花屋の店先…

かてぃ

花屋の店先…

プロローグ

 私は、蒼霞美。花屋の店長です。

 二階建ての一階にフラワーショップ、二階に自宅を設けています。

 この物語は私が経営している『カスミソウ』で起こった数年間のお話です。

 

 

月曜日(春)

(朝の音とシャッターの音)

 太田『店長、おはようございまーす。』

 

 かすみ店長『太田くん、おはよう。さっき仕入れで帰って来たばかりだからトラックの中の商品下ろしてくれる?』


 太田『オッケース。少し休んだらどうです?月曜日は仕入れ多いですよね?しかも4時起きだし。』


 かすみ『ふぁーっ…………そうだね…………お言葉に甘えてちょっと横になろうかな?』


 太田『オープンの9時まであと1時間ありますから。』


 かすみ『じゃ、あとよろしく』


(階段を上がる音)


 かすみ【月、木、金は業界用語で表日と言って花が入荷します。特に月曜日は土日の仕入れが休みなので朝の起床は4時。というわけでアルバイト君にお店の支度を任せて一休みします。】



 ――🌸――


(階段を降りる音)

 

 かすみ『太田君ありがとう。ゆっくりできたよ。』


 太田『うーっす。店長今回のメインはやっぱりチューリップっすか?』


 かすみ『そうだね。そろそろ旬だからね。』


 太田『じゃあ、チューリップ表に出しますね』


 かすみ『よろしく。さてオープンしますか』


(ピンポーンお客さんが入ってくる音)


 かすみ『いらっしゃいませ。』


 客男『あ、すみません。プレゼントで探してるんですけど…………』


 かすみ『ご予算と差し上げる方はどんな方ですか?』


 客男『予算は決めてないんですが……実はこれからプロポーズするので彼女に送ろうと思っていまして。』


 かすみ『そうなんですね。じゃあこちらの花はいかがですか?』


 客男『この花の名前は?』


 かすみ『フリージアと言います。花言葉は親愛の情、感謝がありますね。あ、あとラナンキュラスって名前の花なんですが花言葉はあなたの魅力に満ちている、ですね。春は、お花の種類はたくさんありますね。』


 客男『そんな花言葉なんですか?彼女わかるかな?』


 かすみ『くすくす…………いろんな花言葉ありますけどどんなお花でも彼女さんは嬉しいと思いますよ』


 客男『そうでしょうか?』


 太田『お客さん大丈夫っすよ。うちの店長のフラワーアレンジメントで告白したカップルは必ずシヤワセになるっていうジンクスあるんですよ。』


 かすみ『太田くん、何言ってるの?笑。お客さん冗談ですよ。そんなジンクスはないですけど、幸せになって欲しいので精一杯アレンジメントさせて頂きますね。』


 客男『実はネットの掲示板見て伺ったんですよ。』


 かすみ『嬉しいです。ありがとうございます。たまたま写真のお好きなお客さんがいてSNSに上げてくださったのを見ていただいたのかな?』


 客男『はい。それです。すごいですよね。あのSNSすごいバズってますよ?』


 かすみ『そうなんですか?私その辺疎くて…………』


 太田『仕上がり楽しみにしていてください。』


 客男『じゃあ30分後に、また取りにきます』


 (カランコロンお客が出る音)


 かすみ『ねぇ、太田くん大分大きな話になってない?』


 太田『SNSすごいっすよね。俺拡散しました。』


 かすみ『太田くん。やめてよ…………』

 

 太田『いや、でも実際本当に、結婚された方いましたよね?しかも1組とかではなく去年だけで7組も。店長のアレンジメントはハッピーマジックっすよ。』


 かすみ『何言ってるのよ笑。ほらお客さん取りにきちゃうわよ。うちのトレードマークでもあるあれ持ってきて。』


 太田『はい。かすみ草ですね。』


 かすみ『よしこれで出来上がり。どうか……お客さんの願いが叶いますように…………。』


 ――🌸――

 

