第7話 体育祭実行委員決め

 恋が抹茶ケーキを作ってくれた翌日、体育祭の実行委員を決める話し合いが行われていた。


 「今年もこの時期がやってきたぞ! 男子諸君よ女子に自分をアピールする場だ。日頃の努力を発揮するのだ、しかしその前に実行委員決めが必要なのだ。男子女子1名ずつ決めなければいけない。誰か立候補する者はいないか?」


 とは言うが、自分からやりたいなどという人はいない。当然だろう、今学級委員長が話したように男子にとっては自分をアピールする場なのだから実行委員をやりたい人など皆無だ。女子としても面倒な実行委員を引き受けるくらいならば体育祭の選手として出る方が楽だと考えているに違いない。しかし例外はいる。地獄を知らぬ者だ。

 

 「誰もやらないのなら、私が実行委員に立候補します」


 何も知らぬからこそ、やってもいいと思っているだろう麗奈が実行委員に立候補する。麗奈以下の女子は自分がやらなくていいと決定して安堵する。だが男子は本気で麗奈を心配しているように見える。


 「鈴森さん、この学校の体育祭実行委員は本当に大変なんだよ。まだ編入したばかりなんだから自分を優先しても誰も何も言わないからね」


 麗奈は転入したばかりだが、既に翠と並んで校内二大美少女の1人となっている。実行委員は体育祭本番では裏方の業務が多いため男子からしたら自分がアピールする意味がなくなってしまう。それだけは阻止したいと考える学級委員長はなんとかして止めようとする。しかし...


 「鈴森さんが良いって言ってるんだからやらせればいいじゃん~」


 「これだから何でも面倒そうにするクソギャル女は...」


 「これだからかわいい女の子にしか興味ないクソ眼鏡委員長は...」


『は?』


 この言い争いから分かるように、学級委員長とギャルは犬猿の仲だ。

 普段はどちらの言い分も分からなくもない意見が多く他の生徒も口出ししにくい事が多い。しかし、今回はクラスのアイドルになりつつある麗奈についての話だ。どちらが合っていてどちらが間違っているかなどはどうでもいいのだろう。男子は自分が悪になってでも麗奈に良いところを見せたい。女子は面倒事を自分が悪になってでも麗奈に任せたい。男子 VS女子の構図が完成しつつあった。


 「大丈夫です私がやりたいから立候補しただけです。それに、 学級委員長さんが言うように大変なのは予想がつきます。なので、男子側は私が指名してもいいでしょうか?」


 「え、あぁ自分からやりたいという人はいないようですので良いですよ」


自分がやりたいと言うならやらせてあげたいと思った学級委員長は麗奈の言うことに従う事にした。


「優夜さん、男子側はあなたになっていただきたいです」


「悪いけど断る」


麗奈が指名するとしても男子の接点は自分しかないはず、そう考えていた優夜はすぐにその指名に断りを入れた。


「ありがとうございます。やっていただけるのですね」


「聞こえなかったかな、嫌だって言ったんだけど」


「これで決まりましたよ学級委員長さん」


「僕はやらないよ!」


無理やり優夜にやらせようとしているが、優夜だってそう簡単に折れる訳にはいかない。

去年はそれで大変な目にあったのだ。今年もそうなるなんて御免だからだ。


「優夜さん、なぜそんなに嫌なのですか?小さい子供って歳でもありませんし折れる事も必要ですよ」


「僕は去年実行委員の手伝いをしたんだよ。それでもうやりたくないと思った。それだけ」


嘘は言っていない。ただ詳細な事を一切言っていないだけだ。にもし聞かれたら僕はもう生きていけないだろうから。


それを聞いていたクラスメイトは、気持ちが分かるのか誰も批判をするような事を言わない。自分だってその人には出来れば関わりたいとは思わない。しかし実行委員になるとは絶対に関わらなければいけない...あの先生に


「なるほど、誰かが怖いのですか?私がいますから大丈夫だと思いますが...」


「た、確かに女子生徒には優しいからね...もしかしたら何も起きないって事もあるかもね」


優夜の近くに座る男子がそう言うが、心ではそれが起きないなんて事が起きないと分かっているだろう。去年は自分が生贄に選ばれたのだから。


「あぁぁもう分かったよ!やるよやればいいんだろう!」


このままでは話が絶対に進まないし面倒な方向に話が進んでも嫌だと考えた優夜はやる事に決めた。


「ありがとうございます。実行委員でも仲良くしてくださいね」


(仲良くならないようにしたいなぁ)


恋にはやらないと言ったが、なぜか決まってしまった優夜はどう言い訳をしたらいいか考えている内に話し合いは終わっていた。

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巨乳美女でブラコンな姉が『甘える』をしてきた! さぁどうする? スゴく・ネムイ @Akit014

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