第9話 回避
目が覚めてからあれよ、あれよと言う間に髪をセットされて、ドレスを着せられ促されるままに行くと、キレイな馬車に載せられて、着いた先は正に中世ヨーロッパを思わせる城。父親と思しき人と手を繋ぎ行き着いた先には豪勢なマントを羽織ってた男性とシャンデリアに照らされてキラキラと反射するドレスを纏った女性の間には可愛らしい男の子が立っていた。
将来イケメン間違いないわ。
男の子はニコリと微笑んでくれたので、私も微笑み返した。
此処は何処よ。夢なら早く覚めてくれー。
部屋へ行く前に妹とゲームの話しをしていたせいなのか?
取り敢えず、目が覚める様に手の甲を抓ってみた。
い、痛い。
でも、目が覚めない。
やっぱり此処は王道に従って頬を抓るべきか。
強めに抓ってみたが、痛いだけで変わらない。
え、何これ。輪廻転生?
「どうした?カサブランカ。頬が真っ赤じゃないか!」
抓った場所を父親らしき人が、優しく撫でてくれる。
前を見ると、3人が驚いた顔で私を見ている。
不味い。言い訳、言い訳しなきゃ。
「あ、あの…方が、えっと、す、素敵で、夢かと。」
前に立つ3人はホッとした様に小さく息を吐いた。
「夢ではないよ。カサブランカは、このフローラル国の王太子であられるミラダス様とこれから婚約をするんだよ。」
王太子と婚約?何処ぞで聞いた様な。フローラル国?ん?あれ?
ゲームじゃん!何?ゲームの世界に来ちゃったの?
えっ、えって事はこの人逆ハーレムの一員?
冗談でしょ。私断罪されたりしちゃう訳?殺されちゃうの?
絶対に嫌なんだけど!
ゲームの内容が全く判らないから対処のしようがないじゃんか!
頭を抱えた。視線を前に向ければ、不安そうに男の子がが私を見ている。
どうする?どうしよう。
「約束をして貰えますか?」
王太子の横に立つ2人は顔を見合わせた。
「僕に出来る事なら良いですよ。」
「はい。浮気は絶対にしないで下さい。浮気もしくは、相手に本気になった時には必ず私に言って下さい。その時は離婚して下さい。謂れなく断罪や死罪にはしないで下さい。同意の場合契約書にサインをして下さい。サインをして下さるなら婚約致します。」
父親らしき人も前の2人も驚いて私を見ていた。背に腹は変えられない。許して欲しい。
「なんだ。そんな事。良いよ。そこの君、文官を呼んで来てくれ。」
大人達が呆然としている間に契約書を文官は直ぐに書いてくれて、私達はお互いにサインをして、そのまま婚約同意書にもサインをしてあっと言う間に終わってしまった。
後でメイドに
「あれ?私って幾つだっけ?」
と尋ねたら、
「お嬢様は今年で5歳ですよ。因みに殿下は8歳です。」
と教えてくれた。彼は私よりも3歳年上だったらしい。
そのメイド、シノニムに父親の事や家の事を尋ねると、
「幼いからお忘れになられたのですね。」
と、スラスラ教えてくれた。
家は、筆頭侯爵家のオリーブ家で父親は、ラザニ・オリーブで母親は2歳の時に嵐の中領地から王都へ来る途中に馬車が石にぶつかって車輪が壊れて横転して頭を強く打ち他界。兄が今騎士学校の寮に居て、卒業後はそのまま王城で騎士見習いとして配属が決まっているらしい。
私と兄は幾つ離れているんだ?
「因みに兄上であるサーファス様は15歳です。」
父親は幾つなんだろう。若そうだけど。
「あっ、因みに、侯爵様は35歳で奥様がご存命でしたら33歳でした。」
えっ、お母さん18歳で母親だったの?早くない?この世界では当たり前なのかな?