(外の音・歩く音)

 

 男『お待たせ』

 

 女『遅いよ』

 

 男『ごめん。ちょっと寄るところがあってさ。じゃあ飯に行くか?』

 

 女『今日はラーメン行こうよ。ちょっとコッテリのやつね。』

 

 男『お前好きだなー』


 女『そんな気分なんだよね。』

 

 ――🌸――

 

(外の音・歩く音)

 

 女『はーおなかいっぱーい。』


 男『替え玉きつかったな笑』


 女『そうだね…………ふぅ』


 男『なぁ……あそこ座ろうぜ。』

 

(歩く音から座る音)

 

 女『何?どうしたの?』


 男『あのさ、俺たち付き合って3年になるじゃん。』


 女『そうだね。』


 男『でさ、そろそろと思ってまずはこれ…………』


(花束を袋から出す音)


 女『え?どうしたのこのフラワーアレンジメント。きれーぃ』


 男『実はさ、キミのお姉さんのお店に行ったんだよ、で、プロポーズしたいからアレンジしてくださいってお願いしたんだよ。』


 女『プロポーズ?誰が?誰に?』


 男『俺が、お前に!』


 女『ん?』


 男『俺と結婚してください。』


 女『え?えぇ?ちょっと待って?』


 男『え?』


 女『そんな話一度もした事なかったよね?』


 男『いやぁーそうだけどさ、そろそろかなって。だから幸せになるってジンクスがあるお姉さんのお店でフラワーアレンジメントして貰ったんだよ。』


 女『…………』


 男『いいか?これはフリージアで感謝。これはストックで幸福な愛。こっちはマーガレットで真実の愛。』

 

 女『だからこの間ネットで検索してたのか。でもさ、ストックって早すぎた恋って花言葉もあるの知ってた?』


 男『え?そうなのか?』


 女『貴方の気持ちはわかったよ。でもね……私にはプロポーズを受ける資格なんてないんだよ』


 男『そんなこと…………言わないでくれよ。なんでだよ?ご両親のこと?』


 女『うんそれもあるけど…………ごめんね。今はとにかく受けられない。もう少し時間くれるかな?』


 男『わかった。じゃあこれは預けておく。』


 女『指輪?ちょっと準備よすぎじゃない?いいの?どのくらいかかるかもわからないのに…………』


 男『俺は待つ!男に二言はない!お姉さんのジンクスを信じるぜ!!』


 女『ありがとう…………グスッ』

 

 かすみ【この二人に幸せが届くのはもう少し後の事のようです。】



水曜日(夏)

 かすみ【数年前私は一人でお店を切り盛りしていました。そこに突然山田くんがきたのです。】

 

(カランコロン人が入ってくる音)

 

 かすみ『いらっしゃいませ。』

 

 少年a『…………』

 

 かすみ『どんな花をお探しですか?フラワーアレンジも致しますので、イメージとかありましたら教えてくださいね。』

 

 少年a『………………あの、この花なんて名前なんですか?』

 

 かすみ『グラジオラスと言います。』



 少年a『グラジオラス……じゃあこの花は?』

 

 かすみ『サンダーソニアと言います。花言葉ってご存知ですか?』


 少年a『何すか?花言葉って。』

 

 かすみ『その花や実に対しての印象を表した言葉ですね。サンダーソニアは清楚とか可憐。ちなみにグラジオラスは信ずる心、同感ですよ。』

 

 少年a『じゃあこれは…………』

 

 かすみ『スターチスとヒメヒマワリですね。あの…………』

 

 少年a『あ、すんません。かーちゃんから仏壇に備える花買ってこい言われてたの忘れてました。あの適当にお願いします。』

 

 かすみ『そうだったんですね。わかりました。じゃあ2束、対になるようにお作りすれば良いですね?』

 

 少年a『あ、そうなんすね。全然わからなくて。じゃあそれでお願いします。』

 

