特命特務特課 T3〜15年前に全てを奪われた俺達は歪な力で復讐する〜

タカメイノズク

第1話 俺達はT3


2023年4月16日AM3:00


私は資料室でとある事件の報告書を開く、辺りは暗く静まり返っており私以外の人間がいないことを知らせてくれる。


「逆ハーメルンの笛吹き事件か...」


ぽつりと事件名を復唱する、というのもこの事件の担当は私だったからだ。今でも14年前のあの光景を鮮明に思い浮かべることが出来る...

6人の中でみんなを励ましていた14歳の子。

その腕に抱きしめられ、ママどこ?パパどこ?突然居なくなった家族を探していた1歳の子

そんな子相手に自分も泣きたいのを必死に我慢してあやしていた8歳の子

もう1人血だらけの手で玩具を握り一生懸命あやしていた9歳の子

泣きやもうとしても溢れ出て来る涙を必死に押さえ込もうとしていた6歳の子

自分よりも何よりも家にいる妹心配していたその日が誕生日の6歳の子

総勢50名を乗せた"わくわく夢の星を見つけようツアー"は僅か6名の男の子達を残して跡形もなく大破していた、さらに発見までの数日間彼らが過ごした道路にはかなり高濃度な猛毒ガスが何者かによって散布されており、何者かによる計画的犯行だと言うのは誰がどう見ても明らかだった。

しかし私は捕まえることが出来なかった...いや関与した証拠を見つける事すら叶わなかった。

結局事件は迷宮入り、私が刑事に出世してから初めての事件は完全敗北という形になってしまった。

......とここまでならただの私の苦い黒歴史で終わったのだが、この話には続きがある。それは私がこんな夜中にかつて穴が空くほど読んだ報告書を再び読み直している理由になっている。

あの時の6人の子供達にとってはこの事件はまだ終わっていないのだ。コレは私が主人公の物語ではない、あの事件によって身体を「歪」にされた彼らの復讐譚だ......



〜***〜



2023年4月17日PM2:25


今日の講義もあらかた終わり、俺は待ち合わせしていた友達に会うために広場へ向かう。今日は1時間目から講義があった為、もう身体が疲れ切っていた。普段なら即帰宅からの即ベッドダイブをかます所だったのだが、今日に関しては大切な用事があるのでわざわざ講義後に待ち合わせをしているのである。


「ア゙ア゙ア゙ア゙帰りだい」


声にもならない声が俺の喉を通り過ぎる。とても20歳の青年が出していい声ではないと思う。喉が乾いたな、俺は唐突な思いつきで近くの自動販売機向かう、自販機の先頭に立ちどれにしようかと考えていると。チャリン、とお金を入れる音がした、勿論俺じゃない、俺はようやっと130円ちょっきりを財布から探し当て、これからお気に入りのテラ・コーラを買おうとしてるところだった。


「あのー俺が先に立ってたんですけど?分かりませんでした?」


思わず挑発じみた口調で話しかけてしまった。これは失敗したか


「すいません!!結構財布とにらめっこしてたのでてっきりお金がないものかと」


なんか相手も挑発してきた。普段なら笑顔で許しているところなのだがここまで煽られると引くに引けない


「そういう決めつけは良くないのでは?」

「そもそもたかがジュース1本先に買われたぐらいでそこまで怒らないで下さいよ」


その言葉に俺は始めて相手の方を向くそこには黒髪ショートでスーツ姿の女がいた。女は[KIMIジャーナル]と書かれた腕章と彩文 命あやふみ めいという名前の着いた名札を付けている、KIMIジャーナル、そこそこ有名なネット記事を書いているところだった気がする、だとしたらこいつは取材に来た外部の人か。いやそんなことは正直どうでもよかった。最大の衝撃は中々でかいものをお持ちなナイスバディだったことだ。顔も整っててめっちゃかわいい、っていかんいかん見た目に惑わされるな!!