「貴族は皆さん結婚が早いんですよ。」
微笑みながら教えてくれるけど、
因みにー
辺りは心を読まれているのかな?と思う位に怖い。
「因みに、私人の心は読めませんから、安心して下さいね。」
いや、だから怖いって。
翌日からは、ほぼ毎日王城へ通った。
王太子妃になる為の教育の為に。
教育係は、王妃様と王妃様の侍女長のパキラ夫人だった。
とても優しくて、質問もし易かったし、テーブルマナーは前世が役に立ってくれたので、苦はなかった。
恵まれいてラッキー。
元々勉強は嫌いではなかったし、法律は前世と余り対策はなかったので、
天才
の称号を頂いた。
ミラダス様は全く浮気の兆しも無く、学園時代も問題は無かった。
卒業した半年後に結婚をした。
翌年に第一王子イグニスが誕生した。
イグニスが誕生した辺りからミラダス様が何処と無く落ち着きがなくなって来た。
王妃様に会いに行くと、目が泳いで視線を逸らす。
怪しい。とっても怪しい。
実家に里帰りしまーす。
とイグニスを抱えて帰省した。
元の部屋へ行くと、ベビーベッドがベッド横に設置されていた。
相変わらず仕事が早い。ノックして入って来たのは、シノニム。待っていたわよ。
「お嬢様、じゃなかった。王太子妃殿下。…舌噛みそう。えっと…。」
「皆んなと同じにブランで良いわよ。言い難ければ、お嬢様でも良いわ。」
笑いながら言うと、
「申し訳ありません。では、改めましてお嬢様。お帰りさないませ。
お茶をお召し上がり下さい。」
「ありがとう。」
片腕にイグニスを抱えてカップを持ちお茶を頂いた。
ホッとするわぁ。
「ラ・レーヌ・ヴィクトリア夫人の事ですね。」
誰それ。
と思いながらも、知っているふりをして頷いた。
「お嬢様との契約書があるから王家も必死に隠したい様ですが、旦那様が仰るのには、余りに堂々とし過ぎていて、態とバレる様にしたいのか?と怒っておいででした。先見の明がお有りだからお嬢様は女神かも知れない。と仰せでしたよ。」
親バカ過ぎて恥ずかしくなる。
ん?ちょっと待って。契約書?
あれって浮気ダメのやつよね。
成程、ミラダス浮気始めたのか。
冷やし中華始めました。
のノリで、浮気始めるな!
「シノニム。馬車用意してくれる?」
シノニムは、イグニスのほっぺをツンツンと指で突いてから出て行った。
用意された馬車に乗り込み王城へ引き返して、王妃様に謁見依頼を出すと直ぐに通った。
床に手を付いて頭を下げ、
「私がどうにかするから今回は許して欲しい。イグニスの為に堪えて欲しい。」
とお願いをされた。
その際に、
もし、今後浮気がバレた場合、王太子が成人していたら、ミラダス様は王の座を降りて譲る約束を取り付けた。
少しすると、ラ・レーヌ・ヴィクトリア夫人は王城で見かける事は無くなった。
イグニス誕生から3年後にマゼランが誕生した。
マゼランが誕生した翌年陛下と王妃様は流行り病で相次いで亡くなった。
戴冠式だなんだと慌ただしく月日は過ぎていき、気が付くとイグニスは8歳になっていた。
婚約者を決めたい。と大臣達からもヤイヤイ言われ宰相のフレグランス公の息女に決まった。
初めての顔合わせ。嫌な姑にならない様にしなくちゃ。
王妃様がして下さった様にしなくちゃ。
緊張した。メチャ緊張した。公女は開口一番
「お姉ちゃん!」
と言った。公女の後ろには薄らと前世の妹花音が見える。
皆んなに部屋から出て貰い2人だけになった。
泣きながら抱き合った。
今はアンセリウム。私の息子の婚約者になった。
毎日登城して貰い、王太子妃教育をしながら、ゲーム内容を聞いていく。妹も
断罪なんかされたくはない!
当たり前だけど。
と言うので、2人で対策を取った。
イグニスを見ていると、どうにも女性に弱い。ハニートラップにも絶対に引っかかる様にしか見えない。
調べてみれば、王太子教育ラ・レーヌ・ヴィクトリア夫人が行っている。
バカなの?この2人バカなの?
旦那の浮気相手に刺されて此方へ来たアンセリウムが怯えている。
王太子の妃となる人の教育は私がします。
と宣言しておいて良かった。
学園に入ると、直ぐにリリー嬢に掴まった。
私の夫と息子はバカだわ。
マゼランに王太子教育を施すべくダマスクローズ侯爵に依頼した。
本来なら彼がイグニスの教育をする予定だったから。
マゼランは優秀だったから、教育はスポンジが水を吸う様に早かった。
マゼランは私の遺伝子が強い様で良かった。
アンセリウムには周りの悪役令嬢達と結束して、証拠集めと日記を書く事を勧めた。
また、悪役令嬢達と母親達を招いてお茶会を行い情報交換も行った。
ミラダスには王太子をまだ決めちゃダメだと言ったが、どうしても彼はイグニスに拘ったので、契約書を交わした。
イグニスが、王太子に在るまじき行為を行った時には、王太子をマゼランに変更する事。
結果、イグニスは予定通りに卒業プロムで断罪を初めて、廃嫡となった。ミラダスも前王妃様との契約書に則り、マゼランが学園を卒業して、成人式を終えたらマゼランに譲位する事になった。
リリー嬢は自分はヒロインだと言っていたが、全員が自分の人生に置いて、ヒロインだと言う事を頭に置かなきゃダメでしょう。
しかも、自分が異世界に転生して来たなら、
他にも転生者がいるかも。
と疑わなくちゃ。
疑って行動したら、違う人生だったのにね。
たぶん…ね
私の断罪式で、主人公が変わりました 朝霞 @haru3341
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