 かすみ『じゃあスターチスを入れましょうか。この花は途絶えぬ記憶って花言葉がありますね。あと千日紅にしましょう。グラジオラス、これは信ずる心って花言葉があるんですよ。』

 

 (花を包む音)

 

 かすみ『はい。こちらになります。お待たせしました。ありがとうございました。』


 ――🌻――

 

 かすみ【それが太田くんとの初めての出会いでした。それから数日後のことです。】

 

 (ドアが開いて人が入ってくる音)

 

 かすみ『いらっしゃいませ。あっ。こんにちは。』

 

 太田『こんにちはっす。あのここでバイトって募集してましたよね?』

 

 かすみ『え?ああ…………以前の。』

 

 太田『今は募集してないんっすか?貼り紙に書いてあったら…………』

 

 かすみ『うーん。そうなんだけど。花屋って見た目よりハードだし朝早いからバイトで来てくれても、すぐ辞めちゃって。あ、別に貴方のことをどうこう言っている訳ではないんだけど…………』

 

 太田『俺、朝は強いっす。朝練とかあったんで。』

 

 かすみ『朝練?貴方まだ学生さんよね?』

 

 太田『はい。高校3年っす。』

 

 かすみ『じゃあ受験とか一番大変な時なんじゃないの?』

 

 太田『いや。俺朝練ていったっすけど野球部で大学の推薦貰えててでもう行くとこ決まってるっす。』

 

 かすみ『そうなの?』

 

 太田『この間店長さんに色々花の名前教えて貰って部活も引退して暇だったんでネットで検索したらいっぱい花の種類あるの知って。俺、薔薇とかすみそうしか知らなくて。親父が母親に結婚記念で毎回薔薇とかすみ草あげてんの知ってて。』

 

 かすみ『ん?もしかしてお母さんのお名前は明日香ちゃん?』

 

 太田『はい。太田明日香です。』

 

 かすみ『そうだったのね。同級生なのよ。私とお母さんと。』

 

 太田『はい。それで母親に「部活も引退して暇ならカスミソウ手伝わせてもらいなさい」っていわれて』


 かすみ『明日香ちゃんったら。わかったわ。じゃあ大学に行くまでのあと半年手伝ってもらいましょう。』

 

 太田『よっしゃ…………笑』

 

 かすみ『これからよろしくね。太田くん。』

 

 太田『うっす。ところで店長。朝って、何時からなんですか?』


 かすみ『あー最初からそれを聞いちゃうか笑』

 

 太田『え?そんなに早いんすか?』

 

 かすみ『そりゃそうよ。市場に行って仕入れてくるんだから。でもバイト君にはそこまで早くしてもらわなくてもいいと思っているのよ』

 


 太田『いいえ。ちゃんと早起きしてこないと、かあちゃんに叱られます…………………………』

 

 (徐々にフェイドアウト)


 かすみ【こうしてバイトスタッフとして太田君を迎えることのなり彼自身が大学に行ってからも朝講義がない時は手伝いをしてくれて本当に頼りになるスタッフになってくれました。】


