第40話 故郷へ

 俺は次の週に親父と示し合わせて母親の墓参りに言った。


 その車中で俺は母さんの最後の夢の話を聞かされて、熱い涙をながした。


 有馬記念は両者同着の一位になり、最優秀古馬にアイノクラウディアが選ばれた。


 母さんの墓前で俺たちは母さんに感謝の弁を述べた。


「ありがとう、妙子」


「ありがとう、母さん」


 アイノクラウディアは来年も走る。俺はスケジュールの都合をつけて、シークレットエデンの里帰りに同行した。最上ひかりオーナーも同行し、故郷のサンダーレーシングファームに帰る。


 しぃちゃんはまだまだ走れそうな馬体だったが、脚元の弱いしぃちゃんを酷使できない。


「シークレットエデンの子にも乗ってほしいのだけど」


「乗りますよ」


「それと、結婚を前提として付き合ってよ」


「いいですよ」


「やっぱ駄目……いま、オーケーした?」


「しましたよ、ひかりさん。いい馬に乗せてくれてありがとう」


 一陣の風が二人の間を通り抜け、しぃちゃんが鼻をならす。牧場の向こうに母さんが見えて、こう言った気がした。


「本当におめでとう」と。

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サラブレッド・キングダム 木村さねちか @Verdy323

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