「俺だって普段はそんな怒んないよ、お前がいちいち馬鹿にするようなことを言うから!!」


俺は強めの語気で攻める。


「あらあらそんな強く言われちゃうと悲しいな〜」

「んだとこの野郎?」

「野郎じゃないです女の子です見て分かりません?」


そういうと女はくるり1回点して見せる、くっそ可愛いなこいつ、どタイプだわ......ってそうやって惑わされるのがダメなんだよ!


「あーすまん気性が荒くて野郎に見えてたわごめんごめん」

「はああああ?目どうなってんよの!?」

「はぁ?目の前で自販機に立ってる人が見えなかった奴に言われたくですぅ」

「さっきからずっとずっとネチネチとしつこいんのよ!」

「あ〜もういいやなんかどうでも良くなってきた。俺今日用事あんだわもう帰る。」


なんか一生続きそうなこのくだらないやり取りを終わらせる為俺は小走りで旧食堂の方へ向かう、一旦広場からは離れてしまうがしょうがない


「ん?これって...あっちょ待ちなさいよ!!」


勝手に戦いを終わらせないと言わんばかりにこちらを追いかけてくるなんなんだこの女...


「お前さっきはそこまで怒るなよとか言ってた癖に」

「違っ......そーじゃなくて!!」


じゃなんなんだと俺は呆れ気味にスピードをあげる。まあだいたいチャリぐらいのスピード出してるからあいつは追いつけまい、その予想通り次俺が後ろを振り向いた時にはあいつはもういなかった。なんだったんだろうあいつ。



〜***〜



2023年4月17日PM2:40


「やっと来ましたかイシス」


何とか彩史 命を巻き、再び広場に戻ると名前を呼ばれる、どうやら相手はもう既に到着していたらしい、そりゃそうか、約束の時間をもう結構過ぎてるしな


「おう!待ったか?」

「ええ......ほんとだいぶね......ッッッ!」


あやべめっちゃ怒ってる


「いやちょっと特殊な自体になってて」

「はぁ、まあ理由次第では許しますよ」

「女に追いかけられてた」

「許さん!!」


ダメでした。


「いやそういうのじゃなくて喧嘩の末に追っかけられたというかなんというか」

「へぇー痴話喧嘩と、見せつけていや聞かせつけてくれますねぇ、こちとら彼女いない歴=年齢なんですよ!?」


このさっきからカンカンに怒っている男は明地 四神めいち しがみ

俺の幼馴染で昔からの腐れ縁だ、ほんとにほんとに昔から。超がつくほどの天才で、中一の時に現在まで大人気のゲームシリーズ〈ラビリンス&デモンズ〉略してラビンズを開発、本人的には小遣い稼ぎのつもりで作ったら思った数倍の反響でめっちゃビビったらしい。まあこのエピソードからわかる通りまさに天才と言える男なのである。ちなみに体力は馬鹿みたいに低いし運動神経もゴミなので高一の100メートル走で20秒台を叩きだし続けていた。


「まぁまぁ俺も彼女いない歴=年齢なんだし仲良く行こうや」

「はぁ......貴方の遅刻癖は僕が1番分かっていますからね」

「まあお前が最大の被害者だからな」

「すました顔で言うことじゃないです反省してください」

「はいすいません」


俺と四神はくだらない雑談を続ける。まあそんな話を続けるのもいいが、そろそろ本題に入ろう。


「んで四神、警察署には何時に集合だ?」

「ああ、15時30分ですね」

「移動手段は?」

「14時40分バスです」

「......徒歩で行くなら」

「1時間はかかりますよ」

「遅刻も遅刻の大ピンチじゃねぇか!」

「まあまあ落ち着いてください、一応14時50分ちょっきりにもバスがあって、そこならギリギリ間に合います。」

「ああそうか...なら良かった」

「そもそも?誰かさんが見ず知らずの女の子と追っかけっこしなければこんなことにならなかったんですけどね?ね?」

「ほんとすいません」


ほんとそれに関しては頭が上がらない...とはいえ何とか間に合いそうで良かった。何しろ今日はまちにまったあの日なのだから、高校生になってあのの話を聞いたその時から、本当にこの日が待ち遠しかった。昨日の夜、四神から連絡を受けた時から心臓の動悸が全然治まらなかった。


「ついに来たんだよな......」

「はい...ついに来たんです......」


母さんの......父さんの......そしてあの日の俺たちの仇をとる時が......