 ――🌻――


 太田『おはようございます。』


 かすみ『太田くんおはよう。今日は講義あるの?』


 太田『今日はないっす。店長!大学の夏休みは長いんっすよ。』


 かすみ『あぁそうだったわね。でもレポートとバイトであっという間に終わった気がするなぁ。』


 太田『大学野球部のサークルも今季は試合負けちゃって…………だからバイトに来ます。』


 かすみ『そうだったのね。私としてはありがたいんだけど。勉学に勤しむことも忘れないでね?じゃないと私が明日香に怒られちゃう。』


 太田『母さんと親父には店長のところでしっかり労働の大切さを身につけてこいと言われてますから。』


 かすみ『そうだ!今日明日香の誕生日よね?ご主人から連絡来てたんだった。』


 太田『今日持って帰ってくるように言われてたっす。』


 かすみ『薔薇の花言葉覚えてる?』


 太田『確か美と愛でしたよね』


 かすみ『では問題です。お母さんの歳は幾つで薔薇何本の意味が当てはまるでしょうか?』


 太田『今年40だから真実に愛……すげーっすね。』


 かすみ『そうね。それとね。うちでは扱いがないのだけれど白いドライフラワーの薔薇の花言葉は生涯を誓うって意味もあるのよ。』


 太田『店長何でも知ってますね。』


 かすみ『幼少の頃、父親とフラワーガーデンに連れて行って貰った事があってね。そこから花が好きになったかな。で色々園芸大学にも行ったわけよ。』


 太田『そうなんっすね。』

 

 かすみ『その時に主人とも出逢ったのよ。フラワーデザイナーの資格も取りたかったからそのあとも勉強してね。』


 太田『店長、今度仕入れにも同行させてください。』


 かすみ『え?いいけど。本当に早いはよ?朝。』


 太田『大丈夫です。頑張って起きます。』


 かすみ『そんなに頑張る理由何かあるの?』


 太田『いやぁ、俺も最初は小遣い欲しくてバイトしてましたけど、店長と花に触れているうちになんとなく花を扱う楽しさっていうか…なんて言うんですかね…』


 かすみ『うん。なんとなくその気持ちわかるよ』


 太田『もっと、花に触れたくなりました。』


 かすみ『そうか。。。なんだか嬉しいな。そう言ってくれると私も頑張りたくなるね。』


 太田『コチラこそよろしくお願いします。』

 

金曜日(秋)

(カランカラン人の入る音)


 太田『いらっしゃいませ』

 

 客女『あの…………店長さんいらっしゃいますか?』

 

 太田『ちょっと待っていてください。店長――――――お客さんでーす』

 

 かすみ『はーい。いらっしゃいませ。ってえ?どうしたの?光桔!!』

 

 みつき『やほーお姉ちゃん久しぶり。』

 

 太田『店長知り合いっすか?』

 

 かすみ『こんな朝早くからどうしたの?家で何かあったの?あ、妹のみつき。こちらはバイトの太田くん。覚えてるかな?学生の時の友達の明日香の息子さん』

 

 太田『うーっす。』

 

 みつき『そうなのか。初めまして。ちょっと寄るところがあってそのついでにね。元気そうだねお姉ちゃん。』


 かすみ『まあね。少しお茶でもする?太田くんお店頼める?』

 

 太田『いいっすよ。今日はお向かいのオープン記念のアレンジありますからね。それまでに帰ってきてください。』

 

 かすみ『わかったわ。じゃあ行こうか。』


 (ピンポーン喫茶店の入る音)

 

 店員『かすみさんおはようございます。今の時間はモーニングだけですけどいいですか?』


 かすみ『おはよう。いいよ。私はハーブティとたまごサンドで。みつき、貴女は?』

 

 みつき『私ホットドックと水引コーヒーで』

 

 店員『かしこまりました。お待ちください。』

 

 かすみ『ところで、本当にどうしたの?』

 

 みつき『実はね、私結婚することになって。本当だったら彼も一緒に連れてきたかったんだけど朝早いの苦手な人でさ笑』


 かすみ『あはは。そうだったんだ。結婚おめでとう。』

 

 店員『おまたせしました。こちらがたまごサンドとカモミールのハーブティのセット。こちらがホットドッグと水引コーヒーです。ごゆっくりどうぞ。』

 

 かすみ『ありがとうございます。さ、とりあえず食べようか。』

 

 みつき『うん。いただきます。実はさ、お姉ちゃんちゃん一度彼に会ってるんだよね。』

 

 かすみ『そうなの?いつだろう?私の知り合いかな?』

 

 みつき『んー知り合いというか「カスミソウ」に花を買いに来たことがあるんだよね。』

 

 かすみ『そうなの?それは偶然ね。』

 

