第12話 質疑応答

 目の前で起きたことの全てが信じられない、そんな感じだった。


 雨が降って来たと思えば次の瞬間には滝となり、更には水が空中で制止、挙句の果てには人間の腕が何本も生えた巨大な蛇が現れ、その蛇は僕の脳内に直接言葉を送り込んで会話しているのだ。


 もう訳が分からない。これが異世界というものなんだろうか……。


『ソレデハ人間、イクツカ質問ヲシテモイイデスカ?』


「ぼ、僕に答えられるものであれば、はい」


『嘘ヲツイタ瞬間ニ貴方ヲ殺シマスノデ、注意シテ答エテクダサイネ』


 顔も見せない大蛇からさらっととんでもないことを言われ、全身の震えが止まらない。


『ソレデハマズ、貴方タチハ何処カラ来タノデスカ?』


「お、恐らく地球…だと思います」


『…随分ト曖昧ナ答エデスネ?』


「すみません、あの、前世の記憶、あっ、この世界に来る前の記憶が無くて…」


『前世ノ記憶…デハ、ヤハリ貴方タチハコノ世界ノ住人デハナク、所謂、転生者トイウワケデスカ…ナルホドナルホド……』


 それからも、男とヴァルロガンダの質疑応答はしばらく続いた。


 答えられることは多くはなかったけれど、久しぶりに誰かと会話をするのは少しだけ嬉しいような気持になった。


 ――しかし、そんな僕にも遂に限界が来たみたいだ。


『ソレデハ次ノ質問デスガ…オヤ?』


 肉体と精神的な疲労、度重なる恐怖と緊張、そして空腹、それらによって突然意識の糸が断ち切られたのだ。


『フム……』


 ヴァルロガンダは何十、何百メートルはあろう巨体を音もなく動かし、男を置いて何処かへと向かっていった――。

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異世界に転生したらしいのですが、色々あって死にそうです yorschbaum @yorschbaum

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