身体の全身から熱いものが込み上げてくる、当然のことだ。これを終えた時、俺たちはやっと1歩を進めるのだから...


「それじゃあそろそろ行きますか」

「ああ、あと5分だしな、もう流石に」


俺達はそろそろ来るバスに乗るために、椅子から立ち上がり、広場を離れようとする。ここの大学は入口を通って最初に着く場所がこの広場になっており、玄関の役割もになっている、その性質上ここからならどこにでも行けるようになっている、またその逆も言えることで道に迷った人でもとりあえずここには帰ってこられるように作られているため初めて来た外部の人なんかも迷ったらとりあえずここにきがちである、つまり何が言いたいのかと言うと


「ぜェ......ばだ......ばだあっだばね!!」

「うげ」


こういうことも起こる、最悪だ......あっちはあっちでめちゃくちゃ息が乱れてるし、言葉も喋るのもままなっていない、あいつこの20分ぐらいずっと俺の事探して走ってただろ、その執念どっから来てるんだ全く......


「なぁ......俺達急いでるんだ、バカにしたことは悪かったからとりあえずと行かせてもらうぞ」

「ぜェ...ぜェ......まっで、ぞーじゃなぐゅじぇばずぜぼ......」

「ごめん......何言ってるか分からないからもう行くぞ」

「はぁ、はぁ......落ち着いて来た、ちょっと待って!......」

「ああもう!時間ないんだって!早く行かせてもらうぞ」


バスの時間が危ない......俺は四神と共に急いでバス停に向かう、もうほんとに彩文 命にかまっている暇なんてないのだ。


「おいもうバスが来てるぞ!!」

「何とか間に合いましたね...危なかった」


残り時間1分程のタイミングで俺達はバス停に着く、バス停には警察署前行きの171番線のバスが今にも発車したそうにうずうずしていた。まず四神がバスに乗り、次は俺だとバスに乗ろうとした瞬間、何者かが俺の事遮ってバスに乗る。


「うわっ危ねーな!誰だよ!」

「やっと追いついたし言える!」

「うわお前かよ」


またあいつだ彩文 命だ


「なんだよ全くもぉー」


またこいつかよォ〜と俺はもはや呆れ気味な声を出すが次の瞬間、彩文 命は手のひらを伸ばして俺に見せつけてくる。


「これ!忘れ物!」

「え?」


彩文 命の意外な行動に俺は思わず素っ頓狂な声を出してしまう、そして彩文 命の手のひらを見てると確かにあった。

それは大切なもの......俺の6歳の誕生日プレゼント.......


「ライブバイッスル......」


当時の特撮番組、超戦士 バンファイトに出てくる主役ヒーローのバンファイトが必殺の時に使うホイッスル型のアイテムで、俺は当時喉から手が出るほど欲しかった、それを察してくれた母さんと父さんがベルトと一緒に買い与えてくれた思い出の品......あの時はほんとに嬉しくてこのバイッスルをずっと色んなところに持ち込んでた、あの事件の時も......


「そっかこれをずっと......ありがとうございます......あとすいませんでしたあんな邪険にして」

「うわ、急に敬語でしおらしくなんないでよ、別にいいわよ落し物を当人に届けるとか人として当たり前のことなんだから、それにあんな酷い形相で追っかけたこっちも悪いとこあるし」

「いやそう言う訳にもいかなくて......なんか今度なにかお礼しますよ」

「いやいらないけど、別に私がいいって言ってるだから」

「いやいやほんとこれは大切なもので」

「いやいやいやだったらもうそれでお礼とかいらないから」

「いやいやいやいやそういう訳にもいかなくて......」







「「いいからこっちの言うこと聞きなさいよ!」」

「あーもうなんでこうまた喧嘩になるかなー?ただなんかお礼しますってだけなのに!」

「別にお礼されるようなことしてないからよ!」

「いーや絶対お礼はさせてもらう」


俺達2人は口論に夢中になっていた。当然時間なんかも気にしていなかった......そしてそれ故に......