 みつき『偶然でもないみたいで、私、お姉ちゃんがお店やってるって話したことがあって、お店検索したらSNSでめちゃくちゃバズってる花屋があるって、彼氏興奮しててさ。』


 かすみ『それって………………』

 

 みつき『わかった?春だったかな?プロポーズするのに花束見繕って貰った人。あれが私の彼氏。』

 

 かすみ『えー?!そうだったの?その相手が貴女だったってわけ?!』

 

 みつき『その通りあはは…』

 

 かすみ『ってことは成功したってことか笑笑』

 

 みつき『お恥ずかしい話、お姉ちゃんの力を借りたようなものよ。ありがとう。』

 

 かすみ『そっかそっか。にしても報告が遅かったんじゃないの?』

 

 みつき『実はプロポーズ一度断ったんだよ。けどこの数ヶ月一緒にいてこの人とならって思うようになったんだ。』

 

 かすみ『うちのことがあったから?』

 

 みつき『うん。それはあるかな。両親のことでうちら色々と大変だったし、結婚って考えたら怖かったんだよね』

 

 かすみ『そうね。両親の離婚は大きかったよね。私の旦那も他界した後だったし、うちは幸せとは少し離れた環境だったから……ごめんね。』

 

 みつき『お姉ちゃんが謝ることじゃないよ。母さんと最近会ってる?』

 

 かすみ『私はほとんど電話のみだね。みつきは?』

 

 みつき『私も結婚の報告を電話でした程度だよ。お父さんの墓参りも一人で行っちゃうしね。』

 

 かすみ『結婚式は?挙げるの?』

 

 みつき『うんその事なんだけど、やっと本題に入れるわ。2人ともそんなにお金無いし式をあげるつもりは無いんだけどブライダルパーティみたいなのはしたくてね。そこに飾るフラワーアレンジメントをお願いしたいんだ。』

 

 かすみ『もちろん喜んで作らせてもらうよ。じゃあそろそろお店戻ろうか。』

 

 (カランカラン入口が開く音)

 

 太田『おかえりなさい』

 

 かすみ『おまたせ。太田くんお土産買ってきたよ。バックヤードで食べておいで』

 

 太田『ありがとうございます。いただきます。』

 

 かすみ『じゃあ早速アレンジのイメージ考えようか。』

 

 みつき『どんなのがいいかな?』

 

 かすみ『コスモスとカスミソウの🤔ブーケは可愛いよね。コスモスの花言葉は乙女の真心。ピンクだと純潔だし、白いコスモスは優美だからブライダルにはピッタリだよ。』

 

 みつき『うん。うん。』

 

 かすみ『後、チョコレートブラウンのコスモスは移り変わらぬ気持ちって花言葉もあるから彼氏くんの胸につける花にもいいかも』

 

みつき『うん。うん。いいね。お姉ちゃんなんかイキイキしてるね』

 

 かすみ『そう?仕事モードに入ってるってことかしら?』

 

 みつき『ねぇ。テーブルフラワーアレンジメントは大きなものをお願いしたいんだよね。』

 

 かすみ『それならフリージアとかカトレアの花は豪華さがあって良いかもね。フリージアの花言葉はあどけなさ、対象的にカトレアは優美な貴婦人。』

 

 みつき『うん。素敵かも。今度彼氏も連れてくるから一緒に見てもらうね。』

 

 かすみ『そうだね。ゆっくり話もしたいしね。』


 かすみ【こうして妹の結婚が決まり家族が増えるのでした。】









 

土、日曜日(冬)

 かすみ【花屋カスミソウを始めて十数年。土日は基本どちらかを定休日にすることが多いのですが今日は妹の結婚パーティーがあり土日で定休日を頂きました。】

 

(朝の音)

 

 かすみ『太田くん、パーティの準備手伝ってくれてありがとう』

 

 太田『もちろんっす。店長の1番の力作を見ないなんて有り得ないっす。』

 

 かすみ『確かに毎日頭悩ませたよ。』

 

