第5話 第二次川中島の戦い、高遠城への帰還 1555年(天文24年)8月

我ら、武田軍が犀川へ到着し、長尾軍との交戦が始まった。しかし、犀川を挟んで両軍が牽制し合い、中々戦況が動かない日々が続いた。


「勘助、こういう場合、やはり攻めぬ方が良いのか?」


山本勘助「そうです。痺れを切らして突入すると、対岸から弓で狙われますから。じっと待つというのも作戦として必要です。」


「そういうものか。何部隊かを回り込ませるとかは作戦としてはダメなのか?」


山本勘助「そうですね、回り込ませるというのも有効なのですが、見つかって各個撃破されると逆にこちらが戦況不利になるのです。それにこうも見晴らしが良いと、部隊がいくつか減るだけですぐに分かってしまうものなので、動けないのです。部隊が減ると敵の警戒は強くなりますから、余計に動けないのです。」


「なるほど。では、遠距離の有効な攻撃手段がないと厳しそうだな。うーむ。(確か、火縄銃が伝来したのが1543年、1550年には三好《みよし

》と細川ほそかわの戦で使われたと聞いたことがあるな。ならば!)火縄銃があればなんとかなるか?どう思う?勘助」


山本勘助「確かに、火縄銃があれば、打開策として良いかと思いますが、武田軍にはまだ数がありませんので、使えません。」


「良い策だと思ったのになぁ。なかなかうまくいかないものだな、戦は。」


こんな感じで勘助に教えを請いながら、戦場の後ろで待機するというのが、1月程続いた。

そんな中、昌信から書簡が届き、その翌朝に父上に呼び出された。


武田晴信「来たか。信輝よ、昌信から書簡が届いたと聞いたが、何があった?」


「はっ。私が昌信と半蔵に頼んでいた調略の結果が城に届いたという報せと、なにやら木曽家が戦準備を始め出したとの報せです。」


武田晴信「なるほどの。ならば信輝よ、一度高遠城へ帰還してはどうだ?」


「いやしかし、戦の途中に帰還すると、周りから逃げたと思われませんか?それに、長尾軍がいつ攻勢に出るかも分かりませんし。」


武田晴信「逃げたと思わせないよう、補給部隊の護衛のために帰らせたと言えばよかろう。それに長尾軍はこちらが攻めぬ限り、攻勢に転じる事はないぞ。長尾家に放った素破からの情報だ。安心せい。故に、高遠城の周辺を安定させて来い。」


父上は多分、俺を一度帰らせて高遠城の周辺の状況を安定させて、この戦に集中出来るようにしたいのか。なら、一度帰り色々やってからまた戻るか。


「かしこまりました。ならば、一度高遠城へ帰還したく思います。」



父上との話し合いが終わった後、自分の陣に戻り、自分の家臣(2人しかいないが)を集めた。


「昌信から書簡が届き、木曽が戦準備をしていると報せが入った。父上に報告したところ、一度帰還し、木曽への対策をして高遠城の周辺を安定させろと命を受けた。故に一度高遠城へ帰還するぞ!」


『はっ。かしこまりました!急ぎ準備させて来ます!』


「頼む。準備が出来次第、出立するぞ。」


こうして、我らの隊は高遠城へと帰還するのであった。



俺らが高遠城に着いてすぐ、昌信が報せを持って来た。


高坂昌信「殿、おかえりなさいませ。色々と報告をさせていただきたいのですが、お時間よろしいでしょうか?」


「いいぞ。俺もその辺りの事を確認したいからね。」


高坂昌信「では、まずは調略の結果を話させていただきますね。島清興殿は、書簡を見てすぐに承諾なさり、是非にと、この高遠城に使者と一緒に来ております。次に、山中鹿之助殿は、元服するまで主家の尼子家の下で仕えると言使っております。そして、百地丹波殿は、実際に殿に会って話が聞きたいとこちらも使者と共に高遠城へ来ております。最後に、森可成殿は、書簡をご覧になって少し家中の者と相談した後、話が聞きたいとこちらも使者と共に高遠城へ来ております。以上が、調略の結果でございます。」


「うーむ。山中鹿之助は無理だったか。仕方ないな。というか、他の3人はここへ来てるのか!?会わないとだな!」


高坂昌信「ええ。殿が到着するまでと城の部屋にお通ししております。到着した順番は、森可成殿、百地丹波殿、島清興殿でございます。」


「分かった。その順番でこの後、会おうか」


高坂昌信「それで、木曽家の件ですが、戦準備しているのは、真実のようです。しかし、数日前に面会したいと使者が来ておりまして、書簡を頂いております。後で返事をお願い致します。」


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戦国転生 〜武田晴信の庶子から成り上がれ!〜 奥田咲兎 @Sakito-1223

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