ウィーン


「「あ」」


バスの扉が閉まる、俺は外、彩文 命は中からそれを唖然とした顔で見ている......やってしまった、これで俺の遅刻はほぼ確定してしまった訳だが、同時に何ならかの仕事の為に大学に来ていたであろう彩文 命も無断で持ち場を離れたという、両者共に大ポカをやらかした結果となってしまった。何より、まだ渦中の俺のバイッスルを回収出来ていない......まあそれは先に乗っていた四神に任せるとしよう、だいぶ身勝手な考え方だがまあこれぐらいはいいだろう。


「とりあえず次のバスでも探すか......」


行くあてもないのでとりあえず俺は大学の広場に戻ることにした。



〜***〜



2023年4月17日PM2:55


完全にやらかしてしまった......これは完全に編集長にどやされるパターンだ......てか第一、取材内容に問題があるんだよ!なんだよこの近隣で目撃されている超人大学生を見つけろって、んなもんいるわけけねぇだろ!


「とは心の中で愚痴って見るも、私は結局座席に座るしかない......か」

「素敵な詩ですね」

「うわびっくりした!?」


急に後ろの席から話しかけられた私はすごい勢いで後ろを向く、なんなんだこいつ、新手のナンパか?もしかして......昔結婚約束をした幼馴染とか、とか冗談を言ってても仕方ない


「え?ほんとに誰?」

「あれ......僕が誰かあんまりわかってない感じですか?」

「え......まぁ」

「マジですか......おかしいな僕結構イシスの近くにいた気がするんだけどな......」

「イシス......?誰?」

「あー、貴方とさっきから喧嘩してた人ですよ」

「あいつ名前か......」

「そ、フルネームはイシス・結城・スレイド、イギリス人の父と日本人の母を持つ現在21歳の大学生です。ちなみに僕は四神です」

「ほぉほぉ、あいつってそんな名前なのか......」

「それに、あいつの落し物わざわざ届けてくれてありがとうございます」

「あっこれですか?」


私はポケットから例の落し物を手のひらに乗せて見せる


「そっこれこれ、これバイッスルって言って僕たちの世代の特撮ヒーローが使うやつなんですよ、、イシスは昔、そのヒーローことが大好きでこの玩具はイシスの誕生日にやっと買ってもらったやつなんですよ」

「そんな......大切なものだったのか......」


だったらお礼ちゃんと受け入れれば良かったな。


「だとしたらもう今のうちに渡します!そんな大事なものだったら......」

「んにゃ、まだ持っててください」


私は四神さんに落し物を渡そうとするのだが、四神さんはそれをあっさり断る


「なんで......?」

「今から僕はバスジャックに対応しなければ行けませんから」

「え?」


しかしこの数秒後四神さんの言っていたを理解する、バンッと言う銃声と共に3名ほどの男たちが銃を構えてこちらの方に向けてきた、四神さんの言う通り、バスジャックが......本当に起こった......



〜***〜



2023年4月17日PM3:10


「うっそだろおい......」


次のバスの時間をとりあえず把握し、今度はちゃんと乗れるよう、バス停で待っていると、突然スマホの画面にひとつのネットニュースが表示される、そこにはさっき俺が乗り遅れた171番線のバスがバスジャックされたという旨の記事が乗っていた。


「マジか......今すぐ行かねぇと!って今からバスに追いつける訳ねぇか......」


1回焦る心を落ち着かせ考える......今からバスに追いつく方法......