 太田『やっぱり妹さんの式だからですか?』

 

 かすみ『それもあるけれど……上手く言えないんだけどとにかく幸せになって欲しいという気持ちが強いかな?』

 

 太田『じゃあ俺、車持ってきます。』

 

 かすみ『うん。よろしくね』

 

 (店の電話の音)

 

 かすみ『もしもし』

 

 客女2『もしもし、注文をお願いしたいんですが?』


 かすみ『申し訳ありません。今日と明日はお休みを頂いておりまして、オープンは月曜日の9時からなんです。』

 

 客女2『あ、そうなんですか?困ったなぁどうしよう。月曜日に送りたいのに……』

 

 かすみ『あの、では明日お店にいらしてください。定休日ですがお伺いしますよ。』

 

 客女2『え?いいんですか?ありがとうございます。SNS見て絶対そちらでアレンジメントしてもらいたくて。』

 

 かすみ『分かりました。ではご連絡先を教えてください。それと詳しい希望や内容はFAXがメールで大丈夫ですよ。』

 

 女客2『名前は神崎 蘭と申します。連絡先は…………』

 

 かすみ『では。』

 

 (電話を切る音)

 

 太田『店長車持ってきました〜ってあれ?注文ですか?』

 

 かすみ『うーん。なんかどうしても月曜日に必要らしくて。さてとりあえず向かいましょう』

 

 (結婚式や拍手の音)

 

 司会『それでは、ここで新郎新婦のキューピット役ともなりました新婦のお姉様にみつき様よりメッセージがございます。』

 

 かすみ『え?』

 

 みつき『皆様、この場を借りまして姉への感謝を伝えさせて頂きたいと思います。

 かすみお姉ちゃんへ

 お姉ちゃん今回は本当に素敵なフラワーアレンジメントありがとう。いつも忙しい中私を心配してくれてありがとう。やっと私にもこの人と一緒ならって思える人が出来ました。それもお姉ちゃんの花束で彼がプロポーズしてくれたからだと思っています。お姉ちゃんのフラワーアレンジメントには不思議な力があると思います。みんなを幸せにしてくれるフラワーアレンジメント。これからも身体に気をつけて無理なくお店をやっていってください。みつきより』

 

(拍手)

 

 かすみ『はぁ……みつきったら……グスッ』


 太田『かっこいいっす。店長、いやかすみさん。』

 

 かすみ『ありがとう、ありがとう……』

 

 かすみ【こうして無事にみつきの結婚パーティーは終わりました】


 ――🌼――

 

 (ファックスの音)


 ――🌼――

 (カランカラン人の入る音)

 

 かすみ『いらっしゃいませ』

 

 蘭『すみません。先日お電話した神崎蘭と申します。』

 

 かすみ『お待ちしておりました。ではこちらへどうぞ。FAXありがとうございました』

 

 らん『こちらこそ、本来定休日なのにわざわざ開けてくださってありがとうございます。』


 かすみ『いえいえ。今日必要でしたら市場も休みで仕入れも出来なかったのでお断りするところだったんですが月曜日にご必要との事でしたのでお受けしました。』

 

 らん『ありがとうございます。こちらのフラワーアレンジメントがとても人気あってお店に送るとそこが繁盛すると聞いたもので……』

 

 かすみ『繁盛するかどうかは別として精一杯考えさせていただきますね。で、こちらのFAXによるとお店の従業員の方への誕生日会のお花ですね。』

 

 らん『実は私の通ってるホストクラブの担当が明日誕生日なんですよ。でお店でパーティがあるのでそこに飾るフラワーアレンジメントをお願いしたいんです。』

 

 かすみ『なるほど。基本的にホストクラブさんへのお花は胡蝶蘭やスタンドタイプのものが多いのですがアレンジメントで大丈夫ですか?』

 

 らん『はい。そうなんですよね。でも沢山お花スタンドは貰うと思うしわざとなんです。フラワーアレンジの方が持ち帰りやすいかな?って思って。』

 

