【短編】新鮮な死体と『妖精さん』

ぞいや@4作品(■🦊🍓🌏挿絵あり)執筆中

「死んでるのに新鮮って、どういうことなーの?」

 妖精さんは、ふと不思議に思いました。

 ふわほわ商店街へ夕飯の買い物に行って、魚屋さんで「この魚は新鮮だーよ」と言われたのです。


「死んでるのに新鮮って、どういうことなーの?」


 すると魚屋さんはパチクリと2回瞬きした後、腕組みをしてからえっへんと胸を張りました。


「新鮮ってのはな、命が途切れて間もないモノに使う言葉なんだーよ。生きてるモノには使わないんだーよ」


「へぇ、そうなーの?」


「そうだーよ。新鮮なお肉、魚、山菜、みーんな死んだ後のモノだーろ?」


 言って、魚屋さんはまたえっへんと胸を張りました。

 けれど妖精さんは、魚屋さんの言葉にいまいち納得出来ていません。


「じゃあ、このお店に並んでる貝はどうなーの?」


「えっ、貝?」


「うん。このホタテとかアサリとか、まだ動いて生きてるーよ? これは新鮮じゃない貝なーの?」


「いや、生きてるんだから新鮮だーよ。ウチの魚介類は新鮮が売りなんだーよ」


 そして魚屋さんはまたまたえっへんと偉そうに胸を張りました。

 妖精さんはやっぱり納得できません。


「魚屋さん、さっきと言ってること違うーよ。命が途切れて間もないモノに使うって言ってたのーに」


「うるせぇ!!」



 ――その日の晩、妖精さんは焼肉を食べました。

 そして思いました。


「結局、命って美味しーの」

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