第5話 旅立ちの日
牛窓の家はすでに出来上がっていて、おふくろたちが旅立つまでが早かった。
シーズー犬のララとリリとルルとみんな檜山さんの車の荷台のサークルに入れられて、おふくろの車には車椅子が収められ、それぞれの運転で牛窓を目指して行った。
だいぶ前から、この転居の話をナオは相談されていて、家計費の引き継ぎもしてあった。
門扉をオートロックに代え、門の横にナオの提案で設えられた冷暖房完備の守衛室は裏庭に運ばれ、高齢化したドーべルマンたちの寝床になった。
各部屋を自分たちの思い思いにリフォームして、3階には
ゲーム会社の下請けの仕事をする哲平が引っ越して来た。
ゲームの音響を製作する会社で、最初の頃はキーボードだけで始めた会社だったが、会社が大きくなるにつれ機材も増え、リフォームするときに防音設備も怠らなかった。
「ナオちゃん、これ生活費」
「こんなにいただけません」
「じゃあ、ストックしておいて。あったらあっただけ使っちゃうから。その代わり支払いが遅れるときもあるから、そのときは許して」
哲平は両手を合わせ拝むポーズをした。
最初の頃のイメージと違って、一平の兄だけあって、そんなに嫌な感じがしなくなっていた。ただ、女性にだらしないのは変わらないみたいだった。
子どもたちが赤ん坊の間、ベビーシッター役を買って出てくれたレイに助けられた。そのシッター代も支払わなくなり、家計費に組み込まれた。
レイは自動車の免許を取りに行くと、医療事務の講習に行きだした。大阪でナオが就いていた仕事だった。
子どもたちは今まで通り公立の幼稚園に通い、何ら生活が変わることはなかった。
牛窓は日本のエーゲ海と言われ、小高い丘の上にルリ子たちの住まいがあった。オリーブの木々の向こうに穏やかな瀬戸の海が見える。
少し走れば病院もあり、何より温暖な気候が哲之介の古傷を癒やし、今では杖をついて歩く練習をしているという。
【了】
ナオのおまけ話にお付き合いくださいまして、ありがとうございました!
『🏡ルナの災難💓』に続きます。
https://kakuyomu.jp/my/works/16817330659542312816/episodes/16817330659543107738
5🏡ナオが消えた💓 オカン🐷 @magarikado
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