 かすみ『わかりました。では、好きなお花はありますか?』

 

 らん『以前ここで赤い薔薇を1本買ってもらったことがあるので私も同じ赤い薔薇を中心にしてあげたいんです。』

 

 かすみ『そうですね。薔薇は年間通してありますが色によって花言葉も違いますのでその辺気をつけてアレンジしていきましょう。』

 

 れん『ありがとうございます。』

 

 かすみ『ピンクは感謝、愛の誓い。イエロー系でしたら愛の告白。レッドですと熱烈な恋。』

 

 れん『そんなに色々花言葉があるんですね。』


 かすみ『そうですね。特にバラは本数によっても意味が違ってきますからね』

 

 れん『そうなんですか?ちなみにバラ一本は?』

 

 かすみ『一目惚れ、貴女しかいない。ですね。』

 

 らん『そうなんですね。でも彼は、そんな意味はわかってなくて買ってくれたんだとは思いますけど笑』

 

 かすみ『まあ男性で花言葉に詳しい方は花屋ぐらいで十分だと思いますけど笑』

 

 らん『そうですよね。じゃあアレンジはお任せしますのでよろしくお願いします。私も明日は同伴でお店に行きますので楽しみにしてます。』


 かすみ『かしこまりました。では明日。』


 かすみ【ホストクラブのお店にはごひいきにしてくださっている従業員の方もいらっしゃいます。ここからで気に入っていただければもちろん注文をいただけるようになることも…………】


 ――🥀――

 

 (朝の音)

 

 かすみ『よいしょ。よいしょ。太田くーんちょっと手伝って。』

 

 太田『店長どうしたんですか?その大量のバラ』

 

 かすみ『例のホストクラブさんの誕生日会のお花よ。』

 

 太田『すげー』

 

 かすみ『なんかね、誕生日と昇進のお祝いを兼ねているパーティらしくて盛大みたいなのよ。』


 太田『これから設置ですか?』

 

 かすみ『オープン前に設置をしに行かないといけないから午後1番で行くことになりそうよ。あとはお店任せてもいいかしら?』

 

 太田『もちろんっす。』


 かすみ『じぁあ行ってきます。』

 

 かすみ【こうして私はホストクラブのお店に向かい設置をして戻りました】


 ――🥀――

 

 (店の電話の音)

 

 かすみ『はい。フラワーショップカスミソウです。』


 らん『もしもし、先日フラワーアレンジをお願いしました神埼蘭と申します。』


 かすみ『先日はありがとうございました。どうかされましたか?』


 らん『なんだか花束以外にもスダンドも用意していてだけて、本人とても喜んでいました。』


 かすみ『そうでしたか。わざわざご連絡ありがとうございます。これからのご贔屓にしていただけたらっと思って、うちの店からの送らせていただきました。』


 らん『それが嬉しかったみたいです。ますます売り上げがとれてるみたいでNO1も近いみたいです。やっぱり店長さんのフラワーアレンジメントには不思議な力があるんですね?』


 かすみ『さぁーどうなんでしょう?笑』


 らん『また何かイベントの時はお願いしますのでよろしくお願いします。』


 かすみ『ありがとうございます。では失礼します。』

 

(電話を切る音)

 

 太田『店長、また新たな伝説をつくりましたね?』


 かすみ『何よ。伝説って笑やめてよ。』


 かすみ【ジンクスでもない。伝説ではない。ただ花の魅力でみんなを幸せにしたいだけ。それだけなんです。私は2階建ての一階で花屋を経営しています。皆様もぜひ『かすみそう』へ足をお運びください】


 

 

 

 


 


 







 


 

エピローグ

 フラワーショップカスミソウでのお話はまだまだあります。私がなぜ花屋をすることになったのか?

 そして、他界した主人のお話もしなくてはいけませんね。

 それは、また次回に致しましょう。

 

 

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花屋の店先… かてぃ @LieereKaty

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