「バイクなら行けるかも......だとしたらあいつを頼るか......?」


俺はスマホを取りだしすぐある人物に電話をかける



〜***〜



2023年6月17日PM3:15


「てめぇら!ぜってぇ動くなよ!あぁ!」


リーダー格らしき男がこちらに銃を突きつけて叫ぶ、このバスに乗っていた乗客達は全員、縄で縛り付けられてバスの座席に2人ずつで座らされている。


「んな叫ばなくても、こんなにきつい縄なら動きたくても動けないっての」

「確かにそれはそうですね」


私達はバスジャック犯達に聞こえないような超小声で悪態をつく、しかし


「ああ!?ああ!?おい!てめぇら今なんか言ったか!?」


なぜがリーダー格の男がこちらの声に気づいてこちらに銃を突きつけてくる、なんで聞こえてるんだ......


「今なんで聞こえてるんだ?って思っただろ?いいぜぇいいぜぇ教えてやるよォ」


いや別に聞きたいとは一言も言ってないし......ただ理由を言いたいだけじゃん


「俺さぁ昔から耳が良かったのよぉ所謂ギフテッドってやつだよギフテッドってやつ、まあ検査とかはしたことはねぇけどさぁ......」


こいつは自慢話をする為だけにバスジャックを行ったのか......もはやイラつきとか危機感とかより先に呆れがでてくる。


「耳がいいことに気づいてからの俺はすっげえ頑張ったんだぜぇちゃんとこの力をいいことに使おうってなぁ、悪口言うやつを叱ったり、関係ない話をしてる奴を注意したり、なのに......なのに......あいつら俺の小言がうるせえとか普段から周りの声聞きすぎとかよぉ!あいつら俺の才能を僻んで俺の事避け始めたんだぜぇ!おかしいだろぉ!?普通は俺の才能に感謝してヒーローのように崇め奉るもんなんだぜぇ!?」


知るかよ......お前の性格が悪いからただただ集団の輪から外されただけだろ......とでも言ってやりたいがそんなこと言えば逆上されて打たれるのは目に見えてる、ここは口を閉じ続ける。


「だからよぉだからよぉこれは復讐なんだよぉ、俺の才能を認めない社会へのなぁ!」


もうこいつ主人公気取りの独白に飽きてきた。こんなの完全な八つ当たりじゃないか......こいつが社会から外れたのは

ギフテッドとかヒーローとかそんなの関係ない、ただシンプルに性格が悪いからだ......自分の欠点を反省するどころか見ようともしない、根っからのクズなのだ......


「さてと......運転手さん!これから警察署に向かってもらおうか......そしてそのまま突っ込んでもらうぞぉ!?」

「はぁ!?」


こいつ本気でイカれてやがる!あいつはこのバスを警察署へのミサイルに使うつもりらしい、そんなことしたら、ここにいる人たちはみんな無事じゃ済まない、現にその発言を皮切りにバス内がパニックを起こす。


「黙れぇ!」


バン!


男の銃声と共にまたバス内が静まり返る


「お前ら黙って、俺と一緒に死ねよ......」


一気に身体から血の気が引く、こいつほんとにヤバい......

どうするどうすればこの事態が解決する......このまま死ぬ訳には行かない、私の夢を叶えるまでは私はまだ死ぬ訳にはいかない......

あいつの独りよがりな独白を聞いて麻痺していた緊張感が再び身体を包み込み、ダラダラと嫌な汗を掻かせる......

ほんとに......どうすれば


スっ


私が緊張感に身を包まれていると隣から無言で四神さんがスマホを差し出して来る、なんで?スマホはさっき没収されたのに、いや2台目を持っていたのか、でも1番の謎はそこじゃないこの人、縄を自力で解いてる?どうやって


「なんでこんなきついな......」


喋ろうとした私の口を四神さんはすごい勢いで塞いで、スマホの画面を見せて来る


[バレるから喋らないで]


そっか、もしかしたらバレたら大変だ、殺されかねない

、四神さんはスマホに文字を打ち、私に縄のことを説明してくれた


[肌触りから具体的な縛り方を想像して、縄を解いた]


あっさり言っているがとんでもないことを行っている、この人ほんとに何者なんだ?考えればあの時もバスジャックを予期していたし何者なんだ?

