イタイ気な二人

とろり。

二人でイタイ


 小学生の頃は別にの子供だった。アニメには興味あったけど、偏ったり逸れすぎることはなかった。

 周りの友達もいわゆるの子供だった。だから、俺自身も道を踏み外すことはなかったんだと思う。


 けど


 中学生になるとなんだかこう、「俺には不思議な力がある」とか「俺は神の生まれ変わり」とか変な思考が頭を支配する。そう、俺も中二病を患った。

 でも、全然悪いこととは思っていない。むしろ良い思い出が多い。




 小林良子こばやしよしこという女の子がいた。成績悪いのに名前は、運動神経悪いのに名前は

 昭和時代の名前みたいで古くさくて、本人は嫌がっていた。


「私の名前は小林フローネ、外国人よ」


 こいつ、とても痛い子だな。


「お前それ、嘘だろ?」


「なっ! 本当よっ! 私の名前は小林フローネ! 外国人とのハーフ」

「お前が外国人のハーフなら、俺は、神とのハーフ。俺の名前は一ノ瀬オブゴッドだッッッ!!! フハハハハハハ! どうだまいったかッッ!」


 バカである。一ノ瀬オブゴッドはバカである。そう、脳みそが異世界に旅立ったまま、帰って来ないのである。

 覚え立ての英語を使いたくてウズウズしている。なんでもかんでもゴッドを付ければいいと思ってる。オーマイガッッッ!


「ッッッ! あ、あなたがあの有名な一ノ瀬オブゴッドッッッ!」


 おいおい、大分だいぶ食らいついて来るな……。


「私の前前前前前前前前前前世からの恋人。ついに見付けたわ! さあ、今すぐに結婚しましょう! キッスは優しくお願いします♡」


 ドあふぉ者が! 誰がフローネちゃん小林良子とキッスなんかするか!

 でも、案外可愛いよなぁ。キッス、してもいいかなあ。


 ハッッッ!


 い、いかん。俺は一ノ瀬オブゴッド。この世界の神 のハーフ! この小娘と結婚するなんて……。


「わたくし、胸が先進国でございます! 殿方は大きな胸が好きだと聞いております! 結婚しましたら、わたくしめは殿方の自由にして良いのですよ!」


 誘惑。

 た、確かに可愛い。古くさい名前で損してる。普段地味なのはカモフラージュか?


「ちょっと待て、結婚を前提に話を進めないでくれ」


「私は諦めません! 必ずや一ノ瀬オブゴッド様と結婚いたしましょう!」


 一ノ瀬オブゴッド……。急に恥ずかしくなってきたな。

 頭、調べた方がいい?

 人間ドック行こうかな?

 あ、そう言えば脳みそ異世界に置いてきたんだったな。忘れてた。すぐに忘れる都合の良い頭。



 ◇ ◇ ◇ ◇ 


 のちに聞いた話だと、やっぱり自分の名前が嫌だったんだそうな。だから少し(いや、少しじゃないか……)背伸びして、変な名前に改名してたんだな。

 俺と結婚することで、が自分の名前に付くと勘違いしている。

 やっぱりすごく痛い子。

 可愛いのに。


 俺、なんかこいつと、共鳴してる?



一応、一話完結です。

最後まで読んでくださりありがとうございました!







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

イタイ気な二人 とろり。 @towanosakura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