ふたりぐらし

和田島イサキ

(短歌二十首)



胃の中の練った小麦のかたまりの魔がさす春の手作りのパン


二輪草ごめんねわたしきみのこと今までずっときりん草だと


ロケットが切り離されて減ってゆく筍みたいなやつだと思う


夢の中なんかの花が咲いているもうたんぽぽということにする


幸せはどこからともなく生えてきてしかもあなたの顔をしている




漱石と野口英世を間違えるこれは絵柄も悪いと思う


きみの庭トマトの花が咲いている花とかあるのトマトのくせに


「津々浦々」わたしの好きな言葉ですきっと水辺の生き物だから


嘘つきはヘソをとられて死んでゆくいいのあいつら似たようなもの


吾輩は猫であるなら仕方ないきみの自称を信じてみるよ




道端で拾ったものは持ち帰る変な形の石とか特に


下痢してるおじさんの絵をAIはどんな顔して描いたのだろう


ギャルがいるギャルじゃないとの向きもある詳しい人の見解が要る


二と三と四、六で割れる方がいいだから手の指十二本あれ


ぶきっちょがまたペヤングを湯切りするあるいはこれが母性かしれない




銀世界言うほど銀でもないよねと赤い鼻して言うのがそれか


汚いぞそれがお前のやり方か歩と香と飛が一列にいる


ガンダムを組み立てているその爪がそんなに長いの嘘だと思う


シャアがくる言うほどくるかときみに訊く黙って観てろと冷たくされる


要するに月が綺麗という話そんな覚えはひとつもないのに



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