そんなことを考えていると、四神さんはひとつのチャットを見せてくる、そこには


(イシス)[今行く]


とだけ書かれていた......



〜***〜



2023年4月17日PM3:15


「違う!そこじゃなくてそっち!やっぱこっちかも」

「また逆方向じゃないですか!」

「いやーすまん」

「これだから方向音痴の人の道案内は信用出来ないんですよ!」

「まあ絶ちゃんそんな気落とさないで行こう!事態は一刻を争うんだから」

「別に落としては......まあいいや」


今俺に呆れた男は九条 絶くじょう ぜつ、まだまだ幼い生意気な高校1年生だ、ただ高校生であると同時にバイク乗りでもあり、ある特殊な事情で高校に入る前に運転免許を得ることができている。まあ一応4月2日が誕生日なので年齢的なところは問題ないらしい。


「それで?イシスさん、ホントに良かったの?四神さんに連絡送っちゃって、もしバスジャック犯とかにバレたら」

「大丈夫大丈夫、四神はそんなヘマするようなやつじゃねーからさ、それにちゃんとあいつから、こっちのスマホは安全って連絡が来たから送ったんだ」

「へー信頼しあってるねぇ、いいな〜アレが今日からなら俺もバディが出来るんでしょ?」

「確かに...そーなるな」

「俺ちょっと楽しみなんだよね、俺の相棒はどんな人だろって」

「ああ、期待してるといい」


アレが始まればおそらく行動の際に2人同士でバディを組むことになるだろう。絶はそれが心の底から楽しみらしい

実に高校生らしい態度で可愛さを感じる。ただ、、絶の恐ろしいところは今喋りながらでも、バスジャック事件の発生によってパニックなった車による大渋滞を起こしている中、車にギリギリ当たらないよう、すり抜けていっていることだ。しかも速度を一切落とさずに、恐ろしい程の神ドライビングテクニックだと毎度のこと感心する。


「おっイシスさん、バスが見えてきたよ!」

「まじか!」

「でもこの後どうするの?相手が止まらなかったら結局イタチごっこだよ?」

「ああそこについては大丈夫、飛んでから乗り込む」

「うわー結構めちゃくちゃなこと言ってる」

「失敬な実際できるから言ってるんだよ」


ただこの作戦には決定的な穴がある。乗りこむ前にバレたら銃を撃たれたら終わりということだ。


「これ相当難しい問題だよな......まあ俺は考えるの苦手だし、そういうのは得意なやつに任せますか......」


俺はスマホを取りだし四神に連絡を入れる


[四神、アイツらの気、引いといておねがい]




〜***〜



2023年4月17日PM3:25


[四神、アイツらの気引いといておねがい]

[どうしましょめっちゃ無茶ぶりされました]


四神さんはまじかぁと言いたげな顔しながら頭を抱える。

私は四神さんのスマホを借り、メッセージを打つ


[大丈夫なんですか?]


四神さんがそれに返す


[まあやるしかないですよね、ちょっと行ってきますこれ預かっといてください]


