて古びているだけで、本当は極彩色だったんですね。


どうも私は日本古代や、日本古代に影響を与えた中国の色彩感覚について軌道修正を図る必要がありそうです。

そこで、改めてこの本を最初から読むことにしました。


読んでみて思うのは、文章の情報が多いということです。

豪華なカラー写真が数多く掲載されているので、そっちがメインで、文章は写真に付属するような形での説明だけかと思っていましたら。

それぞれの項目に沿って、系統だった文章による説明が詳しく記述されています。


また、前々回の『民居』の時にも書きましたが、写真というのは情報量が多すぎて、文章に添えられても、文章の説明をその写真からどう読み取っていいのか分かりづらいことがあります。

この『中国の建築装飾』では写真が多いのですが、いくつか写真の内容を線描したものも添えられています。この線描のおかげで解説が分かりやすくなっています。


ここで項目をご紹介しておきます。「(1)」などの小項目は鷲生が手入力しております。

*****


概論

1.中国古建築の特徴 (1)木造の建築(2)建築群としての存在(3)建築の芸術性

2.中国古建築装飾の起源

3.中国古建築装飾の内容と表現手法(1)建築装飾の内容(2)建築装飾の表現方法(2-1)象徴となぞらえ(2-2)装飾のかたちの規格化と変異(2-3)文字の装飾と物語の表現


第1章 さまざまな門の美しさ

1.都城・宮殿の門(1)永定門(2)正陽門(3)天安門(4)午門(5)太和門(6)乾清門

2.住宅の門(1)木門頭(2)磚門頭

3.祠堂の門(1)木造門の装飾(2)磚造門の装飾


第2章 屋根の造形

1.軒の跳ね上げ

2.大棟の正吻

3.降り棟の小獣

4.屋根の組み合わせ(1)多数の建築の屋根の組み合わせ(2)1棟の建築に多数の屋根の組み合わせ(3)1棟の建築の屋根を分解した組み合わせ


第3章 彫刻と彩色画

1.梁・貫の装飾(1)梁・貫の全体的な造形(2)梁・貫の彫刻装飾

2.柁墩の装飾

3.撐栱と牛腿(1)撐栱(2)牛腿

4.彩色画の装飾(1)和璽彩色画(2)旋子彩色画(3)蘇州式彩色画


第4章 扉と窓の装飾

1.格子戸(1)宮殿の格子戸(2)廟堂建築の格子戸(3)住宅の格子戸

2.墻窓(1)山西大院の墻窓(2)南部の住宅の墻窓(3)寺廟の墻窓

3.庭園建築の扉・窓(1)建物の扉・窓(2)亭の扉・窓(3)院墻の扉・窓


第5章 基壇とその彫刻

1.基壇の形式と装飾(1)基壇の形式(2)基壇の装飾

2.基壇の高欄(1)高欄の形式(2)高欄の装飾

3.基壇の階段(1)基壇の階段(2)階段の高欄


*****


門の扉について。

日本でも大規模な寺院や京都御所などに木製の大きな扉があります。

これは日本と中国で共通するところが大きいかなと思いました。


大きな門扉には、装飾性の高い金具がついています。

そのそれぞれにどんな名前がついているのか分かりました!


例えば、板戸の上下の鉄板は「包葉」というんだそうです。そして「外部から大門を閉めるために扉に門環を設ける」のだそうで、その門環のデザインもいくつか紹介されています。


ファンタジー小説で、街娘が宮廷に入り込む時などに荘厳な扉の様子を書くのなら、『中国の建築装飾』のここらあたりの情報が使えるんじゃないでしょうか。


装飾に使われる動植物の説明もきちんとあります。

龍・虎・鳳・亀についてや、蓮や松竹梅などですね。

建築に限らず、これらが中国文化の中でどのような意味を持っているのか勉強になります。


石造りの高欄や磚製の彫刻は、あまり日本には見られないものですね。石の文化と木の文化の違いがあるのかもしれません。

これらの石や磚による装飾も舞台に登場させると、ぐっと中華な感じになりそうですね!


門についてはアノ「天安門」から農村の住宅まで幅広く紹介されてます。

鷲生が想像するのは、皇帝から庶民まで門構えに力を入れていたので作例が多いのかな?と。


屋根の所では「軒の跳ね上げ」が説明されています。

同じ瓦葺きでも、日本より中国の方が跳ね上がりが強いと鷲生も以前から思っていたので、興味深く読みました。


跳ね上げが存在すること自体は、ただの美的な趣味ではなく、構造上の必要によるものだそうです。


「建物の四隅の軒は、主体部からの距離が大きくなるため、元々二重の垂木であったものがより大きな二重の隅木へと改められた。隅木の成は垂木より高く、そのため垂木と隅木の先端が連なる軒先は、中央部分が水平で、両端が跳ね上がり曲線を描く」(107頁)


