特別編 恋敵

 とある公園にて。


「ぐぬぬぬ……」

「あのー……メグちゃん? そんなに睨まないでくれないかな。紗花サヤカちゃん待ってるよ」


 ボクーーらん 幽璃ゆうりは、この間知り合った女の子ーー恵ちゃんに睨まれている。そして向こうの砂場では、彼女の親友であり幼馴染の紗花ちゃんが不思議そうな顔でこちらを見ている。


「……やっぱり、お前キライ」

「何で⁉︎ 」

「サヤカちゃんと仲良しさんだから」

「理不尽……」


 ……どうもボクは彼女に嫌われているみたいだ。半年前の初対面の時にはもっと怯えた感じだったから(人見知りも入っていたらしい)その時に比べればマシになった……と思う。大分ストレートに嫌悪感を表されるようになったけど。

 そして彼女がここまでボクを目の敵にする理由は。


「だから、ボクは恵ちゃんから紗花ちゃんを取ったりしないから大丈夫だよ」

「アヤシイ……」

「えぇ……」


 そう、恵ちゃんは紗花ちゃんのことが好きなのだ。つまりボクは恋敵だと思われている。


「おーい、メグとおねーさん! お城ツクりショウビはじめるよー」

「紗花ちゃーん。薔薇ショウビだとバラさんのことになっちゃうよー」

「そうなのかー。なら今度からちゃんと勝負って言うね。ほら、勝負するよー」

「はーい。ほら行こうメグちゃん」

「……分かった。なら勝負だよ、おねーさん」

「勝負? 今からするけど……」

「そう、今からする。で、もしもワタシが勝ったら、おねーさんは二度とサヤカちゃんに手出ししないってチカって」

「……分かったよ。ならもしお姉さんが勝ったら、お姉さんは恵ちゃんの恋の応援をしているって認めてね」

「そうなったら、みとめる」


 ボクと恵ちゃんは砂場に向かう。恵ちゃんは不敵な笑みを浮かべて、ボクは苦笑いして。


 ⭐︎   ⭐︎   ⭐︎   ⭐︎   ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎


「あぅ……」

「ふぅ……ボクの勝ちだね」

「おねーさん、はやーい」


 結果はボクがギリギリ勝ちだった。まあ、こうなるように調整しまくったけど。本気でしたら余裕で勝てるし。


「さぁて、恵ちゃん。約束は覚えているよね」

「……フホンイだけどみとめる。これからはお手伝いしてくれるんだよね? 」

「するよ〜。恵ちゃんの恋がうまく行く様にね」

「いつかウラギリそう」

「どんだけ警戒されてるの……。ねぇ、ボク何かしたかなぁ……? 」

「何でか分からないけど、おねーさんは信じちゃダメな気がする」

「えぇ……」

「でーきたっ♪ 」


 ボクたちがやり取りをする側で、紗花ちゃんはテキパキと城を作り完成させる。


「あーっ! メグはまだツクってないのー。メグの負けだよー」

「あ、負けちゃった〜。えへへ」


 恵ちゃんの頬を紗花ちゃんが突く。恵ちゃんはとっても嬉しそうだ。


「さーて、ツギは……。あっ! 」

「「ん? 」」


 紗花ちゃんは砂場の端の方へ行く。そこには一人の女の子がいた。彼女も砂の城を作っている。かなり巨大で目立つ。


「マミちゃんもお城ツクってるのー? カッコイイー」

「あ、あり……がとう……」


 あの子と喋るのは問題ないのか、と思ってボクは恵ちゃんの方を見る。


「あれ、だぁれ? 」


 全然ダメそう。


「ダレかな? ワタシのサヤカちゃんを取っちゃうのは。ユルせないなー。えーどうしようコロシチャオウカナニドトタチナオレナイヨウナトラウマヲウエツケテヤロウカナソレトモコロシチャオウカナ」

「落ち着いて、恵ちゃん! 」


 すると恵ちゃんがこちらを向く。瞳孔が完全に開いている。瞳のハイライトも消えて、すごく怖い。というか物騒な単語も聞こえてきた。これは完全にヤンデレ予備軍だ……。


「おねーさん」

「は、はい」

「手伝ってくれる……よね?」ゆら〜

「ハイ……」


 そんな骨がないみたいな首の傾け方しないで!

 ボクは、人を殺しそうな雰囲気の恵ちゃんを追いかける。とりあえず、人殺しに手を染めないようにしてあげないと……!

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少女達物語 しょうさん(硝酸) @shousanyakubutu

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