四神さんはそう言うと椅子から立つ、勿論縄もしてない姿で出たため、その場は騒然とする。


「おい!どうやって縄を解いたァ!」


叫ぶリーダー格の男に、四神さんはなだめるのようなジェスチャーをする。


「まあまあ落ち着いて今はそんなことどうでもいいですよそれより、なぜそんな素晴らしい能力を持っているのにこんな非道なことをするんです、こんなこと辞めましょうよ」

「辞めるわけねぇだろ!俺はこれを達成して社会を変えた英雄になるんだ!英雄と讃えられるんだ!」


幼稚、としか言いようのない考えだ、聞けば聞くほど呆れる。だがそれでこんな騒ぎを起こしてるんだから馬鹿にもできない状況だ。

緊張感が辺り一帯に満ちる中、四神さんが口を開いた。


「そんなに英雄になりたいんですか、ならいいこと教えてあげますよ」

「あ?」

「これは僕の言葉じゃなくて昔やってたテレビ番組のセリフなんですけど」


四神さんはひとつ注釈を入れ、一泊置いた上で告げる


「英雄ってなろうとした時点でアウトなんですって、つまり貴方いきなりアウトって訳ですよ」

「黙れ!」


リーダー格の男は四神さんに向かって発砲する、四神さんは間一髪で避けようとするものの完全には避けきれず肩に重症を負ってしまう。


「四神さん!」


私の叫びも虚しくリーダー格の男は再び銃を構えて四神さんの方をむく。

「これで終わりだ、まだなにか減らず口はあるか?」

「はぁ......はぁ......見えてますか?今ならバスジャック犯だけでなく全乗客が僕の方見てますよ......」


四神さんはかすれそうな声で言葉を紡ぐ、私はそれを聞きながらある事に気づく、四神さんはスマホで誰かと通話をしていた。そしてその相手はただ一言言葉を発する


{OK}


その声を聞いた四神さんは今度は大声で叫ぶ


「わかったならさっさと来い!イシス!」


次の瞬間バスの後部の窓が割れ、中に誰が入り込んでくる、あまりに唐突な出来事に周りも困惑し、私も一瞬何が起こったのかよく分からなかったが、乗り込んで来たやつの姿を見た時、しっかりと分かった。


「あんた......もしかしてイシス?」

「あれ?名前知ってたっけ?」

「四神さんから聞いたのよ」

「あ!そうだ!四神は無事か?声を聞く限り大ピンチっぽかったんだけど!」


イシスはあたふたしながら辺りを見渡す、すると私の反対の方の座席から声がする


「ええ......何とかね」

「なら良かった」


四神さんは間一髪のところで撃たれず存外ピンピンしていた。


「てめえぇぇ!俺の計画の邪魔をしやがって!一体てめぇは誰なんだ!」

「通りすがりの大学生だ覚えておけ」

「誰が覚えるかぼけぇぇぇぇ!」

「自分で聞いたんなら覚えておいてくれよ」


怒りのままにリーダー格の男は銃を発砲しようとする。その瞬間私は信じられないものを目にする、赤く光ったのだイシスの体が、具体的には顔から腕にかけて(もしかすると体全体にあるのかもしれない)赤いラインが浮かび上がったのだ。しかし、驚いたのはそれだけではない、浮かび上がったと思ったら、次の瞬間にはイシスはリーダー格の男の目の前に立ち、男の腕を掴み、拳銃を無理やり下に下げさせていた。


「ふざけんなあぁああああ!」


イシスはリーダー格の男と酷い取っ組み合いになる


「なんなの今の......さっきの突撃といい、人間のできることじゃない......」

「ええイシスの体は「普通」じゃないですから」

「普通じゃないって......」


普通じゃないってどういうことなのだろうか、単純かつシンプルな疑問が私の脳裏を駆け巡り、そのまま質問として出力される。すると四神さんが少しもの悲しげに話し始める


「14年前......いや今日で15年前かとにかく、昔あった逆ハーメルンの笛吹き事件って覚えてますか?」

「たしか......当時なんかのツアーでバスが大事故を起こした事件ですよね」

「じゃあこの事件がなんで逆ハーメルンの笛吹き事件なんて言われてるか知ってますか?」

「はい、確か事件で生き残ってたのが最高で12歳、最小で1歳のたった6人の子供達だったから......」

「そうそしてその中の2人が僕達です。」

「え!?」

「そして生き残った僕達には不思議な力が宿っていました」

「それがあの力......」

「ええ」


まことしやかには信じられないがイシスのあの異常なまでの身体能力、そして見ていて不安になるようなあの赤いライン、これを見ていると信じざるおえない気になってくる。


「ちなみにそれって九死に一生を得た人達に備わるみたいな超能力ですか?」

「そんなものだったらいいんですけど......違います」

「違う......」

「この力は人体改造を経たものです」

「え?」


人体......改造?