ほほー。それで日本の建築でもある程度、跳ね上がりがあるんですね。


とはいえ、特に南部では実用的な目的を離れて装飾として発展していきます。私たちが中華っぽいと感じる建物の隅っこがまるで天を衝くかのように反りあがっているのは中国文化の美意識によるもののようです。

(もっとも北方では寒さ対策で瓦の下に土を敷かねばならず、この土の層のため「軒の跳ね上げが妨げられている」のだそうです。


梁貫の彩色画は、いかにも中国らしい極彩色で華やかなものです


その最高級のものは「和璽彩色画」といい、皇室建築で用いられるのだそうです(168頁)。

その龍や鳳凰、花卉がどの建築でどのように使われているのか画面構成などの説明は、後宮モノを書く上で参考になるかもしれません。


扉と窓については、この本を借りてきている間、しょっちゅう見返してました。

どうしても鷲生の頭の中は西洋建築がベースになっているようで……。私が書いているファンタジー小説には、登場人物たちが、部屋の中と外の往来とで窓を挟んで語り合う場面があるんですよ。

ところが、壁をくりぬいてできる墻窓というのは、だいたい中庭に向けられていることが多いようです……。

まあ、私の書いているファンタジーでは、そのキャラの棲家には外に面した窓があるということにしておきますw(ファンタジーにはファンタジーの都合と言うものがありますので、どうか歴史警察様、コメントを控えて下さいますよう)。


同じ章に庭園についての言及もあります。庭を切り取って「見せる」ため、格子などのない窓枠だけの「空窓」というのが開けられるそうです。


また、中国庭園には院墻という「園内の空間を分ける壁」(204頁)があり、扉を設けない門があります。庭と庭の間の壁で、人が行き来できるように丸くくりぬいてある光景……とても中華っぽいですね!


装飾的な院墻の花窓の次には、地味な「基壇」についての説明があります。

基壇って地味ですが、わりと重要だと思うんですよ。


鷲生は京都から奈良の平城宮跡なんかに行ったりしますが。朱雀門とかを通ろうとしても、まずは基壇を登ります。

そして、結構な高さを上り下りして見て「古代の気合入った建築って基壇が立派だよなー」と感じていました。

小説内でも、キャラクターが門をくぐるなら当然基壇を上り下りするわけで、このあたりも知識があると表現の幅が広がりそうな気がします。


日本にある建物で基壇にまで装飾してるケースは思い当たりませんが、この『中国の建築装飾』ではあれこれありますね~。

特に紫禁城はとてもゴージャスです。


この本の説明によると「各地の建築で最もよくみられる基壇の形式は須弥壇である」(213頁)のだそうで。「清代の須弥壇は(中略)、上から下へ上枋、束腰・下枋、圭角があり、上枋、束腰と束腰・下枋のそれぞれの間を上梟と下梟で連結し、各部分が一定の比例を持つ」とあります(214頁)。それらに蔓草紋や仰蓮・覆蓮の花弁の彫刻が彫られていたり、角に獅子などが彫られていたりします。

これらがあると、中国風な建物という雰囲気がぐっと出ますね!



さて。

この『中国の建築装飾』。

気になるお値段は……やっぱりおいそれと手が届かない感じです(溜息)。


発売された時の価格は7800円+税。これもなかなかなお値段ですが、カラー写真が豊富で文字情報も使いでのある内容であり、本格的に中華ファンタジーを書くなら思い切って購入しても……という価格ではありました。


ところが。現在この本は定価で入手できず……。すると某ネット書店では2万円とかですね……。

2021年と、比較的新しいものですから今でも定価で販売されていると期待してたのですけれど。

それでも必要だから購入する方もいらっしゃるとは思いますが。

鷲生が購入するかはうーーーーーーん。


しかしながら、もちろん図書館にあります。

鷲生が住んでいる京都では、京都府立図書館と京都市図書館どちらもありました!

また、コロナが一段落したので鷲生は母校の図書館を卒業生カードで利用しております。もちろんこの『中国の建築装飾』もあります。

本を借りることはできませんが、広い閲覧室で読むことができるので久々の大学図書館をEnjoyしておりますw


*****


『中国の建築装飾』については以上ですが、鷲生が日本の古代の色彩建築について認識を改めた宇治平等院のWebサイトはコチラです→平等院 鳳凰堂堂内彩色(少しスクロールする必要があります)

https://www.byodoin.or.jp/learn/picture/


また、鷲生が平安時代の史跡巡りなどを頑張って書いた平安ファンタジー小説はコチラです→「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕ヘ或ハ近衛大将ノ大詐術」

https://kakuyomu.jp/works/16816927860647624393


*****

2023年7月14日追記

中華ファンタジー「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」の投稿を始めました!

是非お越し下さいませ!

「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」https://kakuyomu.jp/works/16817330658675837815






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