「百合の間にはさまる男」……一部からは殺意さえ向けられるネタ的存在ですが、はさまってしまったもんはしょうがない。つい読みながら羨まけしからんと叫びたくなりましたが、自分がどう思えば良いのかさえわからない複雑な内面模様が克明に描写されるさまは、予想以上に想像を掻き立てられました。具体的に何があったのか、どんな交わりがあったのか気になるところですが、きっとそれを描写されてもただ蛇足になるだけでしょう。最後までもどかしく読ませていただきました。
私も『恋は夏だ』と思っています。たとえば、それは「夏の夜の夢」。熱くて甘くてドロドロで…。でも、この作品で軸になっている描かれてるのは、青く晴れた夏。それも冷房の効いた居心地の良い、過ぎ去りしひとときです。とても切ないお話なのですが、語り手の独特の言い回しが絶妙で、明るく愛に満ちた雰囲気でした。不器用ながらも穏やかに過ごしたその夏が、彼らの中に深く息づいていて、きっとこれからも彼らの旅路を明るく照らしていくのだろうなと思いました。
わーそういやこんな感情あったんだーという心の奥底を言葉にして次から次から引きずり出してしまうので心が穴ぼこになって風通しが良くなり、心の鈍くなっていた部分に風が染みてスースーします。オススメ