「詳しいことを説明する時間はありませんが僕達はあの事件以降それぞれにこんな歪な力を宿す形になったんです」


そうやって話す四神さんの顔にもいつの間にか赤いラインが流れてたまるで涙のように......



〜***〜



2023年4月17日PM3:40


「おい!運転手さん!バスを止めてくれ!」

「え!?急に!?」

「いいから!」

「ええいままよ!」


取っ組み合いになった俺は運転手さんにバスを止めるように伝える、そしてその通りに運転手さんはバスを止めてくれ、急に止まったバスの中でみんな一瞬体のバランスを崩す、幸い俺はバスが止まる直前に足をバスにに食い込ませることに成功したためバランスを崩すことなく的確にリーダー的な男に蹴りを叩き込みバスの外に叩き出す。


「ぐわっあぁああああ!イデェ!イデェよォ!」

「言っておくが自爆テロなんてやったらもっと痛かったぞ、その程度ですんで良かったじゃねぇか、大人しくこれで終わりにしな」

「そーいう話じゃねぇええ!まだだ!ここでてめぇをぶっ殺せば終わりじゃねぇ!」


リーダー的な男は怒ったまま俺に拳銃を連続で叩き込もうとする。


「残念だがもう遅いぜ」


男が俺に打ち込もうとしたその瞬間その拳銃は何者かに撃ち落とさせる


「んな!?」

「な〜いす!グレちゃん!」

「変なあだ名で呼ぶな!」


拳銃を撃ち落とした黒髪のとんがり頭で鋭い赤い瞳の男西城 紅蓮さいじょう ぐれんは不機嫌気味に返事をする。


「解決する為とはいえこの大暴れ、本来なら許されることじゃないぞ」

「そーそー、一応ウチら今日から正式にチームになったとはいえね?」


マスターのような風貌の高身長の男最上・L・冬馬もがみ るーご とうまが、グレちゃんの愚痴に若干便乗しつつなだめるように俺に文句を言ってくる。


「それにさ......相手は何人かのチームだったんでしょ?他の奴らは?」

「......あ!」


俺は慌ててバスに戻ろうとする。しかしそんな俺をバスから止める声がした。


「まぁー待ってくださいよイシスさん!このピチピチJKがちゃんと仕留めましたよ!」

「一言多いがサンキュー!」


一見、本当に女子高生に見えかけるぐらいの美貌をもつ23歳の男新 真あらた しんがドヤ顔でこちらを見てくる。


「イシスさん!結局間に合ったんですか!」

「ああなんとかな」


遅れてきて真の高校生バイク乗り絶が慌てて状況を聞いてくる


「やってくれましたねイシス......」

「あ......ごめん......」

「めちゃくちゃ痛かった......」


めちゃくちゃ怖い笑顔で四神が窓から這い上がってくる。ついでに彩文 命も


「まあ......これで揃ったからオールオッケーってことにしよう」


紅蓮の奥から白髪の老け顔の刑事が現れる。山里刑事、俺たちがこれから所属するとあるチームの課長だ。

そして山里刑事はぽつりぽつりと語り出す。


「いいか、お前たちはこれから既存の警察とは独立した特殊な部署の刑事となる!名前は特命特務特課、通称T3!

君たちはその特殊な状況から、中には本来経るべき警察学校などの教育課程を修了していないものもいる。だがこの国の警察であることには変わりない!犯罪者から国民を守るために、最大限の活動を行ってもらうぞ!」

「「「「「「はい!」」」」」」


俺達6人は山里刑事のその激励に敬礼で対応する。こうして俺達T3の戦い、復讐の物語は始まった。

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