青年への子守唄
夜々
第1話(完)
『青年への子守唄』
どんなに苦しくても、聴いていて不快にならない。
そんなアルバムが欲しかった。
生まれた頃から死を想うことを義務付けられて。
それを悟った瞬間に、希死念慮は彩度を強めた。
まるで命に恋してるみたいで、あんまりだからロープを結んだ。
少年の日々は美化するまでもなくきれいだ。
記憶の主人公が、明日ばかりみているから当然だろう。
明日が、白紙なのだから当然だろう。
夜になって、眠気と不安がベッドに潜りこんでくる。
不安は幼い僕で、少し撫でてやると、安心したように寝息を立て始めた。
彼は僕なのに、僕は彼を、真に安心させてやれない。
そういう大切なものの多くを、僕等はきっとおもちゃ箱にでも置いてきた。
あくびとともに明日がよぎる。
誰かの思い出の、あまりに綺麗なこと。
大人びた記憶たちが、連鎖的に自殺を図ること。
すこしずつ毎日、夜をたべて。僕たちの心はだんだん固くな
それを成長と呼ぶなら、もういいよ、ちゃんときずつくから。
いろんなひとの、いろんなものをかかえて、朝を待つ。
大人にとってのおもちゃ箱は、そんな夜なのかもしれない。
でも彼だって疲れる。明けない夜がないのは、そういうことだろう。
そろそろ時間だ。ごめんなさいを言わないと。
無為に食い散らかした夜たちに。
青年への子守唄 夜々 @vanirain_3
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